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間接承認

僕が教師を行っていた地域はとても教育に対して熱を入れてしっかりと取り組んでおり、日本三大教育と呼ばれていた地域の一つでした。

その名残からなのか、どの学校にも名物先生がいて、その先生の授業を見ているととても刺激を受け、その先生のようになりたいなあと思ったものでした。
常に授業を見せ合う交流の機会があり、お互いに切磋琢磨しながら授業の腕を磨いていたと思います。

上手くいかない日々

僕が小学校に移ってから1年目に市の大きな授業研究発表を受け持つことになりました。今思うと無謀だったと思います。

僕は5年生の担任をしていましたが、5年生は6年生と共に高学年部会ということで常に会議をして交流しており、その部会として授業内容を考えていきます。

小学校にきて何も分かっておらず、思ったように授業がうまくいかない日々が続きました。

何度も何度もやりますが、うまくいかず、学校に夜遅くまで残って授業案を作る日々が続いていて、やっぱり1年目だし上手くいかないのかもしれない、と諦めかけていたとき、

6年生の担任の女性の先輩先生が声をかけてくれました。彼女はいつも学級をうまくまとめ、子どものモチベーションを上げるのがとても上手い方でした。

「この間、あんたの尊敬しているK先生と話とったんさ、K先生が今度の授業研究の発表者は誰ですか?って聞いてきたんで、中学校からきた稲垣っていう子がやりますって私が言ったら、K先生が、あ〜、あの子ならきっと上手くやってくれますよねって、言っとったで」

とさりげなく、帰り際に伝えてくれました。

K先生は、僕が憧れている男性の先生で、非常に授業が楽しく、子ども達が自然と意見を言い合う姿の授業を何度か見せてもらったことがあります。でもK先生が僕の名前を知っているとは思わなかったし、その憧れる先生から信頼されているということを聞いた僕は、もう嬉しくて嬉しくて、パワーが全開に湧いてきました。

それまで眠そうな目で、疲れた顔で仕事をしていたと思いますが、その話を聞いてから、カッと目が開いて目の前の仕事に対してかなり力を入れて行うことができました。

その後も準備は続きましたが、何とか授業発表当日を迎え、たくさんの先生に見ていただき、とても上手く行ったとは言えませんが、自分の中では、何とかやり切ったという達成感と、スキルアップができたことで、子どもたちと行う授業に良い影響が出ていたと思います。

間接的にポジティブな事を伝えてみる

今回は、女性の先輩先生の一言がなかったら諦めていたかもしれません。こういったさりげない一言で人のモチベーションを上げるのが上手い先生はたくさんいますが彼女の一言はタイミングといい内容といい完璧でした。

この授業発表で学んだのが、この部分です。

コーチングでは、このような女性の先輩先生が行った言動を「間接承認」と言います。

直接本人が言うのではなく、間接的にポジティブな部分を伝えることで、モチベーションが上がります。これは直接伝えるより何倍も効果があり、間接承認は、承認の王様と呼ばれています。(僕が呼んでいるだけですが)

これを学級の子どもたちに早速使っていましたが、特に女子には効き目が大きかったように思います。女子は口コミが起こりやすいですし情報が入るのが男子より早いようでした。

授業はこうやってやるんだよという、具体的なことは教えてもらえませんが、一つ一つの関わりから学べることは本当に多くの場面でありました。


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