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人的資本マネジメントの目的は、事業ポートフォリオの再構築にある

日本企業の最大の問題点は、「事業ポートフォリオの組み替えが進まないことである」と指摘されているのが、一橋大学大学院経営管理研究科 教授の円谷 昭一氏だ。
「成長分野に人材を異動させ、変革を進めていかなければいけない」と主張する。金融庁が策定するコーポレートガバナンス・コードに織り込まれている「人的資本」の意味合いも同じ方向性といえる。「人的資本は人事の問題でも開示の問題でもない。あくまでも経営の問題である」と強調する円谷昭一教授にその本質を聞いた。


インタビューの前編では、コーポレートガバナンス・コードにおける人的資本マネジメントの目的や開示の意義などを語っていただきました。

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■前編の目次

  • コーポレートガバナンス・コードが打ち出す「人的資本」とは

  • 人的資本経営において実践すべきことは4つに集約される

  • ポートフォリオを動かせない最大の壁は「心理の粘着性」

  • 開示を通じて経営者の意思を見せつける必要がある

  • 日本の人口が半減する見込みの中でいかに生き残るかを考えているのか

  • 人事は「積分の発想」、学生は「微分の発想」

  • 課題を隠さず、敢えて開示し解決を図っていく

  • 自社にとって何が重要な指標なのかを考えるべき


インタビューの後編では、日本企業における情報開示の現状や統合報告書の位置付けなどについて語っていただきました。

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■後編の目次

  • ポートフォリオ戦略と人材戦略は合致せざるを得ない

  • 情報開示は勇気と決断。法律で求められているからではない

  • 統合報告書で何を伝えるのか。その想いが精度に関わる

  • 社会全体でリスキリングの枠組みを構築する必要がある


円谷 昭一 氏
一橋大学大学院 経営管理研究科 教授

2001年3月一橋大学商学部卒業。2006年3月一橋大学大学院商学研究科博士後期課程を修了。商学(博士)を取得。埼玉大学経済学部専任講師・准教授を経て、2011年4月より一橋大学商学部教授に就任。2021年より同学経営管理研究科 教授となる。2007年より日本IR協議会客員研究員。2020年より金融庁「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」委員。研究領域は、企業のInvestor Relations(IR)を中心としたディスクロージャーにある。とりわけこれまでは業績予想情報、セグメント情報などに焦点を当てた研究を行ってきた。
現在は政策保有株式情報などを用いて、ディスクロージャーとコーポレート・ガバナンスの関係について研究を進めている。著書に「政策保有株式の実証分析: 失われる株式持合いの経済的効果」(日本経済新聞出版)、「コーポレート・ガバナンス「本当にそうなのか?」2 ―大量データからみる真実―」(同文舘出版)などがある。