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トランプは副大統領候補として誰を選ぶか

2024年大統領選の予備選(指名争い)に決着がつき、注目は副大統領候補の指名に移った。民主党の副大統領指名候補はカマラ・ハリス(Kamala Harris)現副大統領になることが確実なので、ここでは主に誰が共和党の副大統領指名候補になるかを解説していく。


副大統領候補はどのように指名されるの?

予備選を勝ち抜いた大統領指名候補(共和党の場合はドナルド・トランプ前大統領、民主党の場合はジョウ・バイデン現大統領)が自ら希望する副大統領候補を指定し、当該候補が党大会での承認を経た後、本選挙における党の正式な副大統領指名候補となる。

20世紀前半までは、党員が党大会で大統領指名候補の意向にかかわらず副大統領候補を指名していたが、1960年以降は、大統領候補の意向を尊重する方法が定着している。

副大統領候補はいつ指名されるの?

副大統領候補は党大会で正式に指名される必要があるため、通常、党大会開催日の数日前(早くても1〜2週間前)に、大統領指名候補が副大統領候補を発表する。

今年の共和党大会は7月15日に開催されるため、トランプは7月の上旬にも副大統領候補を指定すると思われる。

民主党大会は8月19日に開催されるが、バイデンがハリス以外の候補を指定することは想定されないため、正式な発表はないかもしれない。

副大統領候補はどのような基準で選ばれるの?

大統領指名候補の裁量ではあるが、通常は以下のような要素が考慮される。

  • 党内緩和のため、大統領指名候補が予備選で争った相手を選ぶ(2004年の民主党)

  • 苦戦している大統領指名候補が、話題性のある候補を選ぶ(2008年の共和党)

  • 経験が浅い大統領指名候補が、経験豊富の候補を選ぶ(2008年の民主党、2000年の共和党)

  • 支持を広げたい大統領指名候補が、自分とは支持層が異なる候補を選ぶ(2016年の民主党)

もっとも、トランプの場合、性格的に、副大統領候補には何より忠実性を求めそうである。

なお、憲法上、実質的には、大統領指名候補と副大統領指名候補は異なる州に居住している必要があるため、副大統領候補と大統領候補が同じ州に居住している場合、どちらかが11月の本選挙前に違う州に引っ越す必要がある。

副大統領候補は大統領選にどのような影響を及ぼすの?

大きく注目される割には、副大統領候補が大統領選に影響を及ぼした例は乏しい。

1988年に共和党の副大統領指名候補になったダン・クエール(Dan Quayle)は多くの失言により物議を醸したが、ジョージ・H・W・ブッシュ(George H.W. Bush)の勝利を妨げるものではなかった。

2008年に共和党の副大統領指名候補になったサラ・ペイリン(Sarah Palin)は大統領選が進むに連れて経験不足が露呈したが、ジョン・マケイン(John McCain)は共和党に対する根強い不人気の煽りを受けて敗北した。

今回の選挙では、投票日におけるトランプの年齢が78歳、バイデンの年齢が81歳と候補2人が歴史的な高齢となるので、従来より副大統領候補が重視される可能性がある。

共和党側では誰が有力候補として名前が挙がっているの?

次の人物が有力候補として報道されている。

  • エリス・ステファニック(Elise Stefanik)現ニューヨーク州選出連邦下院議員〜5期の経験、39歳の若さ、そして女性であることに話題性がある。初当選当時は中道派であったが近年はトランプ支持を明確に打ち出しており、連邦下院における共和党執行部の一員として早期にトランプを推薦したことが、忠実性を何より重視するトランプの評価を高めたと思われる

  • ティム・スコット(Tim Scott)現サウスカロライナ州選出連邦上院議員〜今年の予備選でトランプの対抗馬として出馬したものの、早々と撤退しトランプを推薦したことで株を上げた。共和党では珍しい黒人であることがプラスに働きそうだが、独身であることが予備選中も保守層の間で話題となっていた

  • クリスティ・ノーム(Kristi Noem)現サウスダコタ州知事〜コロナ中にマスク反対の政策を打ち出すなどトランプ的な思想で有力視されていたが、この数週間、歯科医のテレビCMに出演したり、犬を殺生した経験を自伝で語るといった奇妙な行動に出て、株が急落している

  • マルコ・ルビオ(Marco Rubio)現フロリダ州選出連邦上院議員〜数少ないヒスパニック系の共和党上院議員として魅力があるが、2016年の大統領選でトランプ相手に火花を散らしていたのは記憶に新しい。忠実性を重視するトランプがルビオを真剣に検討しているとの報道は、極めて意外。なお、現在トランプもフロリダ州居住なので、ルビオを指定する場合、(現職議員であるルビオではなく)トランプ本人が他の州(多分ニューヨーク州)に引っ越す必要が出てくる

  • J.D.・ヴァンス(J.D. Vance)現オハイオ州選出連邦上院議員〜2022年に初当選したばかりであるにもかかわらず、「労働者寄りの熱狂なトランプ支持者」として注目されている。その姿勢自体が相当な豹変ぶりで、上院選に出馬する前の彼はアンチ・トランプであることを明言していた。白人の男性で経験も浅い彼がなぜ有力候補として報道されているのか、いまいち理解しがたい

“有力”ではなくとも、よく名前が挙がってる候補は?

