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『ジョニーぶらり旅』グアム編①

 沖縄一人旅から帰還して、早くも半年が経とうとしていた。旅から帰ると、常にどこにでも行けてしまう放浪者のような感覚が続く。しかしそれも徐々に薄れ、家と学校、バイトといった日常生活への帰属意識がまた戻ってきていた。
 そんな中、学校は春休みに突入し、三か月近く予定が空いてしまった。長期休暇の時こそ、旅に出るチャンスだ。実は、沖縄で二週間ほどシェアハウスでもしてみようかなと考えていたが、なかなか航空券を買う気になれなかった。


 なぜだ。どうしてだ。気が乗らないなんて。
 これは行くタイミングではないのか。
 そうか、遂に海外へ飛べということか。


 バイト代を頑張って貯金していたので、幸いにも今回は海外に行けそうだ。そう思って、初海外に最適な場所を探していた。「フィリピン」「韓国」「ハワイ」「ロサンゼルス」
 どれもしっくりこなかった。フィリピンは、やはり初回にするのは怖い。

            「グアム」
 
 突然頭に浮かんだ。そうだ、グアムだ。一応アメリカだから、英語も使え、尚且つ日本からも近い。
 「よし、グアムに行こう」

 航空券とホテルを予約し、成田空港へ向かった。今回は、フライトが朝だったため、前日に空港内のカプセルホテルに泊まることにした。

なんだかSF映画のようだ


 もちろん、初海外は食欲がなくなるほど緊張した。あまりお腹の調子が良くない。むかむかする。あっちに着いて、殺されたら、急に体調が悪くなったら、そんな不安が永遠と頭の中を駆け巡っていた。

 朝にサンドウィッチを頑張って口に入れるが、吐き気がする。しかしめげない。数時間後に外国という未知の領域に足を踏み入れるが、「たのしいよ、なんとかなるよ、大丈夫だよ」と頭で言い聞かせて、なんとか搭乗手続きを取った。

 しかしなぜか税関やゲートで、英語で対応される。しまいには、パスポートを見せるまで、外国人として誘導される始末。
 「なんだ日本人か、こっちだよー」
 どうしてだろうか・・・。
 疑問に感じながらも座って待っていると、一人のアメリカ人CAさんが私の方へ来た。
 「Are you military?」(あなた軍人?)
 不安で落ち着かないところに、突然ネイティブのスピードで話しかけられたので、最初は何を言っているのか分からなかった。ミリタリーという単語が、メルカリに聞こえる始末だった。
「え、メルカリ??おれメルカリで予約してないぞ…」
「military. Are you military?」
また同じこと言ってる。どうしよう…。とりま自己紹介か
「I’m Japanese」
「ahhh okay」
あ、通じた。一呼吸おいたらやっと何を聞いていたのかが理解できて、ひとりで突っ込んでしまった。
「なんでやねん。ピンクのパーカー着て黒いキャップかぶってるのが兵隊なわけあるか」
 (余談だが、キャップはミリタリーキャップだった…)

 アメリカの航空会社なので、先に軍隊の方たちが優先して通される。最後のほうになって、私も通された。
 と思ったのだが、CAさんに止められた。「すみません、ちょっときてください」
 そう言われ、端においてあるデスクのところに誘導され、持っていたノートパソコンを念入りに拭き取られ、薬物が付着していないか調べられた。

 もちろんクリーンだ。まさか初海外行く前に薬物検査されるとは。
 そして、恐る恐る「私、怪しかったですかね?」と聞いてみた。

 「はい!すこし!」 アメリカ人CAさんは笑顔でそう答えた。
 つづく


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