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もうひとりの自分 第4話

私は10歳を迎え、大金の入ったバッグを持ち
場所を転々としていた。
場所といえば、人がまず来ない廃れた公園の遊具か
森にある洞窟に限る。

(想像)
家を追われて2年が経過するが、私は洞窟に毛布と枕と段ボールで生活をする。

洞窟で生活していると湿気のせいか
たった2日で段ボールが濡れて使い物にならない。
また段ボールを拾うか。いくら10歳でも過酷だった。

写真はイメージ。母に追い出されて以来久々に戻ってみれば、そこはすでに別の家が建っており若い夫婦とまだ2、3歳くらいの小さな子供が暮らしていた。

自分には大金を持っている。初めて1万円札一枚を抜き
百貨店で洋服を購入した。だがおかしなことがあった。人が多いなかで薄汚れた少年の私を周囲は好奇な眼差しで見つめるはずだ。しかしそれが一切なかった。
顔には出さないが後になって

「ねえ見た?どこの子供?」
「貧乏人が来るところじゃねえ」

などとコソコソ話すか、
あるいは本当に私の存在に気づかなかったか。
あのときの状況だと後者が正しい。
そんなことよりやはりお金があると何でも買えるし
何だかテンションが上がる。
だがその代償に私は肉親というものを失った。
生まれてから父の顔は知らないのはまだしも
母から大金を投げつけられ罵詈雑言を浴びせられた挙句に突き放される。
断絶とはそんなものなのかと毎日洞窟にいると
そう考えてしまう。

私はある夜ぐっすり寝ていると例の夢を見た。
夢の中の私は中学1年になっていた。
小学校のときの出来事を思い出すことないまま
いつの間にか中学生。
中学生ともなれば思春期に入る。
親の言うこと聞かず思い通りにならなければ、
物に当たり怒り自分で作った殻に閉じ籠る。
という世代だ。
しかし私に思春期はない。むしろ出来なくさせている。自分が住んでいた広い部屋はいつの間にか妹のものと
なっており私は今物置小屋と呼んでいる狭い部屋に
暮らしている。「おはよう」「ただいま」と言っても
家族は無視。お風呂も親からは最後に入るようにと
固く言われ、まるで自分をどこかのしがない中年親父のような扱いを受けている。

通っている中学校でも居場所はなかった。中学校は
マンモス学校だった小学校とは打って変わって人数が
少なく私の学年では4クラスしかなかった。
当然私は4組の後ろの窓側の席。私の前の席には
身長がいくつあるかわからないほど異常に大きい女子が座っていた。おかげで授業中その女子の巨体のせいで
黒板が見えない。頑張って体を伸ばさないと見えない。
私は影が薄いせいか誰にも気づかれない学生生活を送っていた。

そんなある休み時間。廊下を歩いているとトイレから
物凄い音が聞こえてきた。すると中から数人の男子生徒が出てきた。しかしその男子生徒は髪を染めピアスを
しておりなぜか体中血だらけだった。ある生徒は斧の
ようなものを持っていた。斧の刃にはべっとりと血が
ついていた。
見たくはないが私はトイレに行ってみた。すると大便のある個室から血が流れていた。やっぱりあの不良たち
誰かを殺したんだ。恐る恐るドアを開けた瞬間!

目を覚ました。

おいおい肝心なときに目を覚ますな!
そう思った私の体は汗でびっしょりだった。

だがあのまま見てしまったら…
と思うとゾッとしてしまう今回の夢だった。

第4話おわり。

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