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第28話 初めてサンタの贈り物をする

ネネが祖父母にてたメッセージカードをルドルフに差し出すと、素朴そぼくな疑問が彼女に投げかけられました。

「ここに書いてあるサンタのプレゼントはぬいぐるみってのは、いったい何のことだ?」

ルドルフ          ヴィクセン          プランサー

「えっとね、これもカードと一緒に持って行って欲しいんだけど」
ネネがサンタ袋に手を突っ込んで出してきたのは、40センチほどの大きなしろくまのぬいぐるみでした。
それを見たヴィクセンが、思わず反応します。
「あら!かわいいじゃない」

ネネ特製 サンタのプレゼント

「サンタは人間達に何かプレゼントしないといけないんだけど、私はぬいぐるみを配るんだ」

とネネがルドルフにぬいぐるみを手渡しながら説明していると、プランサーがネネの耳に顔を近づけて、何やらゴニョゴニョ言い始めました。

「はいはい、もうわかったから。くすぐったいから、もうやーめーてっ」

ネネはプランサーを押しのけると、サンタ袋に手を突っ込んで、しろくまのぬいぐるみを取り出して手渡しました。
続けてヴィクセンにも、同じものを手渡します。

プランサーの主張 だって欲しかったんだもん

「ありがと ネネちゃん」
「えっ!私にもいいの?! ありがとう うれしい!」

実はヴィクセンも欲しかったようで、さっそく両腕で抱きしめてほおずりしています。

「あ!そういえば、あれがあった」

するとネネは、サンタ袋から真っ赤な鈴を取り出して、ルドルフの手ににぎらせてきました。

「何だコレ」
「これは、ルドルフへのサンタのプレゼントだよ。こうやって使うの」

ネネが指で軽く鈴をはじくと、大音量で鈴が鳴り始めました。

シャン シャン シャン シャン シャン シャン

プランサーが、興奮して声を上げます。
「わーー!これだよ、これ! あの時、私が聞いた音だ」
それはサンタ・クロースがソリに乗っている時に鳴らす、ジングルベルの音にそっくりでした。
この音を聞き取ったので、プランサーはネネを探しにここまでやって来れたのでした。

ネネの鈴

ルドルフがネネの鈴の音を聞いて、感想を口にします。

「でもサンタ・クロース様のジングルベルの音とは、ちょっと違うよな」
「あー、爺ちゃんのソリをひいてもらう時に鳴らしてる音でしょ。あれってトナカイの君たちが走るリズムを取りやすくするためのものなんだよ」
「あれは、そういう意味だったのかよ」

「私の鈴は爺ちゃんのベルとは違うんだよ。これ実はルドルフ用にと思って作ってたものなんだけど、オマケが付いてんの。ちょっと、しょぼいけど」
「何だ?」
「ジングルベルの音を鳴らしてるルドルフはもちろん、周囲にいるトナカイ達の基本能力が3割底上げされんの」
「え!ちょっと待て、それのどこがしょぼいんだよ」
「あとはトナカイが増えるほど出せる速度が上がって、9名全員が揃えば皆で一緒に音速突破ができるようになる」

驚くルドルフをスルーして喋り続けるネネに、さすがにヴィクセンが割って入ります。

「ちょっと待ってネネちゃん!音速って、時速1,225キロでしょ。それってしょぼいどころか、とんでもなくすごいことなのよ」
「そなの?」
「あらま、わかってないまま、これ作ったの? 音速突破すると、衝撃波ソニックブームが出るわよね。危険で仕方ないって話なんだけど」
「一撃必殺の技かぁ、かっこいいなぁ。コメットとか、喜びそうだよね」

ヴィクセンですら話がかみ合わないネネを見ていて、ついにしびれを切らしたルドルフが発言します。

「よし!わかったわかった!もうどうにでもなれだ。ありがたく使わせてもらうことにする」
「もう、恥ずかしがらずに、素直にもらっておけばいいのに」
「いや、そういうことではなくてだな」

あきらめたルドルフは、自分の腰にネネの鈴を装着しました。

「あぁ、言い忘れるとこだった。ヴィクセンとプランサーに贈ったぬいぐるみは、サンタの従者じゅうしゃ用の特別製なの。鼻を3回トントントンってするとキーホルダーになる。同じことすると、また大きくなるから携帯に便利でしょ」
「わっ!小さくなった」
「んでもって、頭を3回なでなですると、君たちが通った道は魔をはら聖域せいいきになるよ。解除したいなら、同じことしてね」

なぜか胃が痛いと言い出したルドルフ。
ぬいぐるみの頭をなでると、自分の後ろに光の帯が出来るのが楽しくて、走り回っているプランサー。
2人を見て、苦笑にがわらいしているヴィクセン。

三者三様さんしゃさんようの様子の違いを面白がって見ていたネネでしたが、ちゃんと両手を大きく振って彼らをお見送りしていました。

シャン シャン シャン シャン シャン シャン ・・・・・・・・

彼らトナカイ3名はネネの鈴を高らかに鳴らしながら、サンタ・クロースの家のある北の方角へと空をけて行きます。
彼らは、しろくまのぬいぐるみの効果で、輝く光の帯を引いていました。

プランサーの「きゃっほーーーい!速い!はやぁぁぁい」って、はしゃぎまくる声が遠くから聞こえてきます。

やがてその姿は見えなくなり、鈴の音も聞こえなくなりました。

「爺ちゃん家に着くのに、2週間ぐらいかかるって言ってたなぁ」

そこから考えても、サンダー・ボルトと寄り道しながら行くとなると、数か月はかかりそうです。

「あーーー! すっかり聞くのを忘れてた」

実はこの時、ネネは大きなミスをしていることに気付きました。
世界地図のデータを持っているにもかかわらず、トナカイたちにいま祖父母がどこに住んでいるのか教えてもらうのをすっかり失念しつねんしていたのです。

「絶対、ボルトに怒られるよね、このパターンは」

また、やらかしてしまったネネ

さて、いつの間にか時刻は正午を越え、太陽は真上まで登っています。
ネネの「Santa Holy Snow World(サンタの聖なる雪の世界)」は、タイムオーバーとなる時間です。
深く降り積もっていた雪は、全て消えて行きました。

つづく


【あとがき】
この小説の題名は「赤と黒のサンタ」です

サンタの聖獣せいじゅうトナカイたち9名は、空気を踏むことが出来る特殊能力を持っています
これを使うことで、空や水の上を走ることが出来ます

コメットとはトナカイのひとりで、「彗星すいせいのコメット」と呼ばれています。走ることが大好きで、仲間内では一番の俊足しゅんそくほこっています

ネネの最初のサンタのプレゼントは、身内のトナカイ3名に贈ることになりました
それはただの贈り物ではなく、トナカイの能力を上げてくれる不思議なマジックアイテムです
ちなみにトナカイ全員が集まった時にこの3名は、他のトナカイ達から「お前らだけズルいぞ」と大ブーイングを受ける羽目になったと言うのは、また別のお話です

全てAI生成画像です。「leonardo.Ai」さんを利用させて頂いてます


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