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新生活様式の消費者を取り込むワークマンの快進撃とレナウンの破綻

3密の空間を作らないための対策として、2020年の夏は近隣で気軽に楽しめるアウトドアの活動が人気だ。建設現場や工場向け作業服の販売が中心だった「ワークマン(7564)」は、近年ではアウトドア衣類を買い求める個人客が増えており、コロナ禍の2020年6月は前年比で来店客数が39%増、売上高で44%増と業績が急上昇している。

快進撃の理由は、2019年9月から「WORKMAN Plus(ワークマンプラス)」という新形態の店舗を立ち上げて、キャンプ・バイク・釣り・サイクリング・登山・ジョギングなどのアウトドア用途にフォーカスしたオリジナルのアパレル商品を充実させていること。マーケティングでは、YouTubeやインスタグラムなどのアウトドア部門で人気が高いインフルエンサーを「ワークマン・アンバサダー」に選定して、ネットでの露出度を高めていることもある。

新型コロナウイルスの影響が長期化する中で、消費者はできるだけ安全に楽しめる屋外での活動に目を向け始めている。これは自宅周辺で楽しむ身近なレジャー(Staycation)のトレンドともリンクしている。近隣の海や湖での釣り、サイクリング、近場でのキャンプや車中泊などは、Staycation(ステイケーション)の楽しみ方であり、その大半がアウトドアでの活動となっている。

衣料についても、普段着としてもアウトドアのレジャーとしても使いやすい、リーズナブルで品質も悪くないワークマンの商品には女性の顧客層も増えている。

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反対に、落ち込みが大きいのが、スーツを中心としたビジネスウエアの分野だ。ビジネススーツが主力の「洋服の青山」を展開する青山商事(8219)では、2020年2月の売上高が前年比で29.4%、7月の時点でも68.7%と深刻なダメージを受けている。同社のメンズスーツは、平均単価が27,000円とリーズナブルな設定だが、在宅勤務でスーツを着る必要が無いビジネスパーソンが増えたことで、スーツの販売数は前年比で7割に落ち込んでいる。

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さらに、国内百貨店業界の衣料品売上高は、前年比で-60%となっており、百貨店を主力の販路としてきたアパレルブランドも壊滅的なダメージを受けている。「ダーバン(D'URBAN)」や「アクアスキュータム(Aquascutum)」などのブランドで、百貨店を主力の販路としてきた老舗アパレルメーカー、レナウンの経営状況が厳しいことは、以前から指摘されていたが、コロナの流行によってトドメを刺され2020年5月に破綻した。

ダーバン(D'URBAN)の紳士用スーツは、8万~15万円の単価で40~50代のビジネスマンを主力のターゲットにしてきた。アクアスキュータム(Aquascutum)も英国発祥の高級ブランドで、主力の商品だったトレンチコートも10~15万円の設定。この2つのブランドは、あえて百貨店にしか出店しないことでブランド価値を高める戦略をとってきたが、いまは高級スーツが売れる時代ではなくなっている。

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新型コロナで働き方や生活様式が変化することで、消費者が求めるアパレル商品のニーズも大きく変わってきている。品質が高いのは当然で、その上でどこまでリーズナブルな価格で商品を提供できるのかで、消費者の支持率も変わってくる。ワークマンの快進撃とレナウンの破綻は、そうした時代の変化に順応する会社と、できなかった会社との両極を示しているようで、栄枯盛衰をみるような感慨深さがある。

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