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はじめてのウィーン -楽友協会「黄金のホール」の立ち見席-

今年2024年は予測できない大きな自然災害で幕を開けた
数時間後に迫っていた元日恒例のウィーンフィル・ニューイヤーコンサートのライブ中継も休止に
このコンサート、何十年も前からNHKテレビで放送されてきた
でも今のように元日夜のライブではなく数日経ってからの放映
(しかも、ウィーン国立歌劇場のバレー団による華麗な群舞も、当時あまりなかったように記憶する)
今年のニューイヤーコンサートも、その当時のように、三が日を過ぎた1月6日に順延された


はじめてウィーンを訪れたのは、まだ同時中継のなかったころ
仕事につくはるか以前の一人旅
ウィーン・フィルハーモニーの響きが好きで
ウィーンの街にも憧れていた
いつか行きたい、そう思っていた

1月も末の厳寒の時季、ベネツィアからアルプス越えの夜行寝台列車でオーストリアに
EU統合以前だったので真夜中に国境で起こされ、
列車に乗り込んできた入国管理官にパスポートを提示
そうやって朝方ウィーンに入った


派手さはないが 気品ある街並み
1週間近く前に滞在していた花の都パリよりも、この街がよほど好ましく思えた

青く澄んだ大気のなか、路面電車を乗り継いで
都心部のリング通り、国立歌劇場、シュテファンス大聖堂、シェーンブルン宮殿、プラーター公園、ドナウ川・・・
ウィーンの森を遠くから眺め
やはり電車でモーツァルト、ベートーベン、シューベルト、ヨハンシュトラウスなど楽聖たちの墓にも

当然ニューイヤーコンサートが開かれる楽友協会にも足を運ぶ
小澤征爾が国立歌劇場の音楽監督になり、ニューイヤーコンサートで指揮したりする遥か以前のことだ
構内の掲示版を見ると、その日の午後、例の大ホール(黄金のホールとも呼ばれるムズィーク・フェライン・ザール)でウィーン交響楽団(ヴィーン・ズュンフォニカー)のコンサートがあるとの告知がある
ウィーン管弦楽団(ヴィーン・フィルハーモニカー)ではないが致し方ない
立ち見の当日券を買った。500円くらいだった記憶が
夜にはオペレッタ「ドンキホーテ」も組まれていたが、それはパス
コンサートの時間まで、協会近くのカフェでウィンナーコーヒーを飲んで開場を待つ

曲目はたしかチャイコフスキの交響曲
細かいことは忘れてしまった
覚えているのは、いちばん後方の立ち見スペースで
地元の若い音楽ファンたちが絨毯に寝そべって聴いていたこと
それと幕あい
ワインなどを飲みながら歓談する
会話の輪には入れなかったが、白ワインのグラスを買って雰囲気を楽しんだ


あれから何度かこの街を訪れたが
あのときのウィーンが一番よかった

数日遅れのコンサートをテレビで観ていたら
もう一度行きたい衝動に駆られた



1か月以上も遅まきながら・・・

Ich wünsche Ihnen ein glückliches neues Jahr !!
(皆さまには、幸多き新年を迎えられますことを!)

ニューイヤーコンサートの演目の最後のあたり、たいていは「美しき青きドナウ」で締めくくる直前、指揮者が音頭をとって、この祝詞を会場全体が声を合わせて唱える

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