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「健康で文化的な最低限度の医学生の生活」とは何か。【臨床実習】

「最低限」という言葉は非常に難しい。
人によって、どこを最低限とするかどうかは全く異なります。

人が使っている言葉の中で、同じ意味を表しているものは実は少ない。固有名詞くらいじゃないでしょうか。


例えば「Apple Pencil 第2世代」といえば、みんなが使っているあの、ダブルタップで機能の切り替えを行うことが出来る機械のことを指します。

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しかし、「実習の最低限のノルマ」という言葉は、一義的には決まらない。


まだ1つしか科を回っていない段階でこんなことを言うのは百年早いかもしれないが。
というか実習は長くても2年しか回らないので100年も待っていると時代遅れになってしまうのだが、個人的には臨床実習を生き抜くというのは思ったよりも簡単なことだと感じている。

どうしてそんな風に思うのか?

今日は、そんなお話。


私の1日

まず始めに、私がどのようにして臨床実習を「生き抜いている」のかを紹介しよう。

朝:5時に起きる、弁当を作る

臨床実習生の朝は早い。しかしこれには理由がある。

朝、実習に向かうまでの間に、「運動」「1日の食事の準備」を済ませてしまうのだ。

具体的には、5時に起きてから30分の間で、その日の弁当を作る。

月・火曜日は豚肉とキャベツのスタミナ丼。
水曜日は生姜焼き丼
木曜日は焼きそば
金曜日は焼きうどん。

後半に麺類が多いのは、水曜日で白米がなくなってしまったためであるがそこは割愛する。

これを、起きてからの30分で作る。

1週間続けてみると意外と慣れるもので、前日のうちに良さげなレシピを見つけ、朝起きたらそれを見ながら調理していく。

理想としては20分くらいで調理が完了するものが良いのだが、ここは調整中だ。


5時45分:弁当のおかずを作り、ジムへ向かう

さて、それが終わったら家を出て、ジムに向かう。

筋トレをするためだ。

腕・肩&背中・足・胸

以上の4種目を、4日周期で回す、というトレーニングを行っている。



朝に筋トレを行う理由は沢山あるが、重要視しているのが

「目覚まし」

「決断疲れによる運動不足を防ぐ」

の2つである。

まず「目覚まし」に関して。

家でゴロゴロしている時につきものなのが、「二度寝」である。

布団の上で過ごしている以上、一定の確率で二度寝してしまう。
外に出てしまうことで、物理的に二度寝をしない、という効果を期待している。


次に「決断疲れによる運動不足を防ぐ」だが、これは単純に、「夜になったら筋トレに行く気がなくなる」ということが関係している。

私の住んでいるところからジムまでは、徒歩で15分ほどの距離である。

元来出不精である私にとってこの距離は結構なもので、

「だったら自重でいいかな」

と、筋トレに行かないということも十分に考えられる。そんな判断をしてしまうのは朝よりも夜に多いのだ。

1日に判断できる回数は決まっている」という言葉を聞いたことがあるだろうか。

ケンブリッジ大学Barbara Sahakian教授の研究によると、人が1日に行っている決断の数は約35,000回だという。

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そして心理学者のジョナサン・レバーブ氏とシャイ・タンジガー氏が行った研究では、午前中から1日の終りに向かって衝動的な決断が多くなり、決断の先送りも増える、ということが分かっています。



人は朝起きてから寝るまで、決断を繰り返している。
朝は何を食べようか。今日は何を着て出かけようか。電車にするか、バスにするか‥‥‥等。

そして午後に向かうにつれて、まともに考えることができなくなるという。

これが「決断疲れ」の状態だ。


朝であればまだ決断疲れも起こっておらず、筋トレを遂行することが出来る。その代わりに今まで出来ていた何かが、決断疲れによってできなくなっているのだろう。


では何を優先的に行うか。個人の趣味趣向が反映される場所である。

例えば私の中では、「筋トレをして体を絞ること」は比較的優先順位が高い
だから、決断疲れが起こらない朝に筋トレをやるようにしている。


その結果、「実習がおわってから少し遠出して夜ご飯を食べる」「実習が終わってから何か別の分野の勉強をする」ということができなくなっていたとしても、それは優先順位が低いことなので、被害は少ない。そう考えている。

