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世界知図 3: 『夫婦格差社会』 〜向上か、保障か〜

人生を消費しよう。こんにちは。もん です。

今回は、橘木俊詔先生・迫田さやか先生の『夫婦格差社会』を読んで思ったことを書いていきたいと思います。
さまざまな統計データを用いながら、現代日本社会における結婚の、学歴、職業、都鄙による格差を暴いた本です。

格差解消には、平準化ではなく底上げしかないのでは?というお話をさせてください。

夫婦の類型:パワーカップル?ウィークカップル?

本書では、稼ぐ男性×稼ぐ女性のパワーカップルと、稼げない男性×稼げない女性のウィークカップルとの間における格差が論じられています。

え?普通は平準化されるんじゃないの?

僕もそう思いました。なんとなく、夫婦の類型としては、
①稼げる夫×働かない妻(専業主婦)
②稼げない夫×働く妻
というのがあって、世帯ごとの所得で見てみれば、これは平準化されるのではないか、と思っていました。

経済学では、このように、夫の所得が増えるほど、妻の有業率が低くなるという命題のことを、「ダグラス・有沢の第二法則」と呼ぶそうです。

ダグラス・有沢の第二法則、破れたり!

かつては、「ダグラス・有沢の第二法則」が有効だったため、夫の収入が上がるほど妻の有業率は下がっており、グラフは右肩下がりでした。

しかし、「平成19年就業基本調査」を参考に、夫の所得階級別の妻の有業率を見ると、グラフは山なりになるのです。「ダグラス・有沢の第二法則」は、昔ほど有効ではないということがわかります。(橘木・迫田 2013, p.18)

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上の図でいう右端の中でも、高収入男性×高収入女性夫婦のことをパワーカップル、左端の中でも低収入男性×低収入(無業)女性のことをウィークカップルと呼びます。

パワーカップルは全体の11.1%、ウィークカップルは17.9%ほどいるそうです。(橘木・迫田 2013, p.30)

平準化が望めるのか?

はっきり言って、この格差を平準化するのはとても難しいように思います。

国立社会保障・人工問題研究所の『第14回出生動向基本調査』によれば、結婚相手との出会いのうち、約30%が職場、もう約30%が家族・友人の紹介、約10%が学校となっています。

つまり、パワーカップルの結婚は、高収入な職場で働く者同士、良家の者同士、高学歴の者同士で行われると考えられます。
(しかも、これらの要素は密接に関わり合っています。両家→高学歴→高収入というように。)

そもそも、身の上の異なる結婚相手とは出会う チャンス すら少ないのでしょう。

とあらば、
超稼げる夫×超稼げない(稼「が」ない、ではないですよ)妻
超稼げない夫×超稼げる妻
という夫婦は、比較的生れにくいと考えられます。

「緩やかな身分」相応の結婚が、大多数を占めることになるでしょう。

底上げ:保障の考え方

教育方面にも、なかなか解消し難い格差として、「学力格差」というものがあります。

その問題へのアプローチとしては、清水宏吉先生の『学力格差を克服する』という本が印象的でした。


重要なのは、できるだけ多くの子供たちの「通過率(引用者注:ある基準点を超える子供たちの比率のこと)」を高めることである。
(清水 2020, p.44)
要するに、私に取っての「格差の克服」とは、「平均値の差を縮めること」ではなく、「下位層の学力を下支えすること」である。
(清水 2020, p.46)

つまり、清水先生は、格差自体を否定するのではなく、下位層が「ある基準」を超えていないことを問題にしているのです。

これを夫婦格差で考えるとどうなるか?

普通に暮らせるウィークカップル

ウィークカップルが、「ごく普通」の生活を送れるような社会こそが望ましいといえます。

経済的には下位に置かれていても、「それなりの生活」という「ある基準」を上回っていれば、問題も少なくなるのではないかと思います。

流石に、全ての職業の報酬を医者レベルにあげるのは理にかなってないし、かといって医師という職業の地位を引き下げることも、良策とはいえないでしょう。

だとすると、従来通り富裕層は豪遊できる社会はそのままにしておく一方で、
非正規労働者であっても、休日があり、老後の資金を貯める余裕があったり、娯楽に使える金があったりと、きつ〜い毎日を送らずに済むような社会になればいいなと、切に願います。


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