見出し画像

面接での「第一印象」は妥当か

ご無沙汰しております。

今回は、面接における「第一印象」について考えてみます。鍵かっこをつけているのは、個人的に疑問をもっているからです。

面接では、第一印象が大事であることを言われます。面接における第一印象とは、服装や身だしなみ、立ち居振る舞い、態度、姿勢、言葉使いなどを総称して、第一印象を言われます。たとえば、スーツを着ていないとか、髪の毛がぼさぼさとか、椅子に深く腰掛けるとか、返事は曖昧とか、数え上げるとキリがないくらい多くの規範が存在します。それらのひとつでも欠けると、「第一印象」が悪いという烙印を押されます。こうなると、いくら質問に真摯に丁寧に的確に答えたとしても面接官の印象はなかなか変わりません。当然ながら採用される可能性も下がってしまいます。

これは要するに、「人は見た目が大事」と言ってもいいかもしれません。

メラビアンの法則

「メラビアンの法則」をご存じでしょうか。これは、アルバート・メラビアンという心理学者が1971年に提唱した理論です。私たちの人に対する印象について、視覚情報、聴覚情報、言語情報の優先度についてどう認識しているかというようなものです。人は視覚情報に55%、聴覚情報に33%、言語情報に7%を割り当てているという見方です。

つまり、面接においては言語情報よりも、聴覚情報よりも、視覚情報が面接官の応募者に対する印象形成に大きく影響を及ぼしているというものです。このようなことを、「面接では第一印象が大事である」という立場で「メラビアンの法則」が引用されるのです。

キャリアコンサルタントが『「メラビアンの法則」にもあるように、面接では服装や身だしなみの第一印象が大事なので気をつけるように』などとアドバイスされることが多くなるという現象につながっています。

しかしこれ大きな誤解です。この、「メラビアンの法則」が大きな誤解を招いているのです。というのは、「メラビアンの法則」が成り立つのは、人が矛盾した情報を得た際に有効であるということはあまり知られていません。例えば、相手から怒った顔をしながら「好き」と言われた際に、私たちは言語情報よりも視覚情報、すなわち怒った顔の印象を優先させるということです。




学生の就活の場面

学生の就活の場面で「第一印象」を考えてみます。多くの学生は横並びに他の学生とほぼ同じリクルートスーツの着用が義務付けられているといっても過言ではありません。質問には的確に答え、自身の有能さをアピールすることを求められます。また、企業についての情報収集を入念に行いながら、いわゆる「ガクチカ」とよばれる自己分析もしっかりとこなすことも求められます。

新卒の学生は、それまで学生生活を送ってきてたわけですから、社会人経験はほとんどないといって等しいと言えます。アルバイトなどをする学生もいますが、社会人としての経験でいえば乏しいと思います。つまり、学生にとって「第一印象」は、面接の結果、いや今後の人生をも左右する要因となっていることになります。

しかしながら、多くの方が経験された通り、初対面でしかも面接という場面はとてもストレスフルで緊張を強いられ、本来のパフォーマンスを発揮しにくい状況です。そのような場面で「第一印象」云々というのは、はっきりいって私はナンセンスだと思います。圧迫面接が批判されるのもこのようなことがあるからです。

近年は、企業側も努力がなされています。というのは、これからの人手不足時代に突入している状況から企業も人材確保に躍起になっています。いかに有望な人材を確保できるかの命題のもと、中には面接の前に学生らにアイスブレイクのような場面を設け、面接前にリラックスしてもらうようなこともなされているようです。つまり、面接での「第一印象」だけではその人のことを多く知ることはほぼ不可能であるという企業の認識の変化の表れだともいえます。




ここまで、面接における第一印象が妥当かどうかについてみてきました。さまざまな見方があるかとは思いますが、その多くは間違ったものであると言えます。特に、新卒就活であろうと転職であろうと面接の場面での第一印象に選考が左右されてしまうことの妥当性を疑う視点をもつことが大事です。

第一印象よりも、その人がどのような経験を積み重ねてきたのか、実際に何をやってきたのか、どういう役割を担ってきたのか、どういう結果をのこしてきたのかという事実関係をしっかりと見ることが重要です。

また、その人がなぜ、そのような経験を積んできたのか、その仕事にどのような姿勢で取り組んできたのか、これまでどのようなことを心がけてきたのか、失敗した際に何を考え、どういう対策・改善の工夫を行ったのかということも重要です。

前者は、人の能力に関する他者の印象で、後者は人柄に関する人の印象形成です。面接の場面に限らず、私たちの他者に対する印象形成では大きく、能力に関する部分と人柄に関する部分を見て判断されている言われています。このようなことを私たちは本来は、他者を総合的にみる目を養っているはずなのです。しかしながら、さまざまな情報を目にするようになって、大きな誤解を招いていることに私たちはなかなか気づけません。


しかし実際は、それとは逆の方向に向かっていると思います。これは面接の場面ではありませんが、普段の生活の中で他者にたいする印象は「見た目重視」となっています。それは、「イケメン」「かわいい」「ダサい」「ブサイク」といった言葉に表されているように、明らかに「見た目重視」とされる言葉が多く使われています。これは、アピアランスともいわれ、他人への蔑視発言に使われたり、誹謗中傷や差別発言にも用いられることも多くあります。

それでも、このような考えをもつ人が多くなると、それが主流派となります。自然に淘汰され、上記のようなルッキズム優先主義者が主流になると、少数派は淘汰されていくのは自然の流れです。

面接において、「第一印象が大事だ」としか声高に言わない助言は、ルッキズム優先主義と同程度と見ていいのではないかと私は思います。もっとより、本質的な部分を見る目を養わなければなりません。多くの情報を得ることが可能になった現代であるからこそ、正しい情報と謝った情報をしっかりと見極める能力も重要です。

特に、「メラビアンの法則」を誤った認識で活用しているキャリアコンサルタントは多く存在しているものと思われます。キャリアコンサルタントのみならず、多くの応募者は自分自身でも正しい情報を得る姿勢がこれからはより求められるようになるでしょう。



今回の記事はここまで。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

また次回、よろしくお願いいたします。

いいなと思ったら応援しよう!