超短編小説 涼と縁 初仕事
教授に卒論を出してほっとしていたら、突然呼び出された。スマホに地図が送られ至急、事務所に来るようにと。
電車を乗り継ぎ、指定の時間に事務所に着いた。「涼さんですね」と言うと事務員に相談室に案内された。事務員以外、誰もいないようだ。
「書類を届けに行くので、ここでごゆっくり」と言うと事務員は出て行った。
しばらくすると女性二人の声が聞こえた。年配の女性が突然入ってきた。「涼君よね。縁と一緒に仕事をしてね」と言うと縁が入ってきた。
しばらく見ない間に綺麗になっていた。やばい。心臓の鼓動が止まらない。縁が何か言ってるみたいだが聞こえない。
東京からくる偉い人の警備の説明を受け、書類を渡された。とりあえず了承。「じゃあ」と言って事務所を後にした。
俺の仕事は危険な考えを持った人がいたら警備に伝えるというものだ。
仕事に集中。余計なことを考えたらだめだ。
当日は緊張した。偉い人の脇でいろんな人の思考を聞いていく。とりあえず危険な考えの人はいなかった。
仕事を終え、縁を見て何か言おうと思ったが、何を言っていいのかわからない。何か言え俺。だがわからん。しばらくの沈黙に耐えかねて「じゃあ」と言ってその場を去った。
心臓止まらん。
また一緒に仕事が出来るといいな。きっとあるだろう。
しかし、縁の考えが読めなかった。何故だ。くそ。