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飲食店を応援する、とはどういうことか

「武蔵野カンプス」というお店が職場の近くにある。

知るひとぞ知る、Production I.G本社ビル1階にあるイタリア料理店。「薪窯ピッツァの専門店」とぐるなびには書かれている。

2018年には「食べログ ピザ 百名店」にも選ばれている。

ピザの味はちょっと塩辛いけれど、濃い味好きなぼく好み。ニンニクとトマトソースを合わせた「マリナーラ」をよく頼む。
数年前の夏場に「マリナーラ600円キャンペーン」をやっていた。当時は900円でマルゲリータ・マリナーラが食べれたけれど、少し前に値上げしたらしい。今は1000円。

武蔵野カンプスのフォトジェニックな写真はこの方のnoteを見てもらうとして……。

ここからが本題だ。
半年ぶりかな。店を訪れた。

まず驚いたのは、「店が営業しているか」わからなかったこと。

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武蔵野カンプスにはテラスがあって、ランチ時にはちらほら人が見える。
12時過ぎには混み始めるから、テラスにどのくらい人がいるかを見てその日の混み具合を推し量る。

この日、テラスには人気がなくて、その向こうにも人気が感じられない。焦って入り口を見たら、看板はあった。よく見ると客もいた。

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アルコール消毒をして、中に入る。

「一名です」

と告げると「階段を昇った席へ」と促される。

階段を昇った席?
こんなに人がいないのに?

たどり着いて得心する。テーブルと席が一人分用意されていた。
つまり、ここは個人用の席だ。

店員にマリナーラを注文し、いつものようにサラダを取りに行く。
驚愕した。

サラダが小分けの容器に入っていた。

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(写真、右手奥)

武蔵野カンプスと言えば、ランチタイムのサラダ・ドリンク取り放題のサラダバーが目玉。
バリエーションに富んでいるわけではないけれど、わかめとトウモロコシがわんさか置いてあるのがひろし的にポイント高い。

アホみたいに粉チーズかけてオリーブオイルと塩で味付けしつつ、ピザが届くのを待つのがぼくのルーティーン。

しかし、悲しいかな。
諸事情によりサラダ・バーは中止(当然か)。
そしてサラダが小分け……

好きな野菜を好きなだけ食べられるシステムがぼくは大好きだ。
しかし、それが今食べられない理由もよくわかる。理解できる。

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ピザはうまかった。

……
………
………………

武蔵野カンプスというお店のテーマは「クリエイターや地域住民が集う広場のような場所を創造したい」である。

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食べログより

「そんな要素どこにあったの?」

カンプスを知らない方はそう思うかもしれない。
まぁ見てくれ。

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……お分かりいただけただろうか?

写真は上から「草薙素子」「バトー」(攻殻機動隊より)
「森美 咲」(東のエデンより)
「壱原侑子」(XXXHOLiCより)

趣味がバレる。

Production I.Gと言えば「攻殻機動隊」。硬派なアニメの代表格と言えよう(諸説あり)。
もう少しメジャーなラインだと「東のエデン」「ハイキュー」。
最近だと「銀河英雄伝説 Die Neue These」が好き。
映画だとPHYCHO-PASS 3とか蒼穹のファフナーとかやってるね。

その本社ビル1階に位置する武蔵野カンプスは文字通り、クリエイターが集う場所である。
社員、お店で見たことないけど。

そして、アニメ作りとは共同作業である。集まるのはProduction I.Gのスタッフだけでなく、他社のアニメーターなども集まるのだ。多分。

だから、ここに描かれている絵とサインは、ピッツァとアニメを愛する人たちによるもの、なのだと勝手に想像している。
お店への親しみを込めて、さながら応援のように、描かれたのだろう。

そう、武蔵野カンプスはそんなプロの憩い場に気軽にお邪魔できる場所なのだ。

この店の、文化と食が混ざり合っているところがとても好きだ。
写真撮り忘れたけれど絵画も飾ってある。店に入ったらわかるけれど、イラストの主張は控えめなくらいだ。

しかしこの日のカンプスの客入りは、僕の知っている普段の客入りの半分以下だった。

「こんなに客足が遠のいているなんて」
「無理をしてでももっと来ればよかった」
「でも従業員募集してたから大丈夫なのかな」

いろんな思いが頭の中を駆け巡る。

お店の経営状況なんてなに一つ知らないし、なんなら店頭を通ったのも久しぶりだ。

"状況が落ち着いたら" また行こうと思っていた。

「月曜日だから」
「今日はたまたま」
「僕の杞憂かもしれない」

そう思い切れないのは、小分けの容器に入ったサラダが10人分も用意されていなかったからだろうか。

「10人分のストックがあれば店は回る」
そんな風に受け取ってしまった。

ちょっと前まで、サラダバーの前に10人くらい集まっていなかったっけ?

記憶と、現実が、矛盾する。


……ここからはオマケというか、実はというか。

先週、日本のアイリッシュパブを応援するクラウドファンディングを立ち上げました

おかげさまで、開始1週間で目標額の60%を達成しました。

備考欄にいただいたお店への応援コメント、全部読んでいます。あたたかいコメントにちょっぴり泣きました。

応援していただいたみなさま、どうもありがとうございます。
プロジェクトに対して共感してくれた方もいてうれしいです。

アイリッシュパブってなに?って方、いますよね。
こちらをクリック!

