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映画『ミッドナイトスワン』がとても見やすくて良かった

『ミッドナイトスワン』が目に留まった理由

こないだ映画『エゴイスト』を見たのと、海外ドラマ『マニフェスト』が最終回を迎えたのとで、映像欲が出てきている今日この頃。Netflixのおすすめ欄を見ていたら、『ミッドナイトスワン』が配信中。Twitterとかの評判も良かった記憶があるし、見てみようと。約2時間、寝る前に見られるなと再生ボタンをクリック。

最初に浮かんだ感情は「見やすい、入り込みやすい」だった

トランスジェンダーの主人公、演じる草彅剛さん。ともかく違和感がなかった。自分が当事者ではない(トランスジェンダーではない、ゲイだけど)のが良かったのかもしれないが、つっけんどんな冒頭の喋り方も、サングラスにトレンチ、ヒールで自分を隠しながらも、存在をしっかりと出して歩く姿も、なんだか自然に見ることができた。新宿では、特に珍しい存在でもない。メイクも含めて、「綺麗」に思えた。
ストーリーが進むと、同居する少女への喋り方が、どんどん柔らかくなる。スナックから「帰ろ」と声をかけたシーンに少女への感情が大きく変わったあたりも、本当に心に響くものがあった。

映像も綺麗で、朝の新宿やネオンに照らされたアパートなんかも、ごくごく自然に感じられた。Netflix独自作品ではないようだけど、Netflixで配信されているドラマ『First Love』のような、透き通った印象を映画中にずっと受けた。他の登場人物もすごくよくて、ショークラブのママの田口トモロヲさんも違和感もないし、水川あさみさんの田舎のヤンキー感もたまらなかった。

トランスジェンダーを理解するという重要さ

自分はゲイだが、トランスジェンダーはさっぱりわからない。異性愛者からすればLGBTでひとくくり。しかし、トランスジェンダーの辛さやその思いの深さは想像以上だなと感じた。
ゲイは隠すことさえできれば普通の仕事にもつけるし、普段ノンケ生活です!という人もいるぐらいなので、ゲイはただの体の一部、と割り切ることもできる。もちろん、深く悩んでいる方もいるので、これはあくまで私とその周りに見えることという前提。

しかし、トランスジェンダーは「体と心が一致しない」という辛さを幼少期から感じなくてはいけないし、手術のために働かなくてはならない。せめて女性のような風貌で働けたらと思うが、それも仕事探しの足かせになる。面接のシーンで、男性役職者がLGBTを理解しろって教わって…なんてコメントがかわいく見えるほどで、実態には髪を短く借り上げ作業服を着て仕事をせざるを得ないのだ。自分らしく働ける場所はショークラブぐらい、さらにお金が必要なら体を売る。なんでこんなつらい目にというセリフがあるが、本当にその通りで悲しくなった。

「バケモノ!」と罵倒する権利はあるのか、あるわけがない

特に心が痛んだシーンは、親戚からの「バケモノ!」というあの一言だ。設定も良くて、広島あたりは封建的で保守的でLGBTなどバケモノ扱いする風土なのはよくわかる。あの広島弁に、過去に私も嫌なことを言われたのを思い出し、身震いするほどだった。それは酒の席で私も酔いながら反論したそうなので、まあそれはそれ。話を戻すが、なぜあんなことが言えるのか。娘を守る気持ちもわからないでもないが、それでも言っていい権利などあるはずがない。また、親戚の彼氏?らしき男と取っ組み合いになり、胸が露わになっても誰も気遣わない。そんな辱めにあっても、気丈に踵を返す。なぜ、あの場の誰もが彼女を守らないのか。守れないのか。

知らないことはたくさんある、知りたい

主人公が手術後に、その影響で失明するなどは、現実はほとんどないとわかり安心した。しっかりと適切な対応を取れば健康に生きられるようだ。ただ、それでも大変な手術とアフターケアが必要である。そこまで負担をかけても、多額な費用をかけても体にメスを入れなければ願いは叶わない。そんなこと、この年齢になるまで、知らなかった。

LGBT法が進んでいる。

「そもそも差別など日本にない」
「LGBTに理解があるから大丈夫」
「気持ち悪いと思う権利がある」

この映画をまずは見てほしい。
差別は本当にないのか。理解、とは何なのか。気持ち悪いと思うだけで済むのか。罪のない、悩む人に対して「バケモノ」と呼ばないと約束できるか。

LGBTのうちの1人として、同じくくりにいても、知らないことがこんなにある。誇張演出があるかもしれないが、知って損はないのではないだろうか。理解できなくても、それでも気持ち悪いと思っても「知る」ことを止めなければ、また1人安心して暮らせる人が生まれるかもしれない。私は知りたい。

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