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サーキュラーエコノミー時代の企業進化を支える『RaaS企業』とは

こんにちは!二次流通ビジネス支援サービス 『Selloop』 アナリストの圓山です。普段は、クライアント様におけるリユース品買取ビジネスの企画サポート担当として活動しております。

この記事は、新たにリユース品の売買ビジネスへの参入を検討している企業のご担当者様を対象としております。

近年、SDGsの達成やサステナブルな社会の実現が求められる中、リユース市場は年々成長しています。中でも欧米では、メーカー・小売企業による積極的な衣服の回収・再販が行われ、その多くは『RaaS企業』や『ホワイトレーベル企業』などと呼ばれる、リセールプラットフォームを持ち、返品や検品ノウハウ、修理、カスタマーサポートなど回収・再販に必要な機能を提供する企業との協業で行われています。そこで、この記事では、欧米企業がどのようにリユース事業を推進しているのか『RaaS企業』の事例を紹介します。


1.リユース市場の動向

リサイクル通信によると、2021年のリユース市場は前年比 11.7% 増の 2.7 兆円で、2009 年以降 12 年連続で拡大しています。

出典:リサイクル通信

衣服のリユース(リセール)といえば、古着屋やフリマサイト、リサイクルショップなどが一般的ですが、近年ではリユース事業に新しく乗り出す一次流通企業も出てきています。
例えば、株式会社ZOZOは、ファッション通販サイト「ZOZOTOWN」に加え、ブランド古着のファッションモール「ZOZOUSED」と、ブランド古着の買取「ZOZOTOWN買取サービス」の2つのサービスを展開しています。

日本のみならず欧米でもアパレルブランドを中心に一次流通企業がリユース事業を立ち上げ、注目を集めています。参入が難しいリユース事業において欧米企業は、RaaS企業と協業しリユース事業を展開しています。

2.リユース事業への新規参入

一次流通企業がリユース事業を始める方法としては、自社ですべて企画・開発・運用をする方法と、他社と協業して立ち上げる方法があります。
リユース事業は不確実性の高い領域であるため、参入にあたっては「小さく始める」ことが大事です。立ち上げには、追加のリソースや専門的なノウハウが必要になります。
必要なリソースの例としては、以下が考えられます。

  • ユーズド品の買取機能

  • 検品や買取価格の査定を行うノウハウ

  • クリーニングや修理機能

  • 商品を管理する倉庫

  • 再販を行うためのチャネル

これらのリソースやノウハウを自社のみで構築するのは容易ではありません。そこで、リユース事業の立ち上げを検討する場合、事業立ち上げや運営をサポートしてくれるRaaS企業や再販プラットフォーマーなどと協業することで、参入に必要なリソースやノウハウを少ない投資で素早く獲得することができます。

3.海外における『RaaS企業』との協業事例

欧米では、RaaS企業との協業による参入が盛んに行われ、実際にアパレルブランドが自社製品をリセールする事例が増えています。

事業の立ち上げや運用を支えているRaaS企業は多数存在し、各々に特徴があります。そこで、ブランドリテーラーのリユース事業を支える欧米企のRaaS企業を5社紹介します。

TROVE

TROVEは、リテーラーがリユース事業を行うために必要なプラットフォームを提供している企業です。
パートナーには、patagonialululemonLevi'sREIEileen Fisherなどの「サステナビリティや環境問題に課題を持っている」ブランドや「アウトドア用品を扱う」ブランドであることが特徴です。

TROVEは、ユーズド品の買取/EC販売のBPOを提供しています。
パートナー企業のユーザーからアイテムを回収し、次のユーザーに届くまでのプロセスは大きく5つです。

①ユーズド品の受取
TROVEのパートナー企業のユーザーは、使用済みの衣服などを店舗に持ち込み買い取ってもらう。ユーザーの報酬は各ブランドによって異なりますが、店舗・オンラインで使えるストアクレジットもしくは現金で受け取ることが多いです。

②商品の管理、検査
各店舗で受け取ったユーズド品は、TROVEの倉庫に送られ、各商品のタグをスキャンし管理します。その後、商品の状態や機能の確認などチェックが行われます。所品の状態によってAからFまでのグレードが付けられます。このグレードを基に、各ブランドのリセールサイトでは「Good as New」や「Excellent」とユーザーに商品の状態が分かるように表記されます。

