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詩94/ 間違えてはいけない時代

間違えてはいけない時代の雨は
戻れない間違いを誘うほどに
雑踏から音を掻き消していく

間違えてはいけない時代の青空は
邪念のない無言の笑顔で
俺の体を抑えつけて刺し続ける

間違えてはいけない時代の太陽は
0か100しか価値観がないことを
子どもたちに刷り込もうとする

間違えてはいけない時代の月は
間違いと言われることを恐れて
自分の輪郭を毎晩変え続ける

そして
間違えてはいけない時代の
夜空の片隅に朧げに光る星は

許された時代の光を
遠い過去から自信無さげに放ち

もうそこにはいないのに
永遠にそこにいるふりをし続ける

間違えてはいけない時代と
全てを間違えた天象の間に
摩擦で生じた静電気の束は

紫の光を帯び
やがて地面を穿つ雷になる

雷よ
お願いだ

世界の波に翻弄されるだけの
無力な俺の存在が
原子核のレベルにまで
細かく砕けるまで
何度も何度も撃ち抜いてくれ

全ての矛盾を
一から組み立て直すために
今も過去も
意識すらも砕いて

何事も無かったかのような
完全な沈黙と初期化を
俺に与えてくれ

そして
すべてが鎮まったあと
小さな蝶のように舞う
新しい電子を捕まえて

一切の歴史を背負わない
誰にも見えない命を
俺は
また始めるのだ



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