まめのすけ

VRC関連で書いたものとか、過去作置き場

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マガジン

  • 解釈小説対決

    • 2本

    見た作品の解釈を小説にして撃ち合う企画です。

最近の記事

いずれ月のように

「こんばんは。こんな時間に女の子の一人歩きは感心しないわね」  僅かな月明りの夜、蛙の鳴き声が響く田舎道。  人に会うこともないと思っていた私は、突然声を掛けられて驚いた。  すらりと線の細い女性がそこにいた。  長い黒髪。人形のように整った顔立ち。目元に目立つ大きな泣きぼくろ。それさえもチャームポイントに見えてくる綺麗な人だった。 「誰、ですか?」  その女性は私の質問には答えず、私の前まで来るとしげしげと私を眺めた。  その眼つきに絡めとられて、私は身じろぎ一つできない。

    • ハナサカステップ解釈小説:『夏に咲く花』

       本作は、企画「『ハナサカステップ』解釈小説対決」のために書かれたものです。これは、ぼっちぼろまるさんの曲「ハナサカステップ」をVRChatのフレンドさんたちと聴き、歌詞への解釈の違いを小説で表現し合う企画です。 ソーサツ・チエカさんの作品はこちら。 原曲MV(映像は解釈の対象としない): 夏に咲く花  雨の匂いにはもううんざりだ。  今日も一日、朝から雨が降りそうな曇り空が続いている。  じっとり湿った空気。  毎年毎年しつこい奴らだ。ひっきりなしに降り続く雨を窓越

      • 睡眠不足

        不可思議な出来事っていうのは、世間が思っている以上にありふれている。 ただ気付かないだけ。気付いていないだけ。 そして、気付いた時には、それはすっかり日常に溶け込んでしまっているのだ。 引越し初日。 大量の段ボール箱を片付けた私は、ぐるりと部屋の中を見渡した。 八畳のワンルーム。真新しい家具の数々が所狭しと並び、きらきらと輝いて見える。 実家から遠く離れた大学に合格した私は、ついに一人暮らしをすることになった。 女性の一人暮らしは危ない。寮とかもあるんじゃないか。 そう言う

        • 明日はきっと、降水確率100%?

          突然だが、俺は雨が好きだ。 梅雨時の今は、俺にとっては最高の季節といっても過言ではない。 このことを言うと、大概の人は変な顔をする。 濡れる。冷たい。風邪を引く。雨なんかのどこがいい? 彼らは、揃いも揃って同じようなことしか言わない。 何故彼らには、雨の尊さがわからないのだろう。 ぱらぱら降る小雨は、肌にしっとりと染み込んで、冷たくて気持ちがいい。 滝のような豪雨も、思い切って浴びてみると、心まで洗われるような不思議な気持ちになれる。 雨が止んだ後の、全て洗い流されて浄化さ

        いずれ月のように

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        • 解釈小説対決
          2本

        記事

          狐の嫁入り

          ある日のことだ。 縁側で庭を眺めていると、雨が降ってきた。 陽は高く上り、青々とした空が広がっている。雲はそれほど多くない。 にもかかわらず、雨がぱらり、ぱらりと降ってきた。 天気雨だ。 雨は次第に本降りになり、庭の草木を濡らしていく。 草木に付いた水玉が陽の光に照らされて、輝く様はまるで真珠のようだ。 私は着物の袖に落ちた雨粒をそっと払いのけ、空を見上げた。 「天気雨とは、珍しいこともあるものだ」 一人呟く。 それから不意に、先日出会った女のことを思い出した。 その女は、

          狐の嫁入り

          赤い唐傘

          こういう事があった。 ある梅雨の日の事だ。 私は大樹の下、止まぬ雨を眺め、天を仰いだ。 ぽつりと、頬に雨粒が落ちるのを感じる。 周囲は、雨音で満ちていた。大粒ではないが、細く柔らかな雨がひっきりなしに降り注いでいる。 既に着物は湿り気を帯び、ひどく着心地が悪い。下駄にも泥がこびり付き、少々重い。 しかし、私はこの不快感もそれほど嫌いではなかった。 かれこれ一刻ほどはこうして止むのを待っている。こうして雨を肌で感じ、雨音に耳を傾けていると、なぜか心が安らぐのだ。 我が家に戻れ

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          祭り 縁日の賑わいを尻目に花火が上がる。楽しい祭りも終わりの時間が近い。 「これでお別れなの?」 隣で花火を見上げる狐目の青年は、こくりと頷いた。 狐は人を騙すという。でも。 「また会える?」 私の問いに彼は答えず、小指を差出す。 指切りして笑い合う。 胸に響く花火の音。 今はそれだけでいい。 ピアノ ピアノは嫌いだ。 音を聴くと泣いてしまうから。 そう言った彼は、今日もピアノを弾く。 彼の音色は優しく繊細で、悲哀に満ちていた。 何が君にそうさ

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