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どんでん返し

はじめに

(親譲りのあまのじゃくで)ついにVIVANTを見逃してしまった。そのうち見るつもりであるが、聞くところによると「どんでん返しのストーリーが面白い」らしい。

本稿はいくつかの「どんでん返し」について述べたものである。

江戸城無血開城

歴史上どんでん返しはたくさんあるのかもしれないが、ここでは勝・西郷会談で有名な江戸城の明け渡し(無血開城)を例に取り上げる。といっても新解釈をするわけではない。江藤淳の『海舟余波』にある通り、会談の主導権は勝海舟の側にあり、西郷隆盛は提示された条件を吞まされる形になった。
「政治家」の交渉は「名実」のうち「実」をどうやってとるか(どう相手に「名」をとらせるか)であると思う。「名」をとらせるには交渉の材料(すなわち実力)によって相手を「有名無実」の状態にし、それを相手に理解させる。実情を知らない人にはどんでん返しにみえる。

エスタブリッシュメントの教科書

かつて「スティムソン・ドクトリン」と「援蒋ルート」によって日本は破滅し、中国大陸では今なお漢民族による他民族(満州、モンゴル、チベット、ウイグルその他)に対する民族浄化が行われている。上に述べた二つの「」かっこ内は今風(ロシアウクライナ戦争)に言い換えると、(コソボは空爆して独立させたけど)「力による現状変更に反対」と「NATOによる武器供与」が近い。ロシアウクライナ戦争について付言すると、今後ロシアとウクライナの国境はスロビキンラインでなければ”スーパー”スロビキンラインであろうし、他面ロシアは欧州に対してエネルギーの安定供給の見返りに、制裁の緩和を要求するだろう。
北朝鮮一国さえどうにもできないでロシアを屈服させたら間違いなく今世紀最大のどんでん返しだが、残念ながら交渉材料がない。

全個体電池と半導体

経済産業省のホームページにある「半導体・デジタル産業戦略」というスライドは、長すぎるのはさておき、いろいろと書かれている。言うまでもなく半導体を作るには電気(エネルギー)、資源(材料)、技術がそろっている必要があるが、流し読む限りスライドの力点は技術、資源、エネルギーの順に置かれていたように思われる。エネルギーと資源は(原子力発電がカーボンニュートラルとかの名目でじわじわ復活の兆しがあるものの)日本が買う側に回っていてどうしようもなく、技術をも買う側に回ると大変だという趣旨であろう。
お金は地面から湧くわけでもなく、天から降ってくるわけでもない。どこから生み出されるかというと、賢明な官僚諸君もご存知の通り、国民の「つくる力」からである。すなわちつくる力は買う力であり、税金を納める力(そして補助金を出す力)である。観光立国といってもそこに人的資源を集中させては何もつくることにはならない。外国人対応こそAI搭載ディスプレイなどで間に合わせ、ほかにつくる力を向け、エネルギーと資源を買い続ける。
平和な縄文時代(徳川時代?)に戻らない限り、エネルギーと資源は買い続けるしかない。これを忘れたら、技術の一点豪華主義になり、どんでん返しをみることになる。

文責筆者

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