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看護コーチの保健指導とは?!

看護コーチは、看護とコーチングを実践する中で、患者・その家族・チームメンバー・他職種のスタッフ・地域の人々・その他関わる全ての人々がその人らしく輝いて生きるための支援をしています。
看護コーチトレーニングを卒業し、その後「認定看護コーチ」となった看護師の皆さんの日々の輝きを紹介することで、やっぱり看護っていいな、看護コーチングっていいなと思う瞬間をインタビューを通してたくさん見つけていきたいと思います。

「対談の時間は早朝8時までか、22時過ぎだと大丈夫です!」
絵文字いっぱいの優しいメッセージの中で安富由紀子さんが送ってくれた文章に驚愕。一体この方はいつ寝ているのでしょうか…(笑) それだけ仕事もプライベートも生き生き自分らしく輝いている安富さんは「人が生きるということ」に全力で目を向けている看護コーチさんです!

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安富由紀子さん
認定看護コーチ(1期)
ウェルネスナース
大学病院に6年勤め様々な診療科を経験し、
結婚後治験コーディネーターとして勤務。
出産後には自身が出産した助産院で勤務し
子どもとの関りに魅力を感じ保育園看護師
となる。現在は茨城で保健師として働く。

【いきいき生きる人を増やしたい!】


(奈津美)安富さんは、いろんな看護経験をされてますが、その中でも今、保健師さんを選んでいるのにはどんな理由があるんですか?

(安富さん)大学病院は6年しかいなかったんですけど、いろんな科を経験することができて、全部見つくしたなと思って。もう、違うことをやりたいなっていうのがあったんです。

(奈津美)違うことっていうのが保健師さんだったのですね。

(安富さん)病院に戻って看護すること以外にも、患者さんが元気になれることって、自分で何かもっとできるんじゃないかと思って。起業塾にも通ったんだけど、自分の想い・形にしたいことを見つけた後、一般の人向けにワークショップとか、講座をやり始めたんですよ。そこには「自分らしくいきいき生きる人を増やしたい」っていう思いがあって。その時にもっとコミュニケーションを身に着けたいなと思ってNCT*に参加したんです。看護の基本ってコミュニケーションだし。

*NCT:看護コーチトレーニング
日本看護コーチ協会による看護師のためのコーチングプログラムのこと

(奈津美)「いきいき生きる人を増やしたい!」っていうのが安富さんの根底にあるんですね。NCTを受けてみての変化はありましたか?

(安富さん)コーチの在り方、ナースの在り方、そういうのをまた改めて振り返りましたね。今まで自分たちがそれなりにできてると思ってた看護を超えた 素晴らしい在り方を見せてくれた気がして本当に学びが楽しかったです。やっぱり自分のやりたいことはこの形でいいんだよねって後押ししてももらったし、思い描いていた未来がもっと明確になったんですよね。

【心に残る保健指導】

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(奈津美)なるほど、看護コーチの在り方がいまの保健指導の在り方につながっているんですね。ナースサミット*も拝見しましたが、あの情熱が腑に落ちました。心に残っている保健指導はどんなことですか?

*ナースサミット…「しあわせな医療のカタチ」をテーマに2021年5月に開催された看護師を中心としたイベント。
サミット内での安富さんのお話はこちら→https://youtu.be/vg1isKLiHZc

(安富さん)やっぱり、人ってすごい奥深いんだなって思うことがたくさんあることですかね~。情報提供になりがちな普通の保健指導やってると全然見えてこない世界なんですけど。

(奈津美)普通の保健指導って、ティーチングみたいな保健指導ですかね??

(安富さん)そう、それをやると患者さんは、「はい、そうですね、わかりました」みたいな返答になりがちで(笑) 指導側が一方的に喋ることが多くなっちゃうんです。振り返ってみたらそういう保健指導たくさんやってきたなと思うんだけど、コーチングの要素をいれた保健指導をやりだしたら、ほんと人って奥深いんだなって思うんですよ。

といっても、普通の保健指導ではなかなかオープンクエスチョンで深堀するような質問ってやらないからすぐにはできなかったんです。もともと内科が大好きで、自分なりの保健指導とか、健康教室とかが出来上がってたから、そこを横に置いといてまで新しいことを取り入れて、目の前の人にうまく伝わらなかったら…っていう恐怖心があったんだと思います。ただ、そうしていたら、結局全然うまくいかなくて、これは腹をくくってやるしかないなと思って、本当にコーチング的な「質問」をやり始めたのが保健師になって半年くらいしてからでした。そしたら、保健指導で、その人がどう生きたいかどう死にたいかとかまで話せるようになったんです。

(奈津美)葛藤した時間もありながら、すごい変化ですね!

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(安富さん)例えば結構病気になりたくないとか、介護になりたくないっていう理由で保健指導を受けに来てくれるシニア世代の人が多くいるんですよね。なんとなく漠然とした恐怖心のもと、今の自分の生活スタイルに不安感をもったり、自分にダメ出しをしていたりする人が多いです。ただ、話の流れに合わせながらだけど、フラットな気持ちで「じゃあどんなふうに亡くなりたいんですか」って質問すると、「うーん、そうだなあ」ってすごい考えてくれて、”理想の死に方”みたいなものを結構語ってくれるんですよ。そこで初めて、穏やかな自分の死を想像する体験をして、帰るときには穏やかな表情になっている感じがしていますね。やっぱり、「どう死ぬか」なんて日頃自分一人で考えることも話すこともないから、保健指導がいい場だなと思うんですよ。保健師とか看護師っていう専門職だからこその一定の信頼感があって、でも初めて会うからほどよい距離感もある。そんな場だから、相談に来た本人が自分で発した言葉から気づきを得て、「自分てこういう風に思ってたんだ」って感じられるんでしょうね。

(奈津美)程よい距離感だからこその、深い話っていう、行政の保健師さんだからこその役割ですね。

【保健指導は背中を押す場所】

(奈津美)安富さんにとって保健指導ってどんなことなんですか?