③クリーニング、修理・修繕
再販のために必要であれば、クリーニングや修理・修繕が行われます。

④写真撮影、値付け、Webサイト掲載
クリーニングが終わった商品は、1点ずつ写真撮影と値付けがされ、各ブランドのリセールサイトに掲載されます。

⑤発送
各ブランドのリセールサイトから注文が入ると、該当の商品が取り出され、購入者に発送されます。

このように、リユースビジネスに必要な一連の作業をパートナー企業の代わりに行っています。

写真出典:TROVE / WWD

さらに、ダッシュボードによる在庫状況や商品エンゲージメント、再販サイトのパフォーマンス、顧客の行動など、ブランドのアジリティを高めるためのデータインサイトを提供しています。
これらのインサイトにより、再販プログラムの成長を加速させ、顧客体験を把握し、顧客LTVを向上させることができるのです。

写真出典:TROVE

TROVEは、リセール参入の効果について次のように述べています。

中古品を購入する買い物客のほとんどは新規顧客でした。現在、TROVEのプラットフォームでの購入者の70%以上が、そのブランドから初めて購入しています。

Trove, the Platform Behind Lululemon and Levi’s Resale, Raises $77.5 Million

The Renewal Workshop

現在、Bleckmannの傘下にあるThe Renewal Workshopは、提携先のアパレルブランドから、タグが付いていない商品や、ボタンが1つ欠けている商品など”訳あり商品”を引き取り、新品同様の品質に再生して「リニュード・アパレル」として再販するプラットフォームを提供しています。プラットフォーム実装だけでなく、自社工場でロジスティクスや仕分け、洗浄、修理も行っています。

写真出典:The Renewal Workshop 

提携先ブランドから回収された衣服は、「ゼロウェイスト・プロセス」という独自の技術やシステムを活用して、年間に数千~数百万点を再生・再販しています。

「ゼロウェイスト・プロセス」
には、6つの段階があります。
①分類
②回収衣類のランク付け
③徹底した洗浄
④新品レベルへの修繕
⑤検査・検品
⑥両社の品質基準による検証

この6段階を経て、2つの方法で再販されます。
 1.提携先のブランドで再販
 2.The Renewal Workshopのオンラインショップで新品より30%安く販売

さらに、回収した衣服の中でリニューアルできない商品に対しては、アップサイクルやダウンサイクルを行えるような仕組みも持っているのが特徴です。

The Renewal Workshopが行った、50を超えるブランドの製品評価に関する調査では、廃棄物と分類された製品の平均82%が再生・再販可能であるとわかっています。また、アパレルブランドは、新しい製品を生産する代わりに既存の製品をリニューアルして販売することで、炭素排出量を平均 51.5% 削減できることが示されています。

AirRobe

AirRobeは、『Circular Wardrobe』というテクノロジー製品を提供し、アパレルブランドの循環型サービスの参画をサポートしています。『Circular Wardrobe』を各ブランドのオンラインショッピングサイトの購入ページに統合することで、購入品した商品をユーザー自身が衣服を再販やレンタル、リサイクル、寄付できるようになります。

ブランドは、オンラインサイトに『Circular Wardrobe』プラグインアプリをインストールするだけで完了です。AirRobeは、再販、レンタル、リサイクルに関する運営やリスクを受け持ち、製品の販売後の活動に関するデータインサイトをブランドへ提供します。

ユーザーは、商品購入時にCircular Wardrobeに登録することで、マイページからいつでも再販、レンタル、リサイクルに回すことが可能です。

写真出典:AirRobe

例えば『Resale』を選択した場合は、商品の状態と価格設定するだけで完了します。
さらに、どのくらい環境に貢献できたかユーザーへフィードバックをすることで、ユーザーの意識を高めることができているのかもしれません。

写真出典:AirRobe

AirRobeは、自社と提携することによるビジネスへの影響を4つ示しています。

  1. 平均受注額の20~35%の増加 ※1

  2. 15%のコンバージョン率向上 ※1

  3. 顧客の訪問頻度が2倍増 ※1、2

  4. Scope 3 排出量とアフターマーケット廃棄物の削減 ※3

※1 現在のAirRobeブランドパートナーにおける平均アップリフト。アップリフトは、AirRobeの顧客と非AirRobeの顧客に対して測定される。
※2 AirRobeの顧客は、非AirRobeの顧客と比較して、購入後90日以内にパートナーウェブサイトを再訪問する確率が2倍になる。
※3 scope3 排出量とは、他社から購入した製品の製造時に排出される温室効果ガスや、自社製品を消費者が使用したときに排出される温室効果ガスなどのこと。

