『相棒と私』第3回

 県大会の練習を始めた時から、私と相棒は近くにある丸亀製麺に通う習慣ができた。
 周囲にあるのは丸亀製麺、スーパー、公園くらいの小さな駅なので、うどんを食べてからスーパーでアイスを買い、公園でぼーっとしたり軽く練習するのが、いつもの流れなのだ。

 私はカレーうどんか、ぶっかけうどんのどちらかを食べるのだが、相棒はいつもかけうどん。10年近く食べ続けている、ぶれない男。高校生の時に一回だけ、相棒はうどん4玉をたいらげた事があったのを、よく覚えている。2玉食べ終わった瞬間に
 「ちょっとおかわりしてくる」と言って、また2玉買いに行った。化け物だ。

 うどんを食べたらすぐに帰るのではなく、しばらく喋り続ける。いままで、旅の話、恋の話、成績の話、全てのジャンルをこのうどんの時間で話し合ってきた。
 ある時、練習終わりにいつもうどんを食べに2人で行っていることを姉貴分に話すと
 「え、何それ私も行きたい」と自ら加入する度胸を見せた。
 当時、私と相棒は中1で姉貴は30歳近くだった。なかなか歳の差があるのだが、それを感じさせない明るさ。とても暖かい人なのだ。

 最初は、姉貴は私と相棒の会話を聞き、それに対して話を広げたりコメントをしたりするだけで、自分の私生活については全く話さなかった。なので、素性が知れない大人の女の人だったのだ。

 (そもそもなぜそんな姉貴が道場にいるのかは、数年後にわかることになるので、追って深掘りすることにしよう。)
 

 遂に私と相棒は高校受験を考えなければならない時期に来ていた。うどんを食べながら、何となく相棒に成績を聞いた。

 「オール4くらいかな」
 
 「は」 

 私は開いた口がふさがらなかった。
当時の私は、勉強を全くしたことが無かった。そもそも勉強のやり方が分からなかった。
 テスト勉強なんてもってのほかで、教科書の大事な所をノートに書き写して満足したり、そもそもやってないことの方が多かった。
 なので、成績はオール2よりはいいけれど、先生から心配されるくらいのものだった。
  それに加え、授業中に教科書を出さない時だってあったくらいだ。机に直接「ノートを取っている」と言い張って書いてみたり、歌を歌ってみたり、友達と話したり。とにかく自由人だった。

 仲良しの奴の弁当を、ふたを閉めて全力で振ってみたり、下ネタを極めすぎて協力担任から「おいエロ」とい呼ばれたり、何もないのに声を出してみたり、とにかくハチャメチャだった。
 今思えば、周りよりも発達が遅れているタイプなのだと思う。


 それに比べて相棒は運動神経がよくて、なかなか秀才。うどん屋で進路の話をしていても、私は行ける高校があるかどおかの心配、相棒は行きたい高校に受かるかの心配だった。
 いかにデコボココンビかということが分かるだろう。

 そんななか、武道の初段試験の話が遂に俺たちに回ってきた。高校受験よりも初段試験を最初にかたずけなければならない。

続く

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