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バイデンとトランプの討論会〜なんで重要なの?〜

トランプとバイデンの討論会が来週の6月27日(現地時間)に開催される。ここでは、大統領候補討論会の詳細と重要性を歴史と共に解説していく。


なんで討論会は重要なの?

大統領選の間、共和党と民主党の大統領指名候補が同じ場所で同じ質問に生で答える時は討論会でしかない。

投票者にとっては、政策や理念に関する説明を候補者から直接聞けるだけでなく、身振りを観察しながら候補者の人間性を判断できる機会ともなる。下述のとおり、過去の討論会の有名な瞬間は、候補者のさりげない仕草だったことが多い。

討論会は何人くらいが観るの?

討論会は通常2~3回行われ、最初が最も視聴率が高い。視聴率ランキングとしては、1回目の討論会が概ねその年最も見られた番組の2位になる。(アメリカで毎年最も見られるテレビ番組は、いつもアメフトの決勝戦であるスーパーボール)

視聴者数でみると、2020年のバイデンとトランプの1回目の討論会は7310万人2016年のトランプとクリントンの1回目の討論会は過去最多の8400万人が視聴していた。これはテレビ視聴者だけを数えているので、ストリーミング等を含めるとさらに増える。

なお、トランプはテレビ受けが良いのか、彼が出る討論会は視聴者が多い。史上、最も視聴者が多かった5つの討論会のうち、3つがトランプが出ている討論会である

討論会は大統領選の行方にどれほどの影響があるの?

ある調査によると、約60%の投票者にとって、討論会はどの大統領候補に投票するかを決めるに当たってある程度参考になっている

もっとも、(1976年や1984年のように)大統領選において討論会が決定的な役割を果たすことは珍しい。特に今回の大統領選は前回の再対決であることから、両候補者とも投票者に十分知られており、討論会で「意外な発見」が出てくる可能性は低いだろう。

討論会はどのような形式なの?

6月20日(現地時間)の討論会は90分間が予定されており、以下のルールに基づいて行われる。

  • 司会者はアメリカのニュース専門ケーブルチャンネルCNNのキャスター2名

  • トランプ、バイデンそれぞれが演壇の後ろに立つ(どちらの演壇になるかはCNNによるコイン投げで決まる)

  • 司会者からの質問に対して各候補者が2分以内に回答する

  • 反論と更なるやりとりが1分位内で行われる(司会者の裁量で延長可)

  • 発言の番ではない候補者のマイクはミュートされる

  • メモを取ることは認められるが、メモを持ち込むことは認められない

  • 質問は事前に共有されない

  • 観客はいない

過去の討論会では、候補者が司会者を囲む形で同じテーブルに座る対談スタイルや、まだ投票先を決めてない観客が候補者に直接質問をするタウンホールスタイルも活用されたが、今回は最も伝統的な設定が採用された。

なお、今回特徴的なのは、発言の番ではない候補者のマイクがミュートされることだろう。これは2020年の1回目の討論会で、バイデンが発言するたびにトランプが遮ったことで無法地帯に陥ってしまったことへの反省を踏まえた対策である。

今回の討論会は最近の討論会とどう異なるの?

1988年以降、大統領指名候補同士の討論会はすべて、独立機関である大統領選討論会委員会(Commission on Presidential Debates、"CPD")が企画・実施してきたが、今年の5月、バイデン大統領の陣営はCPDが9月に予定していた討論会には参加しないと表明した。

結果、討論会はバイデン陣営、トランプ陣営、そしてテレビ局による交渉により企画され、6月20日にCNN主催、9月10に民放であるABCテレビ局主催の2つの討論会が行われることになった。

これにより、最近のCPD主催の討論会とは大きな違いが2点見られる。

討論会にトランプとバイデン以外の候補者は参加できないの?

理論上は他の政党や無所属の候補者も参加できるが、その可能性は低い。

アメリカの連邦選挙委員会は、討論会の主催者に対して参加基準を明示的に示すことを求めている。CNNは今回の討論会において、少なくとも4つ世論調査で支持率が全国的に15%を超えていることを参加要件として挙げており、ロバート・F・ケネディ2世を含め、この要件を満たせている候補者はトランプとバイデン以外にいない

過去の討論会の有名な瞬間は?

大統領候補の討論会は1960年にジョン・F・ケネディとリチャード・ニクソン副大統領の間で初めて実施され、1976年に復帰して以降毎回行われてきている。その歴史の中で必ずと言っていいほど挙げられる「有名な瞬間」が次である

副大統領候補の討論会はあるの?

副大統領指名候補の討論会も行われるが、複数回行われる大統領指名候補の討論会と異なり、副大統領候補の討論会は1度しか開催されず、視聴率も大統領候補討論会より低い(唯一の例外は、ほぼ無名だったアラスカ州知事のサラ・パイリンが共和党の副大統領候補に指名され注目を浴びていた2008年の討論会)

今年の副大統領候補の討論会はまだ決まっていない。CPDは討論会を9月25日に予定しているが、CPD主催の大統領候補討論会が実現しない中、副大統領候補の討論会だけCPD主催になるとは想像しがたい。

よって、トランプ陣営・バイデン陣営・テレビ局による交渉の結果を待つしかない。

[注:この記事は2024年6月に自分のアメリカの政治に関するサイトに載せた投稿に微修正加えた上で再掲したものです]

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