Archive Resale

Archive Resale(以下、Archive)は、ブランド向けにリセールをビジネスに簡単に組み込むことができる、カスタマイズしたソリューションを提供しています。ブランドのオンラインサイトで新製品とリセール製品の両方をシームレスに購入できるような仕組みを提供しています。

写真出典:Tech Crunch

Archiveが行うサポートは3つです。
①出品、発送、毎日のオペレーションをサポート、プラットフォームの管
②eコマースプラットフォームに関係なく、ブランドに合わせたサイト構
③商品データを統合、共有し、販売実績やコミュニティへの参加状況などを可視化

一方、ユーザーが行うのは、大きく2つです。
①ブランドのリセールサイトに売りたい商品を掲載
②商品が購入された後、ストアクレジットor現金を選択して受取

実際、利用するユーザーの約75%がストアクレジットを選択しているそうです。

Reflaunt

Reflauntは、ハイブランドとリセール市場をつなぐプラットフォームサービスを提供しているロンドンの企業です。アパレルブランドが持つ既存のECサイトと様々なマーケットプレイスを活用し、再販しています。
Reflauntが再販する商品の調達方法は、2種類あります。1つは、小売店やアパレルブランドから直接再販商品を調達する方法、2つ目は、ブランドのユーザーからの調達です。

ユーザー経由の調達から再販プロセスは、次の通りです。
①ブランドECサイトで購入した商品を手放したいとき、各ブランドECサイト上のアカウントページで「再販ボタン」をワンクリック
②商品データが取得され、アルゴリズムで適正価格を提案
③商品を倉庫へ配送
④商品の評価、商品の写真撮影
⑤Reflaunt提携の「ヴィスティエール・コレクティブ」「バイド・ドレッシング(VIDE DRESSING)」など世界中で再販
⑥どこか1つのプラットフォームで購入されると、他のすべてのプラットフォームから商品情報は削除される
⑦出品ユーザーには、ブランド内で使えるストアクレジットor現金で還元

写真出典: IDEAS FOR GOOD

Reflauntは、すべてのエンドユーザーが 1 つのブランドで買い物をしたいと思っているわけではないと述べています。Reflauntが提供するユーザー体験は、Archive Resaleと同様ですが、同社は同じ服を数十の再販サイトに掲載することで販売スピードを上げ、世界中の3000万人を超える潜在顧客にリーチすることを実現しているのです。

4.協業のデメリットはあるのか

しかし、協業することでのデメリットはないのでしょうか?
協業のデメリットとしては、以下の2つが挙げられます。

  • 内製化しないことによる収益やノウハウが流出すること

  • 協業先が他社と被ることで、似たようなサービスになること

しかし、リユースビジネスの立ち上げ初期は、少ない投資からはじめ、ビジネスとして軌道に乗り安定した収入を得られるようになった際に、内製化できる部分を増やしていけば良いのではないでしょうか。

また、2つ目のデメリットに対しては、「パートナー企業の選択」が重要になってきます。
欧米の事例を見ても、顧客企業それぞれに合わせてオリジナルにカスタマイズできる協業先や、自社のアイデアや価値観を実現できる協業先を選ぶことで、より自社に合ったリユース事業を展開することができると考えます。

5.二次流通支援サービスのご紹介

リユース事業の参入には、専門的な知識やリソースが必要かつ、リスクも伴うため、なかなか自社だけで取り組むのは大変です。
Selloop』も『RaaS企業』のように、メーカー・小売企業様に向けて、リユース事業の立ち上げ・運営をクイックに、そしてできるだけローコストで進めていくための総合的なサポートをさせていただきます。
商材の特性やマーケティング課題など、お客様の状況に合わせて、ビジネス設計から販売チャネル、適正価格の査定、在庫管理までをカスタマイズし、ご提案します。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

リユースビジネスへの参入をご検討の方・ご興味のある方は、Selloop webサイトよりお気軽にご相談ください。

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