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『ジョニーぶらり旅』フィリピン編⑥

 衝突事故から10分、何事もなかったかのように運転手が戻ってきて、出発した。ここでの交通事故は、警察を呼ばないらしい。
 衝撃的な体験に動悸が止まらなかったが、他の乗客もいたって普通にしているので、私もだんだんと「これが日常」という感覚が芽生えた。

 私の後ろに座っていた白人男性に話しかけてみると、なんと日本語を話せるオランダ人だった。日本に留学に行くのが夢らしく、勉強中とのこと。異国の地で日本語を話せる人に会うのはとても嬉しい。
 そして私の隣に座っている、美人な白人女性に話しかけてみた。
 「どこから来たの?」と聞くと、「セブ出身だよ」と言う。そんなまさかと思ったが、よくその女性の顔を見ると、たしかに100%白人というわけではなく、なんとなくアジア系の血が感じられた。
 アメリカに占領される前に、フィリピンはスペインの占領にあっていたのだ。そのもとで、首都マニラとセブが港として開かれ、物流の拠点となった。なので、フィリピンにはマレー系と中国系、そしてスペイン系との混血などの、多様な人種が存在する。

 そしてなんと、その女性は日本に旅行に行ったことがあるという。
 「日本に行ったけど、英語が通じなくて大変だったよ」と言われた。
 フィリピンにいると、日本人は英語話さないねとよく言われる。なんだか悔しいような、優越感に浸れるような。だけど、やはり残念だなと思う。

 バンには合計3時間半乗り続けた。運転手がとんでもなく飛ばすし、道はガタカダで山道ばかり。なかなかスリルのある3時間半だった。
 窓から見えるフィリピンの田舎風景はとてものどかで、人間社会と自然が丁度よい比率で共生しているように感じられた。初めて来たはずなのに、故郷に戻ってきた感覚に近かった。やはり私はフィリピンが肌に合っているのだろう。

窓から見える田舎景色

 90キロ南下して、遂にMoalboalに到着。東南アジアの田舎についに来た。海が綺麗で、山に囲まれている秘境。

移動した距離


 一部エリアに滞在するためにはお金を払う必要があり、とても安全に管理された観光地なのだ。ゲートの係員の女子からアイサインをされ、とてもドキッとした。
 トゥクトゥクに乗って近くの安宿に行く道中、運転手が信じられない話をしてくれた。
 「ここではチキンファイトが見られるよ」
 何を言っているのか分からなかった。臆病者同士の格闘試合でも見られるのかと思ったが、話を聞いてみると、どうやら鶏同士の決闘が見られるらしい。なんてカオスなんだ。
 結局、観に行こうとしてすっかり忘れたので、次に行ったときには観覧しようと思う。

乗ったトゥクトゥク

 ホステルと呼ばれる安宿を一部屋取ることができた。一人で泊まるはずなのに、なぜか二段ベッドとシングルベッドが置いてある、三人用の部屋に泊められた。後二人誰かを調達しろという事か…?なんちゃって


 着替えを済ませ、海に入るために外に出た。波の音が聞こえてくる。周囲は海辺のログハウスのような建物ばかりで、日常生活を完璧に忘れることができる。これぞ南国バケーションだ。

 海水浴にちょうどいい浜辺を探して散歩していると、棒も持った3人組に出くわした。
 フィリピン武術のグランドマスターと、その弟子達だった。

 その瞬間に、フィリピンに来た目的を思い出した。2022年、マニラ一人旅を計画した時は、フィリピン武術を習いに行くことが目的だった。フィリピン武術こそ、フィリピンに興味を持った理由なのだ。


 そのフィリピン武術が、目の前で繰り広げられている。
 グランドマスターに交渉して、1000ペソを取られながらもしっかりと練習をつけてもらえることになった。(ぼったくられている。)
 遂に、ナイフ術を習う事ができる。


 私の夢が叶うのだ。

つづく

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