このような理由で、私は朝に筋トレを行っている。



さて、朝起きてから30分で弁当を作り、片道15分のジムに行って、1時間ほど筋トレをする。ここまでで2時間。

5時に起き、ここまでのタスクを終了させると7時である。


7時15分:朝食、そして整容

ここから何をするか。朝食、そして整容である。具体的にはメイクをして、髪型を整える作業が該当する。


朝食で摂るものも、予め決めている。
オートミール30gにいりごまを入れ、溶き卵を入れてめんつゆを20ml、そして120ml程水を加えて、レンジで1分30秒チンする。

これで「ほのかにフワフワ卵の雑炊もどき」の出来上がりだ。割と美味しい。15分。


同時並行で、コーヒーを入れる。粉と水をセットしてボタンを押したらコーヒーが出来るようになっている機械を購入したので、それで400ml程コーヒーを淹れる。
そしてマイボトルに入れて、持参するようにしている。

同時並行で、弁当を仕上げる。
起床段階で弁当を仕上げないのには理由がある。粗熱を取るためだ。

おかずをジム出発前に作り、それを弁当(タッパー)に詰めて出来上がり。

昼と夜はこれをそれぞれ1分50秒、4分チンするだけで、ホカホカご飯の出来上がりである。


その後、もしくは同時並行で、メイクをする。その前に洗顔だ。

朝起きたらまず顔を洗う人が多いのだが、私はジムから帰ってきてから洗顔するようにしている。

顔を洗ってからベースメイクをするまでに時間が経ってしまうと、折角保湿した肌が台無しになってしまう、という話を聞いたことがあるからだ。


そんなこんなで顔を洗い、化粧水乳液を付け、下地、ファンデを塗り、10分ほど置く。
この間にコーヒーをマイボトルに入れ、チノパンとワイシャツを着て、持ち物の確認を行う。

10分経ち、余分なファンデをティッシュオフしたら次にフェイスパウダーを付け、ポイントメイクに移る。ポイントメイクはアイシャドウたまにリップくらいしかやっていないので、2分もかからない。グラデーションとアイラインは、そのうちやります。


それが終わったら、最後に髪型を整える。髪型と言っても、ドライヤーで前髪を上げて、軽くワックスを付けるだけなのだが。

一度セットし始めたら、何もしていない時の自分から清潔感を感じられなかったので毎日セットするようになった。
患者さんの前で清潔感を出すためには髪型も意外と重要なのだ。

。。

。。。


7時に帰ってきてからこんな作業をやっていると、大体7時45分~8時くらい。
出発の時間となる。



8時30分:病院、回診、そしてカルテ作成

「指導医よりも先に患者さんのもとに行きなさい。そして様子を報告しなさい」

実習開始にあたって、この様に言われたことのある医学生は比較的多いのではないでしょうか。

私が回っていた科の担当医は7時位に全ての回診を終わらせていたので、ハナからそれよりも先に行くことは諦めていました。ごめんなさい。

「7時なんて、そんな時間で患者さん迷惑じゃないの?」
と思う方もいるかもしれません。でも、大丈夫なんです。


病院の朝は早い。
病院ごとに多少の差はあれど、6時30分に検温、7時30分にも別のイベントが有る入院患者にとっては7時の回診はそこまで早くないんだそうな。ヒエッ。

では朝ごはんはどうか。これも病院ごとに差はあるが、私の回っていた病院では、病院食は朝8時に配膳されます。
つまり、そこから1時間ほどはお食事&おくすりタイムなのです。


8時15分ほどに出勤する私はバッチリ患者のお食事タイムに被っているので、まずカルテを書きます。カルテの書き方は割愛しますが、回診に行く前にも書けることは意外とあるのです。


病院というのは本当にいろんな職種の人がいて、報連相が徹底しています。

食事が終わったら電子カルテに「食事終わりましたよマーク」が付くようになっているのです。それが付いたことを確認して、回診に向かいます。

と言ってもまぁ「昨日は良く眠れましたか」とか、ご飯残してたらそれについて聞いたりします。


午後:授業がなければないですね。


これで終わりです。最低限のノルマは。

この後は例えば、自分が担当している患者の疾患、治療方法について調べたり、投薬状況をみて、「この薬はなんで投与されているんだろう」とか考えます。

それでも朝が早い分、10時くらいには終わってますね。

これが、「臨床実習の最低限」です。

後は希望者が外来見学をしたり、1日に1~2時間くらい講義があったり、というまぁヌルヌルとした生活をしています。
ここは科によってぜんぜん違うらしいです。外科系だと7時間オペに入る、みたいなこともあるので、そうなると1日の拘束時間は長くなりますね。


