「アメリカの最低賃金1950円」はミスリード 共産党・志位委員長がツイート
検証対象
判定
ミスリード (判定の基準について)
アメリカの連邦レベルでの最低賃金は約970円。バイデン大統領が公約で引き上げを表明しているが、まだ実現はしていない。
ファクトチェック
公約の記述
これと類似の文言は、日本共産党の参院選公約である2022年参議院選挙政策にも登場する。
しかし、ここでは、イギリス・ドイツ・フランスの最低賃金については「引き上げが行われ」と書かれているのに対し、アメリカについては「引き上げをうちだしています」と、まだこの金額が達成されたわけではないことが示唆されている。
なお、各通貨はそれぞれ約160円/ポンド、約140円/ユーロ、約130円/ドルで換算されているようだが、いつの時点の為替レートで換算したのかははっきりしない。また、志位氏のツイートとこの公約ではフランスのみ数値がやや異なっているが、この理由も不明である。
アメリカは未達の目標値
アメリカの連邦レベルでの最低賃金は、現在、時給7.25ドルと定められている。これは、志位氏がツイートした6月8日時点のレートで約970円に相当する。
連邦レベルのものとは別に、アメリカでは多くの州が州法で独自の最低賃金を定めており、労働者は連邦・州いずれかの高い方の最低賃金を受け取る権利を持つ。本稿執筆時現在では、全米50州と1つの特別区のうち31の州・特別区で連邦レベルよりも高い最低賃金が定められており、最も高い首都ワシントンDCでは時給15.20ドル(6月8日時点のレートで約2030円)となっているが、他に15ドルに到達しているのはカリフォルニア州のみである(従業員25人以下の組織では14ドル)。
「連邦の最低賃金15ドル」は、アメリカのバイデン大統領が2020年の大統領選の時から公約に掲げ、2022年3月の一般教書演説でも言及している重要政策のひとつだ。2021年4月に連邦政府と契約する業者の従業員の最低賃金を15ドルとする大統領令が署名されるなど、一定の進展はあるものの、連邦レベルの一律の最低賃金引き上げは未だ実現の目途が立っていない状態だ。
英独仏は実現・実現予定値
その他各国の現在の最低賃金(時給)は、イギリスでは9.50ポンド(2022年4月から)、ドイツは9.82ユーロ(同1月から)、フランスは10.85ユーロ(同5月から)となっている。ドイツは2022年7月から10.45ユーロ、10月から12ユーロに引き上げが決まっている。
このように、挙げられている各国の最低賃金額は、既に実現されている、あるいは実現が決定しているものと、実現の目途が立たず目標のみが存在するものとが混在している。共産党の公約上ではこうした個別の状況はある程度説明されていると言えるが、志位氏のツイートでは「軒並み大幅引き上げが進められている」とだけしており、性質の異なる数字が並べられていることへの説明が不十分である。したがって、このツイートは「ミスリード」であると判定する。
同様の検証として、ITジャーナリストの篠原修司氏による記事も参照のこと。
共産党の回答
リトマスでは共産党の広報担当を通じ、ツイートで挙げられている数字の根拠や、アメリカの最低賃金の詳細などについて尋ねる取材を行った。その結果、電話で以下のような回答(要約)があった。
(大谷友也)
謝辞
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