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1年半振りに誘われた登山が南米大陸最高峰アコンカグア6,960mだった話

[前回のノートhttps://note.com/joajoa/n/na1d955a7e7f6 で予告したアコンカグアエピソードです]

高校で山岳部に入部したのをきっかけに山ガールに目覚めたボロロン。しかし、紆余曲折あって学費の安さだけで選んだ進学先、ネブラスカの大学は、大草原が地平線を描く平たい山無し州。登山とは一切縁のない暮らしをしていた時、突然届いたのは1通のメール。

開いてみると

...

「アコンカグア登らない?」


って、なんか高尾山誘われたみたいな軽さで突然高所登山のお誘いが...。

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差出人は、100マイル(160キロ)のトレランレースをバンバン完走している友人、ブラザー氏(仮名)

1年ぶりの連絡でした。

曰く、「ガイドやポーターは雇わずなるべく自分の力で登りたい」「けれど一人では登りたくないし、社会人では休暇を取るのが厳しい」というわけで、暇そうな大学生ボロロンに一部旅費は出世払いで登山をオファーしてくれました (本当申し訳無いブラザーはやく社会に出て返します...)

ブラザー氏の誘いが本気なのか、初めは正直半信半疑だったけれど、「うん、登りたい」って返事して、本当にアコンカグアに行ってしまった。そんな話。

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準備編

当時私は大学陸上部に入っていたのですが、登山はおろか、重い荷物を背負うのも1年半ぶり。

今だから言える恥ずかしい話、夏山ばっかりでアイゼンもほとんどまともに使った経験がありませんでした...。

アコンカグア登山のお誘いを頂いたのが9月終わりか10月頃。そして11月になってようやく焦り出した私は...

1)家の裏に除雪されてできた雪山でアイゼン歩行練習

2)みんなに白い目で見られながら、大学のジムのルームランナーで重いザックを背負って歩行トレーニング

3)車で8時間運転してコロラドへ行き、4000m峰を登って高所を体験

そしてあっという間にアコンカグアがあるアルゼンチンへ向けて出発の12月を迎えました。

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アルゼンチンのクリスマスは避けるべし

さて、私たちがアルゼンチンに着いたのはちょうどクリスマスの時期でした。これからアコンカグアに行く予定の人に言えるのは、アルゼンチンのクリスマスは避けるべき、という事。

アルゼンチンはクリスチャンの国。クリスマスはガチで店がどこもやってない。ホテルの前でキャンプ用ストーブを取り出して、山で食べようと持参した辛ラーメンをすすったのは良い思い出...。

登山許可証の申請もクリスマスの日はできないし。

登山口へ向かうバス停までタクシーを拾うにも、ガチでタクシーが走ってない。見つからない。一ミリもスペイン語がわからない中、朝からヒッチハイクしたのも良い思い出...。


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快適登山は結局、お金

ストイックな山男、ブラザー氏が選んだのはガイドもポーターも雇わない登山スタイル。登山口からベースキャンプまではムーラというロバみたいな動物に荷物を運んで貰ったものの、その他は全部自分たちでなんとかするスタイル

例えば、テントと寝床。これはお金を出せば、ツアー会社が先に建てておいたテントを利用する事ができます。

ベースキャンプの一個手前、コンフルエンシア(約3,400m)のツアーテント内には二段ベッドが。そしてベースキャンプであるプラザデムーラス(約4,300m)のツアーテント内には分厚いフカフカのマットが敷かれています。しかし私たちは自分たちのテントを建てて、インフレータブルの薄いマットで寝る日々...。

それから食事。ツアーの人は、サラダ、スープ、メインディッシュ、ワインにデザート!!が込み込みの夕食を頂けるのです。

大晦日のお祝いでツアー会社(インカ社)が用意していたのは豚の丸焼き、ケーキ、シャンパン...。豚肉の焼ける匂いが食欲をそそるったら、全く...。それを横目に私たちは、インスタントのどん兵衛で年越し蕎麦をすすりました。

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シャワーだってそうです。お金を出せばシャワーが浴びれるのですが、ベースキャンプの手前と奥とで料金がかなり違う。もちろん安いのは坂を登らないでスムーズ手前のシャワー。ちなみに私は浴びませんでした...。

