マガジンのカバー画像

水源(小説)(8話完結)

8
エモーショナル・ポストロックバンド,シノエフヒの曲である「水源」という曲の物語を小説という形にしています.どうにか完結させたいので,応援,ご支援よろしくお願いいたします. ヘッダ…
運営しているクリエイター

#考え

水源①

水源①

「君の言葉は,祈りみたいで美しいな.」

四角く白い病室で,僕は風に揺れるカーテンを見ていた.空は澄んでいたが肌寒く,歩く人々は,皆縮こまって足早に歩いている.僕はというと,ここで,千羽鶴を送ってきた頭の悪い連中に悪態を付きながら,自分が買ってきた花に水を上げている.ここは僕の部屋ではない.この部屋には僕以外に君という生命が存在していて,互いに全く別々の鼓動を鳴らしている.君はいつもにこにこ笑って

もっとみる

水源⑦

第6話はこちら

(海水を飲み込み続ければ,いずれ僕はクジラになって,この地球上で一番大きな哺乳類になるだろう.僕らは人に対して本当に意地悪だから,誰彼かまわず傷つけあう.だから,もういっそ人ではない生き物になりたかった.そう願ったら僕はいつのまにかクジラになっていたというわけだ.何故か僕ら人類は同種の人間に対しては,これ程かと思うほど冷たい.海はこの地球上のすべての感情の原点だから,僕がそれを全

もっとみる