【雑談】必要じゃないと感じた分野の学習効果は低い

外来、という言葉が出ましたね。それについて。

3日ほど前の記事でも書いたのですが、臨床実習を過ごす上で、QBを演習することは一定の価値があると思っています。

自分が回っている科目のQBを解いていれば、その分野に関してある程度の知識が入っています。
そうなると、外来を見学した時に、先生の言っている内容が理解できます。理解できない分野の勉強をします。


例えば循環器内科の外来でやってきた患者さんにタケキャブが投与されたときには、消化器の薬理の勉強になります。

※タケキャブはプロトンポンプインヒビターという種類の薬で、俗に言う胃腸薬、ですね。


何が言いたいかというと、ある程度勉強していれば、外来やら授業やらのプラスαの授業を受けることで、自分が想像もしていなかった分野の価値を見出すことが出来るということです。

例えばさっきのタケキャブ。
循環器内科の実習中に「消化器内科」の分野に価値を見出すことができているとも言えるでしょう。興味関心は、どこまでも広がっていきます。


とはいえ、これは必須ではありません。

別に勉強なんてする義務は全くもって存在しておらず、10時に終わったら家に帰ってごろごろする、という選択もできます。
10時までが、実習としての「最低限のノルマ」ですから。



18時~:明日に向けて動く

私の1日は、18時でほぼ終了と言えるでしょう。その後は、次の日も精力的に活動するために生活しています。

18時になったら、家に帰ってレンチンして弁当を食べる。
同時並行で風呂を沸かす。

19時、風呂が沸いたと同時に入り、洗い、髪を乾かす。

20時~21時30分、 勉強したり、Noteやブログを書く。

21時30分~22時、就寝。


これが、私の1日です。
気張っているわけではなく、これがデフォルト、最低限、になります。

ここから更に頑張ろうと思ったらどうするか。
例えば18時までの時間に5分10分だけ、とスマホを触っている時間を勉強に充てる、などをやった時、それが「頑張る」になります。


自分の中で最低限はどこにあるのか。それが重要だ。

さて、こんな風に1日の流れを綴っているかくいう私はどこを最低限にしているのか?と不思議に思う方もいるのではないでしょうか。

私の中での最低限は「9時から18時までの間は勉強する」こと。

そしてその「勉強」というのは具体的には、2月4日現在

Rx10問


QB n問」

となります。

※ nは実習期間にQB掲載問題が終わるペースで演習する、と仮定した時の数字

あ、あとAnkiを進める、ということもノルマの1つにしていますね。


これをやろうとすると、18時まで勉強しようと努力しないと、なかなか終わらない。Note を書く作業を入れたりすると、まず終わらない。

心の中では、なんとなくそれをやることが「最低限」になっていますね。



最低限を定義することで、感情の整理をすることが出来る

ここまで自分の1日をつらつらと語ってきましたが、「えぇ、そんな事してるの、すごいね」といった言葉を期待してのものではありません。


ただ、何かを定義すること無しに「最低限」とか、「コスパ良く実習こなす」みたいな語りをされているのに我慢ならない。
だから、私の思う「最低限」を示す。ただそれだけ。

※因みに同じように、「理解」という言葉の意味を定義した記事がこちら
試験に合格するために内容の理解は必要ない??- 言葉の定義を考え直す重要性


1つだけ言うとするならば、弁当作ると生活がすごく楽です。

実習から気力的に疲れて帰ってきた時、冷蔵庫に弁当が入っていて、5分チンするだけでご飯が食べられる。
コレは結構嬉しい。


臨床実習でどれだけ頑張るか、というのはコレまでの授業以上に自主性に委ねられています。

同じ班の中にもモチベーションが高い人、低い人、色々混ざっていると思います。
どうしても、モチベーションに差があると、「どうしてこの人はこんな行動をするんだろう‥」と考え、精神的に辛くなってしまうことも。


そんなときは、自分が思う「最低限」を考え直してみることを、おすすめします。

そうすることで、「あぁ、自分、思ってたより真面目なんだな」とか、「自分割とサボりたいんだな」ということに気が付き、気持ちが楽になりますよ。きっと。


では。


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