アイルランドやパブを知らない人にも親しみを持ってもらえるような文章をみんなで考えました。読んでほしい。

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……さて、「応援」ってなんだろうね。

お店に行くこと?
お店のSNSに「いいね」を押すこと?
リツイート?
推しのお店について文章を書くこと?
お食事券を買うこと?
テイクアウトを利用すること?
友達を連れて行くこと?

どれが”正解”なのか、ぼくにはわからない。

たとえば、毎日電車に乗っていたり。
たとえば、高齢の家族や疾患のある同居人がいたり。
たとえば、他県へ出張する用事がたくさんあったり。

そうした時、お店に行くことは応援になるのか。迷惑にはならないのか。
「もし、自分がお店を訪れたあとに何かあったら?」
そう考えずにはいられない。

もちろん、どこのお店も感染症対策に尽力しているはず。
たとえ自分が原因だったとしても責められることなんてないだろう。

でも、ぼくが趣味としているダンスやサウナは濃厚接触ありきの趣味で、濃厚接触しかなくて。それらのイベントが泣く泣く中止される状況をみていると飲食店のことを他人事だと思えない。

お店には「地域住民が集う広場、パブリックスペース、文化の発信地」としての側面がある。

食も、会話も、文化だ。
ダンスも、サウナも、文化だ。
それらは別々の場所にあるけれど、文化というステージを共有していて、そして僕はそのすべてが大好きだ

先に述べたクラウドファンディング、目標額を100万円としています。

現在掲載している店舗は19店舗。
仮に100万円集まったとして、1店舗あたりどのくらいの金額を渡せるか。
計算してみてほしい。
このプロジェクト、仮に100万円集められたとしても、お店の助けになる金額にはならない。

理想的には200〜300万円くらい集めたい。それでようやく家賃の足しくらいにはなる。
それでも、足しにしかならない。

だから、このプロジェクトの真の目的はお金を集めることではない。

遠くからでもお店を応援できる手段をつくること。
お店を応援したい人がたくさんいることを示すこと。
応援したい人たちのメッセージを束ねて伝えること。

そして願わくば、このプロジェクトをきっかけにお店に興味をもった人が足を運んだり、新しいムーブメントができたり、”それぞれの人が継続的に関わる”、そんな関係が生まれるといいなって。
続くといいなって。
アイルランドと、アイルランドの音楽やダンス、ギネスビールなどの文化が好きな人たちが増えるといいなって。
そう思っている。

「お店に行きたい、応援したい」

そう思っていても、それぞれの事情で行けない人たちが、きっとたくさんいる。あるいは、お店に遊びに行っているけれど、大好きなお店だから、もっと応援したいという人もいるかもしれない。

僕自身そうだ。

お酒は量飲めないし、少食だし。
かといってパブでダンスイベントを開いたりするのも難しい。

それでも、パブで体験させてもらった楽しい思い出はたくさんある。

また、前みたいに遊びに行きたい。飲みたい。踊りたい。
だから残ってほしい。
応援したい。
応援させてほしい。

「自分よりパブに通っている人はごまんといる」
「パブのことも、お店の人たちのことも、ぜんぜん知らない」
「このクラウドファンディングを立ち上げるのが自分でいいのか?」

そんなことを何回も考えた。4月にアイリッシュパブを応援する記事を書いてからずっと考えてた。

このプロジェクトは何のツテもない状態から、立ち上げまで5ヶ月もかかってる。参加しているお店は19店舗だけれど、参加を辞退されたお店もたくさんある。
(個人経営か小規模な法人しか声をかけられなかったけれど、もちろんチェーン店も大切なお店です)

緊急事態宣言下の5月に企画・公開できれば、もっと共感を呼べただろうし、当時は営業時間を減らしていた店舗と連携して動きやすかったはず。

でも今は、貴重な営業時間を削って連絡してもらっている。相談に乗ってもらっている。情報拡散を手伝ってもらっている。
お店に迷惑をかけているじゃないかとすら思っている。

だからこのプロジェクトは全然完ぺきなんかじゃない。

熱意あるメンバーに支えられて、素敵なイラストに支えられて、なんとか体裁を保っているけれど、できないことばかり。無力感を感じることばかりだ。

「城が声をあげること」に誰もが納得できるストーリーも肩書きもない。ましてや人にお願いできる筋は一切ない

でも、「お店を応援したいと思っている人」と「お店」をつなげることができる。たった1000円から。

大好きなお店に、大好きな人々に、大好きな文化に、ラブレターを送りませんか?
こんなときだからこそ、こんなときだから伝えられる想いと言葉を伝えませんか?

集まる金額よりも、想いや声が大事だ

綺麗事かもしれないけれど、想いがあれば、情熱があれば、なんだってできる。

と、ここまで読んだけれど、それでも共感できない人もいるかもしれない。それでいいと思う。

僕とあなたは必ずしも同じ道を歩かない。歩く必要もない。

でも、いつかどこかのパブでビール片手に出会う日もあるでしょう。
そんなときに、互いの信条や思想はひとまず脇において。

「乾杯!」
「Cheers !」
「Slainte !!」

って笑い合えるといいな

そんな場所が残っているといいな

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#また乾杯しよう


Grazie per leggere. Ci vediamo. 読んでくれてありがとう。また会おう!