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トップセールス人材が築くソーシャルな営業スタイル

 営業スタイルの変革をしたい企業では、従来の営業にかかっていたコストを経営者と社員の両方で意識することが重要になる。訪問営業では、都内の往復でも1~2時間はかかるため、1時間の人件費を2,000円としても、2時間で4,000円、それに交通費を加えると、営業の成否とは関係無く、1件あたり約5,000円の費用がかかることになる。1日に丁寧な商談ができる件数も、午前中に2件、午後2件として4件程度だろう。

また、手当たり次第に電話をかけて見込み客の開拓をするスタイルも、時間単位の生産性は高くない。米フォーブスの記事によると、平均的な営業社員は1時間に8件の電話をして、1件のアポイントメントを取るのに6.25時間を費やしている。これは、50回の電話で1件のアポが取れる計算で、成功確率でみれば2%に過ぎない。

しかも、電話先の相手に断られ続けることにより、営業社員は精神的に疲弊してしまい、さらに仕事のパフォーマンスは下がることが報告されている。こうしたネガティブな電話セールスは「コールドコール」と呼ばれて、米国でも“時代遅れ”の営業手法と捉えられるようになっている。

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それに対して、事前に信頼関係が出来ている相手に対して電話をして、詳しい商談のアポ取りをすることは「ウォームコール」と呼ばれている。具体的には、展示会で名刺交換をした相手、セミナーの参加者、ネットから資料請求をしてくれたユーザーなどがウォームコールの対象だが、SNSを効果的に活用することで、さらに多くの見込み客を開拓する方法が注目されている。

LinkedInの営業セールス業界に関するレポート「State of Sales in 2016」によると、米国では営業人材の6割がFacebook、Twitter、LinkedInなどユーザーをターゲットにした「Social selling(ソーシャルセリング)」の手法を導入しており、その傾向は、トップセールス人材になるほど高くなることが報告されている。

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ソーシャルセリングとは、営業担当者が個人のSNSアカウントで情報発信を行う中で、多くのフォロアーと結び付き、信頼関係を築いていく方法である。IBMが行った調査でも、法人向けハードウエアやソフトウエア製品の購買担当者の中で3分の1が、ソーシャルメディアで新製品や新技術に関する情報収集や専門知識を学んでいる。さらに、購買担当者が40歳未満の場合には、その傾向が強くなることが判明している。

そのため、現代のセールス人材にとって、個人のアカウントで信頼関係のある人脈をフォロアーとして増やすことは、仕事をする上でも有益な資産になっている。フォロアーの数だけで優劣が決まるわけではないが、トップセールス人材のSNSアカウント保有率は高く、多くのフォロアーと繋がり、有益な情報配信を行っていることは、データからも裏付けられている。

これまでのセールス活動は、体力や根性勝負のアウトバウンド営業が主体だった。しかし、働き方改革や個人情報保護の観点からも、そうした営業スタイルの会社を信用しない風潮は高まっており、手当たり次第にセールス電話や訪問営業を行うスタイルは、急速に廃れてきている。これからのセールス人材にとって重要なスキルは、SNSやITツールを活用しながら、できるだけ多くの人との信頼関係を築き、誠実なコミュニケーションをしていくことになる。

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