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オーストラリア農業の先進性から学ぶ! 第25回 「光合成」を活用した高品質なトマトを作る技術とは?

オーストラリアは、広大な土地と先進的な技術を活かして農業において世界の最前線を走っています。ここ約10年でオーストラリアの農業は大きく進化し、特にトマト栽培において顕著な成果を上げています。約10年前には、オーストラリアのトマトは加工用でしか食べられないような酸味の強いものでした。しかし、現在ではフルーツトマトと呼ばれる糖度の高い高品質なトマトが市場に出回るようになりました。この進化の鍵となったのが、光合成促進技術の活用です。

オーストラリアの巨大な環境制御型の農業

オーストラリアは、農業における技術革新の先駆者としての地位を確立しています。特に、光合成促進技術を取り入れた大規模な環境制御型栽培施設の導入は、その象徴的な例です。オーストラリアの農業企業は、広大な土地と豊富な日照量を活用し、効率的かつ持続可能な農業を実現しています。
 例えば、Flavorite社Costa Group社は、40ヘクタールを超える巨大な環境制御型トマト栽培施設を運営しています。この施設では、光合成を最大限に活用するための環境条件(温度、湿度、CO2濃度)を自動的に管理し、高品質なトマトを安定的に大量生産しています。このような施設がオーストラリアの主要都市近郊に次々と建設され、国内のトマト市場を支配しています。

Costa Group社の豪州最大規模(40ha超)の環境制御型トマト栽培施設@NSW州

 技術の背景と進化

 光合成促進技術は、オランダで発祥した技術で、植物の光合成過程を最適化するために開発されました。光合成とは、植物が光エネルギーを利用して水と二酸化炭素からデンプン(糖)を生成する過程です。オランダの施設園芸では、この過程を最大限に効率化するために、光合成に必要な条件を厳密に管理しています。
オーストラリアは、この技術をさらに進化させ、広大な土地に適応した大規模なガラスハウスを建設することで、超大量生産を可能にしました。オーストラリアの施設園芸は、より大規模な環境制御施設を建設し、効率的な生産を実現するために、この技術を巧みに取り入れています。

光合成促進技術のメカニズム

光合成促進技術のメカニズムについて説明します。光合成は、植物が光エネルギーを利用して水と二酸化炭素からデンプン(糖)などを生成する過程です。この過程が効率的に行われることで、作物の生長と果実の品質が向上します。
光合成を最大限に促進するためには、温度、湿度、CO2濃度などの環境条件を最適に保つ必要があります。
光合成を促進させるためには、温度、湿度、CO2濃度等の条件を整える必要があります。バランスがとれた好条件の環境が整えば、単位時間当たりの光合成量を表す光合成速度が増し光合成が進みます。光合成の化学反応は作物により異なりますが、CO2 濃度が十分な場合、30℃程度で最も光合成速度が高くなります。ただし、高温になるほど呼吸量の増加や酵素の活性低下等による阻害要因が大きくなるため、トマトを含めた多くの作物の最適な栽培温度は 20~25℃です。また、光合成は CO2 を有機物に固定する反応であり、CO2 濃度が低いと光合成速度は低下し、濃度が高いと速度は高くなります。

光合成を促進させる方法

  • 温度管理:生育に最適な20~25℃の範囲で細かく調整します。

  • CO2濃度:通常の大気の約1.5倍にあたる600~800ppmに保ち、光合成の原料を豊富に供給します。※光合成スピードを速める場合や生育ステージにより濃度を調整する。通常、400~500ppmの大気と同程度でも十分栽培可能である(CO2排出量、コストを削減できる)。

  • 光量調整:自然光を最大限に活用しつつ、曇りの日や夜間は人工光で補うことがあります。

  • 水分管理:根への酸素供給と適度な水分ストレスのバランスを取り、光合成産物の果実への転流を促進します。

施設栽培用CO2施用機一例

まとめ

オーストラリアの施設園芸は、光合成を最大限に活用するために、温度、湿度、CO2濃度などの環境条件を最適に保ち、品質の高いトマトを大量に生産しています。これにより、国内外の市場で高い評価を得ています。光合成促進技術は、トマトを始めとする農作物の品質向上に欠かせない技術です。この技術を参考にすることで、さらなる品質向上と収益増加を目指すことができます。

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