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【短編小説】死神の森

その男


その日、いつものように森を散歩していると怪しげな格好をした男を見つけた。
その男は全身が黒一色で明らかに怪しい行動をしていた。
一生懸命大きな袋に何かを詰めているのだ。
そうして何かを大きな袋に詰め終わった男は周りに誰もいないことを確認して森の奥深くへと歩いて行った。
気になった私はその男に気づかれないようについていくことにした。
危ないことかもしれないが私は自分自身の好奇心が抑えられなかったのだ。
これを読んでいるみんなは絶対に真似しないように。

死神


今日が晴れていれば、あの男が何を袋に詰めていたか確認できたのに。
太陽が隠された空を恨めしく思いながら前を歩く男の後を追う。
男はしきりに周りを気にしながら歩いた。
私はコソコソと木の影や背丈ほどある草むらに身を隠しながらその男の目的が何かを考える。
もしかしたら、あの男は人を…
と考えていた矢先、突然その男は大きな袋を地面に落とした。
いや、落としたというより放り投げた。大きな袋は地面に開いた大きな穴に放り込まれたのだ。男は何かを探していた。キョロキョロと大きな穴の周りをうろつく。
しかし目的のものが探せなかったのか、少し濡れている切り株に腰を落とした。
私は大きな穴に放り込まれたあの大きな袋の中身が気になっていた。
もしかしたら今ならそっと男の背後に回り込んであの大きな穴を覗けるかもしれない。そう思った私は音を立てないように男の背後に周り、大きな穴を覗き込んだ。
「うわっ」思わず声が出てしまっていた。大きな穴の中には赤黒く染まっている大きな袋があった。
「誰だ!」その男は切り株から立ち上がって私の方を向いた。
「おい、お前ここで何をしている」男はドスの利いた声で私に話しかけてきた。
「その穴の中にあるものは、なんですか」
質問に質問で返すのは良くないと散々言われてきたのにいつもの癖でつい聞いてしまった。
「お前には関係ないだろう。それよりお前はここで何をしている!」
ギラギラと血走った男の目が私を捉えて離さない。
「もしかして、その袋の中身って人ですか?」
私の質問に男は少し動揺したのか目を左右に動かしながら答えた。
「…違う、違う!あれは死神だ!ずっと俺に付き纏ってきやがって!」
「死神?死神を殺したんですか?」
「金を返せってずっと付き纏いやがって!クソが!電話も!チャイムも!毎晩毎晩うるさくて眠れないんだよ!!」
「お金?」
「金なんて持ってるわけねえだろーがよ!それなのに、返せ返せって!」
「返せ?いくら借りたんですか?」
「はぁ?お前さっきからなんなんだよ!せっかくうまくいくと思ったのによ!ここだったら、この森だったら死神のせいにできたのによ!」


この森


そうだ、この男の言う通りこの森には死神が出る。
と噂されている。
その理由として、この森では変死体がよく見つかるのだ。
『死は死を招く。』とはよく言ったもので、この森で黒い影が大きな袋を引きずっていたら目を合わせないようにその場を去りなさいとこの付近の住民たちは教えられている。目が合えば次は自分の番になる、と。

私は男の格好をもう一度よく見た。
死神の噂を聞いてこの男もやってきたのだろう。
ご丁寧に黒のパーカーに黒のパンツ、全身黒一色だ。
わざわざ大きな袋に死体を詰め直したのも、目撃者が自分を死神だと思って逃げるとでも思ったのだろう。
そんなことを考えていると突然、男がパーカーのポケットから銃を取り出した。
「まあいいさ、一人も二人も同じだ」
そう言って銃の先を私に向けた。
きっとこれを読んでいるみんなは結末がわかっているはずだ。
だってタイトルがそうなんだもの。


本当の死神


大きな音が森の中でこだました。
鳥たちが空の方へ飛んでいくのが見えた。
大きな穴の中で隣にいるジョニーの亡骸が微かに動いた気がした。
なんだ?どうなってるんだ?
全身が生ぬるいもので湿っている。
心地よい暖かさで一気に眠くなっていく。
ああ、やっとぐっすり眠れる。
酒を飲んでも、薬を打っても、何をしても眠れなかったってのに。
そうだ、明日になったらジョニーと話そう。
もう少しだけ待ってくれって。
そして仕事を探そう。
きっと今より頭が冴え渡っているに違いない。
それで俺は、俺は…
そういえばジョニーは死んだんだっけか?いや俺が殺したんだ。
じゃあなんで俺はジョニーと一緒に寝ているんだ?
ここはどこだ?俺を覗き込んで笑っているあいつは誰だ?
手に持っているあれはなんだ?くそ、視界がぼやけてよく見えない。
シャベルか?いやあれは鎌だ。クソでかい鎌だ。
まるで死神みたいだ。
もしかして本当に死神なのか?
…いや、もうどうだっていいか。
やっと眠ることができるんだから。


ついに男は息絶えた。
最後は私の顔を見て穏やかに笑っていた。
私は準備していた大きな袋にその男を詰め直し「さて」と大きな袋を引きずりながらいつものように森を散歩することにした。
きっと次に死神を名乗る者は私を満足させてくれるはずだと期待して。




※台所でチヂミを作っていたら話が浮かんできました。結末が主人公視点ではなくなった時にわかる話って面白いよねって思って書きました。
それと「死は死を招く」って言葉がずっと頭から離れなくてどこかにアウトプットしたかったのでやっと吐き出せました。やってやりましたよ!

…このあとがき、何??(笑)

あとがき







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