(安富さん)保健指導がどんな立ち位置かっていうと、自分を承認してもらって「自分はこのままでいいんだ」、「自分らしく生きるこの道でいいんだ」みたいに思えるように、背中を押してもらえる場かなと思っているんです。
私の目標は『自分らしく生きる人を増やす』っていうところで、私が保健指導でやりたいことは、患者さんたちに、自分自身の価値や力を信じることと、本来のフラットな自分に戻ることで自分の力が最大限発揮できるっていうところをまずわかってもらうことなんです。それって病気を治していくことにもつながるんですよね。自分の力を信じて 自分がありのままの自分らしく生きることが、病気になったときも何かストレスがあって落ち込むときも、一番大事。
あと、主体的に生きてもらいたいんですよ。自分の力を信じてそして何事も自分が前向きに、自分らしく歩んでいく力を持ってほしいし、そうやって歩んでいくことが「健康に生きること」の全てなんだよというふうに思ってるんです。

(奈津美)いままでの保健指導の概念から大きく拡大してるというか、そんな型にはとどまらない思いがあふれていますね。保健指導ってこうあってほしいですね。決して、ただタバコをやめようとか運動をしようねとかいう指導ではないということですね。

(安富さん)そうですね(笑) 1対1の場ってめちゃくちゃ貴重ですよね。病院の診察とか1分診療とかじゃあ伝えきれないし、病棟でたくさん担当患者さんのいる中で点滴交換の時間だけでもなかなか伝えきれないと思うと。「その人としての生きる道」というか「今までの健康の概念以上のもの」が伝わって、一人一人に浸透していく世界を描いているので、第一歩として1対1の保健指導の場っていい機会だなと思っているんです。
最近は、保健指導をする人に向けて何か発信したいなと思ってYouTubeをやり始めたところなの!これが広がることで、看護コーチ協会が目指しているような現場の看護職とか医療スタッフにますます看護コーチとしての関りが広まるといいなと思って。

安富さんのYouTubeチャンネルはこちら
看護コーチYUKIKOの保健指導アカデミー:https://youtu.be/xAJ0YYUmS6s

【幸せな仕事】

(奈津美)素敵なお話をありがとうございます。安富さんにとって、看護とはなんですか?

(安富さん)なんだろう、相手の力を信じる幸せな仕事ですね。

(奈津美)なんだかその言葉、ほっこりしますね。安富さんの目指す看護コーチ像もききたくなっちゃいました!

(安富さん)看護コーチ像…、ナースって白衣の天使っていわれるじゃないですか?看護コーチって、完璧にできたら、まじで天使だなって思ったの!!でも今そういうと何となく軽い感じがするというか、自分たちのこと天使っていうのは恥ずかしいからなあ…(笑) うまく言葉にはできないんですけど、イメージとしては、山の像。たぶん自分(看護コーチ)が山で、太陽の光で山が照らされてて、太陽と山のてっぺんがつながってるの。そんなイメージが浮かんだんだけど、どう感じた???(笑)

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(奈津美)神秘的・・・・。山が看護コーチなんですね・・・、もし人々が山の周りにいるんだとしたら、太陽が一番理想の象徴で、その理想に行くための、懸け橋みたいなイメージなのかな?と思いました。

(安富さん)いいねいいねー!!!!そっかーー!!そうだね、私にとって看護コーチって、引っ張っていくほどのおこがましさはなくて、何か強い象徴でもないの。自然にそこにいて、その人がサポートされている実感なく、自分の力で理想に向かえるようにするのが、私の看護コーチのイメージなのかもしれない!


【インタビューを終えて】


ふんわりとした雰囲気で、心のほぐれるような話し方の安富さん。こんな保健師さんに保健指導をしてもらえたら、自分でも意識していなかったような心の奥底に眠っていた感情や本心がついついぽろぽろ出てきてしまいそうな感じがしました。インタビューの最後には「これ5時間くらいしゃべれるな(笑)」といって笑っていた安富さんからは、ふんわりした雰囲気とは裏腹に、ご自身の信じる道を突き進んでいる情熱もじわじわと感じられました。
私もついつい「指導」をしがちでしたが、そもそも、何かを「改善させよう」という考えがおこがましかったのかもしれないなと振り返りました。看護コーチングは「相手の可能性を信じる」ことが大前提にあります。
安富さんのように、保健指導の場でも相手のありのままを受け入れて、まずは可能性を信じることが、よりよい対話につながるのかもしれません。

次回のインタビューもお楽しみに★


インタビュアー:奈津美
救命病棟24時にあこがれて看護師になるも、その責任の重さからメンタルを崩し、うつ病発症。1年で看護師を挫折。その後「自分のような新人看護師をつくりたくない」と病棟看護師へ再チャレンジ。もがいているうちに日本看護コーチ協会と出会い、認定看護コーチを取得。看護コーチングを通して、看護の楽しさや やりがいに気づき、たくさんの看護師の笑顔と幸せのため、現在は看護コーチ協会スタッフを務める。

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