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「参院選投票用紙の2枚目、個人名書くと2倍の効果」はミスリード 政党得票総数と候補者個人としてカウント

検証対象

参院選の投票用紙の2枚目って、『個人名』書くと、個人と党両方のカウントとなるから2倍の効果があるの知ってますか。 贔屓の政党があったら、2枚目は『個人名』を書いて下さいね。政党名を書くより強力なんだよ。 これ、マメね❣️

コンサルタントであるユーザーのTwitter投稿(2022年6月18日、約3900RT)

判定

ミスリード 判定の基準について

参院選比例代表の投票用紙に候補者の個人名を書くと、各政党の獲得票と候補者個人の票の2通りでカウントされることになるが、いずれかの票数が「2倍」になる訳ではない。

ファクトチェック

2022年7月10日に行われる第26回参議院議員通常選挙(参院選)を前に、Twitterでは選挙制度に関する様々な言説も拡散されている。

参議院選挙の仕組み

参院選の投票には、各都道府県または2県の合区を選挙区の単位とする「選挙区選挙(選挙区選)」と、全国を通じて選ぶ「比例代表選挙(比例選)」の2種類があり、それぞれ投票用紙が異なる。このツイートの「参院選の投票用紙の2枚目」とは、後者の比例選の投票用紙のことだ。

比例選で当選者を決める際には、まず各政党の総得票数(候補者個人名が書かれた票と政党名が書かれた票を合算した数)によって、各政党に議席数が配分される。そして、それぞれの政党は配分された議席数の中で、まずは「特定枠」としてあらかじめ指定された候補者、次に得票数の多い候補者から順に当選者が決定される。

詳しくは、参議院ホームページ「現行の参議院議員選挙制度」の「2. 比例代表選挙(非拘束名簿式比例代表制)」の項や、総務省の参院選特設サイト選挙ドットコムFNNなどの解説を参考にされたい。

なお、参院の比例選ではこのように得票数によって当選者を決める「非拘束名簿式」が基本となっているのに対し、衆議院の比例選では各党があらかじめ候補者の当選順位をすべて指定する「拘束名簿式」が用いられている。拘束名簿式の衆院選では、候補者個人名での投票は無効となる(参照)。

候補者名で「2種類」の効果

参院の比例選の投票用紙には政党名を書いて投票することもできるが、この場合、その党の議席数を決める総得票数としてはカウントされるものの、その中で具体的にどの候補者が当選するかには関係しない。

一方で、候補者の個人名を書いた場合、党の総得票数と、当選者を決定する個人の得票数、どちらにもカウントされることになる。この意味で、候補者個人名での投票は「2種類」の効果があると言えるが、政党あるいは個人の得票数が「2倍」になる(2票としてカウントされる)というようなことはない。政党名であれ個人名であれ、1人1票という原則に変わりはない。

検証対象のツイートで「『個人名』書くと、個人と党両方のカウントになるから2倍の効果がある」とあるのも、このような「2種類」の効果のことを指しているとも考えられるが、「票が2倍」という誤った解釈をされる可能性もあるため、「ミスリード」と判定した。

同様の検証として、ITジャーナリストの篠原修司氏による記事も参照のこと。

(小俣杏香・大谷友也)

謝辞

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