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そしてアコンカグア登山で辛かったことベスト3に入るのが荷揚げ。歩荷で慣れてるポーターの人は、山ほど荷物を背負って、その後ベースキャンプでサッカーするくらい元気なのですが...。

最終アタックなどで使う荷物20kg以上を高度順応も兼ねて、ベースキャンプからその次の第三キャンプ地点ニド(約5,550m)まで背負って一旦荷揚げするの。これが私にはなかなか辛かった。アコンカグアで辛かった事第3位です

登山の快適さは、結局のところ、かけたお金がそのまま比例します


ニドアタックか、コレラアタックか

アコンカグアの山頂アタックには主に2つのルートがあります

第3キャンプ地点C1ニド約5,550から山頂をアタックする方法と、第4キャンプ地点C2コレラ約5,970mを設けてそこからアタックする方法。

前者ニドアタックは、「結局、もう一つ上にキャンプ地点を設けたら6000m近いところで寝ることになるので、どのみち高山病で体が休まらない」との理由でニドから一気にアタックしようというアイデア。ただし、片道のコースタイムが最大12から14時間とのことで、下山まで考えると下手したら20時間近い行程に。健脚で体力のある西洋人に主に人気のルートのよう。

後者コレラアタックは、もう一つキャンプ地点を設けることでアタック時の片道コースタイムを8〜10時間の収める作戦。堅実に進みたいに日本人に人気なルートのよう。

私たちが選んだのは、どちらでもない。C2ベルリン約5930mからのアタックでした。

まずニドからアタックするような体力の自信がなかったこと。それから、ベルリンは「キャンプ地が狭いし強風で最悪」という噂に反して、実際行ってみたらそんなに風も強くなくて快適だったこと。私たちはベルリンアタックを決めました。

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アタック失敗、2度目のトライ

結果から言うと、実は私は最初のアタックに失敗し、一度ベルリンに戻って1日休んでから翌日2度目のトライで登頂しました。

最初の敗因は、体力不足。

強風と山頂手前の急登グランカナレータの途中で心が折れてモタモタしているうちに、下山時刻のタイムリミットを迎え、敗退。アコンカグア辛かった事第二位です。

「再トライしたい」と言う私に対して、「ワガママだ」と、完全に正論で止めてくれたブラザー氏。そんな彼を無視して、私はベースキャンプで知り合った別のソロの日本人男性とベルリンにもう1泊して、1日休みを挟んで再トライ。

ブラザー氏は先に下山、日本人ソロ男性は翌朝高山病でダウン。私は一度アタック敗退した登山道を、今度は一人で歩いて再トライ、登頂しました。

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2度目のトライの勝因は、朝もっと早めに出発したこと。そして何より、その日は風がとても穏やかだった事。

一応登頂したけど、2回もトライして、ワガママを通して、とってもカッコ悪い登り方でした...。

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下山で吹雪:アコンカグアで辛かった事第一位

なんとか山頂に立ったのは良いものの、ちょうどたどり着いた頃にやってきたのは厚い雲。下山を初めて間もなく、吹雪いてきたのです。

あっという間にスネまで積もる雪。多分その日登ったのは私含めて2組か3組だけ。帰る途中、仲間の一人が歩けなくなって横たわってる隊を発見。

私は、正直雪山の経験がほとんどなくて不安なので、山頂で出会ったおじさんと一緒に下山。

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(右は私。真ん中は一緒に下山したおじさん。アコンカグアの麓を御鉢巡りみたいに一周した後、登頂したそう。)

下山の後半はラッセル状態。ベルリン約5,930mまで降りるのは諦めて、コレラ約5,970mでおじさんのテントに泊めて貰う事に。

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ダサい、ダサすぎる私...。

最低だ...。


私の帰りを待っていた人

さて、予期せずコレラで一泊したボロボロのボロロンですが、実はベースキャンプで知り合って一緒にアタックするはずだった日本人ソロ男性をベルリンに残していました。

「こんな吹雪の中、キャンプにもどって来ない」

そんな状況なわけで、彼はきっとさぞ心配してくれているだろうと思い、翌朝、朝イチ急ぎ足でベルリンに戻ると

かけてくれた第一声は、

「あ、どこかでビバークしてると思いました😀」

って一ミリも心配してないんかい!!

その後、街まで下山してブラザー氏に会うと、かけてくれた言葉は

「おー、生きてたか🥳」

ってまたすごいライトなノリとコメント。

全く、山男って...。

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