法で裁けない悪事の話@電車

先日電車に乗って自宅に帰っている時だった。

とある駅でかなりの人が乗ってきており、
(うわ〜、俺あと30分くらい立ってるの辛いな)と
思っていたのだが、

その人々と同時に、まあまあお年の召したお婆さんが3人仲良く乗ってきた。
「これ乗れるかしら?あら〜すごい人ねえ。」
そんな会話を続けながら、僕の左側に位置を構え、人混みの中どうにか立っているようだった。

僕の乗っていた位置は、車両の中でも端っこ。
横並びで3人がけの席、乗車口側に座っている人の前で吊革に捕まって立っていた。

僕の右には友人同士と思われる男性(僕と同い年くらい)が立っており、「どっかで座りてえな」と会話が聞こえていた。
対して僕の左では、お婆さんが3人で仲良く座席の端に縦に伸びるシルバーの手すりに捕まっていた。

「3人で協力して引き抜くタイプの聖剣かな」と
僕は思いつつも、ヘッドホンで聴く音楽越しに耳に入ってくるお婆さん達の会話に耳を済ませている。


「いやあさ、学生なら耐えれるかもしれないけど、あたしらはもうね。大変よねえ。」
「もう膝がね、下半身がダメなのよもう。」
「ゴールデンウィークっていうのは大変ねえ。」

話しているのは3人中2人のようで、1人は手すりに捕まったままウトウトしており、電車が揺れる度に頭が僕のボディに入ってくる。


少し経って、僕らの前の3人がけの席に動きがあり、周りの人間が様子を伺い始めた。
案の定、3人中2人が座席を立ち降車する素振りをみせたので、「ああ、やっと座れるな。」と思った。

しかしあることを思い出す。
僕は右側の男性2人が座りたがっているのを知っていたかつ、彼らが僕より前にこの車両に乗っていたことをふと思い出し、リュックを下ろすのを止めた。
(大人の余裕を見せるかあ、、、)
そう思った僕は右側にさっと視線をやり、彼らに(座ります?)と小声で呟き、「あざっす」という控えめな感謝を僕にくれた2人の好青年と友情を芽生えさせようとした。

その直後だった。


「すみませんねえ!譲ってもらって!」
3人のオバハンのうち、会話を延々と続けていた井戸端会議シスターズの2人が座席にダイブしていった。

座席に座ったままだった降りるつもりのないであろう男性は、その2匹の圧に押され、もう1人のまだ眠っているオバハンに座席を譲った。

「悪いわねえごめんなさいね〜、やっと座れちゃったわ。もう膝限界だったのよ〜。」

「ええっ…」と声を漏らす"あざっす君"と、物凄い早いスピードでスマホをいじり出す、席を譲った青年。
僕は悔しさで拳を握りしめながら、ヘッドホンから流れてくる坂本龍一の『Energy Flow』で心を落ち着かせていた。

(そんなに座りたいなら優先席側に乗れば良いのに)
こんな感情も1度は持った。しかし、事が終わったあとにそれを直接言う勇気は無い。高齢者に「高齢」を振りかざされたら、もはやそれは無敵に近い。

僕だって何度も考えたことがあった。

「なんで優先席空いてるのに普通席にあのジジイは座ってるんだろう。あのジジイ達が優先席に自分から座れば、空いた普通席に立ってる人達が座れて、みんながみんな幸せになれるハッピー車両の出来上がりなのになあ!」

ってね。


僕、あざっすブラザーズに加え、座席を譲ることになった虚しき青年の4人は、目の前に座る高齢者3人の前に為す術もなく散っていった。
僕らは、「高齢者社会」の本当の恐ろしさが一体何なのかを、身をもって思い知ったのだ。



高齢者になんの価値があるのか?

人生経験が長いことはなんの価値もない。

人より長く生きてる癖に自分より若い人に偉そうにしてるような奴は、きっと今の恵まれた若者に嫉妬しているだけ。

僕はもう、こんな世の中は嫌だ。


さあ、立ち上がろう若者たちよ。
僕らなら、"あいつら"を倒せる聖剣を抜ける。


高齢者好き^ ^

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