中国のカルフール(家乐福)について。
私が初めて中国に短期留学をしたのが、2003年のことです。
留学先は天津市で、北京市の隣にある(ぎりぎり)大都市に分類される地域です。
しかし、市の中心部には大きなデパートこそ存在していましたが、さすがに20年前の中国ですから、当時はまだまだ発展途上の国という印象は否めませんでした。
そんな中少し郊外に位置する大学の宿舎に寝泊まりしていた留学生が手軽に生活用品を手に入れる場所、それがカルフール(家乐福)でした。
当時、タクシーに乗って「カルフールに行きたい」と伝えても「どのカルフールだ?」と店舗数を伝えなければならいないほど。
天津市内の郊外に数十店舗ほど存在したカルフールは、日用品から食品や自転車まで手に入るような大型スーパーとして圧倒的な存在感を持っていました。
そのカルフールですが、20年経った今も私の住む超大都市である上海市に数多く店舗展開しています。
ところが、その庶民の味方、カルフールに異変が生じています。
以前ブログにも書いた通り、中国での生活時間が長くなる見込みで、コロナ禍が過ぎ去った今では国際間の移動もかなり楽になりました。
今までホテル暮らししていた私ですが、手軽なマンションを借りることになりました。
私自身もここ数年はネットショッピングを活用することが増えていましたが、今回は仕事でドタバタしていたこともあり、ネットであれこれと探している余裕がありませんでした。
とりいそぎ最低限の生活用品を買い出しに行こうと、パッと思いついたのが「カルフール」でした。
インターネットショッピングが発達する中国では、特にこの5,6年で「スーパーマーケットは苦境に立たされている」と言われることが多くなっていました。
百聞は一見に如かず、車を運転して近場にあるカルフールに久しぶりに足を運んでみました。
私の住む浦東の金橋エリアは開発区として政府も力を入れているエリアですが、以前は、その金橋エリアでも中心的な輝きを放っていたシンボルがカルフールでした。
欧米人の駐在者も多く、インターナショナルスクールもいくつかある閑静な住宅街の中心にありました。
ところが近年は金橋エリアにも地下鉄が伸び、人々の生活レベルも向上し、いくつかのショッピングモールが開業しています。
ららぽーとも数年前に開業しています。
さて、カルフール金橋店。
向かってすぐにいくつかの違和感を感じました。
1つは、週末であるにも関わらず、駐車場がかなり空いていること。
10年ほど前、私が上海に来たばかりのころ、当初、よく来ていたカルフールは駐車場に入れないほど、人々でごった返していました。
今回はあっさりと駐車場に入り込めただけでなく、店舗の入り口付近のベストポジションを確保することができました。
2つ目はエレベーターが止まっていたこと。
金橋店は1階に飲食店、フードコートやテナントが集まっています。
2階にスーパーマーケットがあり、1万平米(3,000坪)を超えるであろう床面積となっています。
お昼時ということもあり、1階にはそれなりの人々が食事をしていましたが、どこも満席、というほどではありません。
そして2階へ向かうエレベーターが止まっていました。
これは余談ですが、安近短のスーパー銭湯の運営モデルで置き換えて言うと、逆になってもいいのではないかとは感じました。
どちらかというと人気がある飲食テナントを上階に配置することで、売上の低いスーパーマーケットに集客を集めること(人が通ることで)ができるようにも感じました。
店内をパッ回って見たところ、スーパーマーケット内のお客さんは20名程度。
セルフレジは閉まっており、通常のレジも1つのレーンしか開いていません。
驚いたのは、商品棚の中のほとんどが、明らかに少なくなっているのです。
(後述)
これ自体はもしかしたら改装を予定などの可能性は否定できませんが、それらの告知も見当たらず、店員さんの人数から見てもマイナスな印象しか残りませんでした。
買うべきリストを準備して、張り切って買い物に出かけた私でしたが、結局買ったのは、どこでも購入できそうな2、3商品のみでした。
結局、必要なモノはマンション下にあるコンビニより少し大きい程度の超市(スーパー)で購入しました。
私は業界外の人間なので、カルフールが不振なのか、小売店の多くが不振なのかは推察でしかありません。
ただ、確かにこのご時世、ネットショッピングで済ましてしまう人が明らかに増えていることは間違いなく、実店舗型のショッピングモールが昔よりも厳しい状況になるのは当たり前のようにも感じます。
その中で、カルフールの良さは、どこの店舗でも似た作りになっている安心感のようなものがありました。
ただ、多くのショッピングモールができてきた中国においては、面白みに欠ける印象もありました。
レジャー化も多様化し発展を続けた中国においては、たとえば、ららぽーとのガンダムであったり、人々の興味のあるテナント誘致、子供の遊び場などなど。
あくまで素人目線ではありますが、そうした集客の工夫は、単純な作りになっているカルフールには、こうした面で確かに欠けていると感じてしまいます。
さて、少し気になってネットニュースを見てみたところ、北京市内のカルフールが3店舗になったという報道がありました。
その報道の記事を要約すると
・28年前はショッピングモールの先駆けとして栄光の時代を歩む。
・2006年には中国国内の出店数100店舗、売上高250億元を達成。
・2010年に世界、中国国内の店舗数でウォールマートを超える。
・2016年には再びウォールマートが店舗数でカルフール超え、100店舗ほどの差になった。
・2019年に苏宁(蘇寧)グループがカルフールを買収後、不振が際立つ。
・2023年15店舗あった北京市のカルフールは、この半年でたった3店舗。
と、ありました。
記事内での最終的な分析としては、カルフールの凋落の始まりは、赤字店は積極的に撤退させ、家電製品などに注力したが失敗。
仕入先の拡大などで、生鮮食品の自社化をしたが、不振。
苏宁グループ本体も不振を極め、カルフールに注力することができなかった一方、ウォールマートは配送サービスの拡充などで大成功を収め、両社の差は相当に開いてしまったということでした。
また別の記事では、カルフールの会員カード(デポジットタイプのカード)についての報道がされていました。
どうやら北京市内のカルフールも棚の中が空っぽだそうで、その理由が会員カードによる購入制限が設けられたことを指摘していました。
・会員カードによる購入は買い物金額の20%までと制限し、消費者の大きな不満を買った。
・中国から撤退するというのは、デマだとカルフール側が発表。
・北京の数店舗は改装後に再開業し、その他の店舗も大規模改装を始める。
ということでした。
会員カードの機能については割愛しますが、いずれも私が経験したことは一時的な状況によるものです、と説明されているような気がします。
しかし、この記事中では、カルフールが再び消費者の信頼を勝ち取るのは難しい、としていました。
たまたま私が行ったカルフールがこのような苦境に立たされていたのか、それとも以前からこのような状態が続いていたのかは分かりませんが、ニュースを見る限りかなりタイムリーだったことが分かりました。
いずれにせよ、庶民のシンボルだったカルフールが苦境に立たされているのは間違いなさそうです。
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