次の候補もよく名前が挙がる。

  • ベン・カーソン(Ben Carson)元アメリカ合衆国住宅都市開発長官〜トランプ政権の閣僚の1人で、トランプに対して忠実的。黒人であることがプラスに働きそうだが、政治経験が浅いことと支持層がない(2016年の大統領選に出馬していたが、ほとんど支持を集められなかった)ことがマイナス

  • ヴィヴェック・ラマスワミ(Vivek Ramswamy)〜今年の予備選でトランプ相手に戦った元大統領候補で、思想や言動がトランプに近いため、ミニ・トランプとも言われている。予備選が進むに連れて人気が衰えていったことが大きなマイナス

  • バイロン・ドナルズ(Byron Donalds)現フロリダ州選出連邦下院議員〜まだ2期目だが、2021年1月の下院議長選びの際、共和党の造反組の一部が彼を担いだことで注目されるようになった。共和党では珍しい黒人であることに話題性があるが、経験が浅い連邦下院議員は一般論として盛り上がりにかける

  • グレッグ・アボット(Greg Abbott)現テキサス州知事〜人口2位の州で知事を3期務めており、強硬的な移民政策で知名度を上げているが、いまいちカリスマ性に欠ける。また、車椅子生活であることが、一般的な有権者にどう見られるか

  • サラ・ハッカビー・サンダース(Sarah Huckabee Sanders)現アーカンソー州知事〜トランプ政権でホワイトハウス報道官を務めており、トランプに対して忠実的。2022年に初当選したばかりだが、父親が同州の知事として大統領選に2度出馬したこともあり知名度は高い。ただ、女性であること以外の魅力が乏しい

指名される可能性は低いけど、候補に挙がってるのは?

次の候補も名前が挙がっているが、実際に選ばれる可能性は低い。

  • ケイティ・ブリット(Katie Britt)現アラバマ州選出上院議員〜2022年に初当選したばかりで大きな実績もないことから、知名度は低い。候補として名前が挙がるのは、42歳とまだ若く、女性であるためか

  • ロン・デサンティス(Ron Desantis)現フロリダ州知事〜今年の大統領選で当初最も期待されていたトランプの対抗馬だったため、忠実性を重視するトランプに選ばれるとは考えにくい

  • ニッキー・ヘイリー(Nikki Haley)元国連大使〜今年の大統領選で最後までトランプ相手にやりあったため、忠実性を重視するトランプに選ばれるとは考えにくい

  • キャリー・レイク(Kari Lake)アリゾナ州知事選元候補・連邦上院選現候補〜過激なトランプ支持者として全国的に知名度を上げているが、彼女の政治家としての唯一の実績は、勝てる知事選で負けたことである

  • マージョリー・テイラー・グリーン(Marjorie Taylor Green)現ジョージア州選出連邦下院議員〜熱狂的なトランプ支持者として、3期目の下院議員としては異例の知名度を誇っているが、流石のトランプにとっても彼女は過激すぎるだろう

  • トゥルシー・ギャバード(Tulsi Gabbard)元ハワイ州選出民主党下院議員〜2020年の大統領選において民主党の予備選に参入していただけでなく、撤退後はバイデン大統領を支持していた。その後右傾化したことで注目を浴びているが、経歴からして彼女が選ばれるとは考えにくい

トランプ政権1期目の副大統領はなぜ候補になってないの?

1人確実に指名され得ないのが、マイク・ペンス(Mike Pence)前副大統領である。

2020年の大統領選において、ペンスが上院議長として選挙人による投票の結果を承認したことを、トランプは許しがたい裏切りと看做し、痛烈に批判している。

民主党側では、現職であるハリス以外が副大統領候補になることはあり得るの?

ハリス副大統領は特に人気が高いわけではないが、スキャンダルまみれでもないので、常識的に考えて、民主党の副大統領指名候補にならないとは考えられない。

直近で現職副大統領が2期目の大統領選で副大統領候補になれなかったのは、1976年に中道的なジェラルド・フォード(Gerald Ford)大統領がリベラル派のネルソン・ロックフェラー(Nelson Rockefeller)をより保守的なボブ・ドール(Bob Dole)に差し替えた時。フォードは後日、この行為を、自分が犯した数少ない卑怯な行為として後悔していた。

[注:この記事は2024年4月に自分のアメリカの政治に関するサイトに載せた投稿に微修正加えた上で再掲したものです]

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