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あたたかな看護コーチ

看護コーチは、看護とコーチングを実践する中で、患者・その家族・チームメンバー・他職種のスタッフ・地域の人々・その他関わる全ての人々がその人らしく輝いて生きるための支援をしています。
看護コーチトレーニングを卒業し、その後「認定看護コーチ」となった看護師の皆さんの日々の輝きを紹介することで、やっぱり看護っていいな、看護コーチングっていいなと思う瞬間をインタビューを通してたくさん見つけていきたいと思います。

実は、看護師を強く希望していたわけではないのに、看護の神様に導かれるように看護師になった豊田真由美さん。患者さんもスタッフも包んでしまうような笑顔が印象的で、いつでもアグレッシブで探求心を忘れない副師長さんです。NCT*に参加される前は劣等感の塊だったと話されていましたが、受講後に患者さんへの関りもスタッフへの関りも変化し、人との対話がますます好きになったとにこにこ話してくださる豊田さんとの対談です。

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豊田真由美さん
埼玉県内の総合病院勤務 副師長
認定看護コーチ


実はなんとなく看護師に…

(奈津美)豊田さんっていつもニコニコで看護観も熱い印象があります!豊田さんが看護師を目指したきっかけって何だったんですか??

(豊田真由美さん:以下とよまゆさん)看護師をめざしたきっかけは特になくて(笑)なんとなく手に職があったらいいなとは思っていたけど、絶対これをやりたいっていうのはなかったの。看護学校に落ちて就職も決めていたけど、入学式の一週間前に繰り上げ合格がきまって入学という感じ(笑)

(奈津美)えーびっくり!(笑) 今となっては、とっても情熱のある看護師さんですよね!これは看護の神様に導かれたのでは…?と思っちゃいます。どうして今、こんなに熱く看護をされているんですか??

(とよまゆさん)うーん、やりたいことが見つかったからかも。たぶんもともと自分の心が弱かったから心を病んでいる人とか、仲間外れとか、一人ぼっちになっている人とか、輪に入れない人たちにすごく目が行くの。何となく声かけちゃうんだけど、そういうときって、ちょっとした声掛けで動き出せたりするでしょ!で、やりたいことが見えてきたの。みんな一人一人が自分らしい看護を楽しくできる環境づくり!「看護師とは」っていう型にみんなをはめるんじゃなくて、自分のいいところ悪いところも認めて、あの人はこれが得意、この人に聞いたらいいアドバイスがもらえる、私も助けるよと言い合える仲間作り、そんな繋がりを大切にしたいな。今は、同じ看護師として日々頑張っている看護師を助けたいという思いが強いかな。職場の環境を今よりもっと良くし、新人に選ばれる病院にすることが目標なの。

(奈津美)みんなで!に力が入りますね。

(とよまゆさん)私の中ではやっぱり「みんなで」なの。それぞれの得意分野を持ち寄ったらすごくない?それに、みんなでなにかに取り組んでる時って心強いじゃない?一人で何かを動かしたときって、周りがついてきてるかといえば上っ面な感じがするけど、みんなを巻き込むと想像以上のことができる。想像以上に相手(患者さん)も動かすことができると思うんだよね。

看護コーチングとの出会い

(奈津美)看護はチーム力が大切ですもんね。看護に熱い豊田さんがNCT*を受講したのは必然のような気がしてきました。NCT*を受けようと思ったのはどうしてですか?

(とよまゆさん)前の私は劣等感の塊みたいで(笑) 頑張っても頑張っても、周りの声が気になっちゃって、「あんなこともできないの?」って言われてるような気になってたんだよね。どうしようと思って検索して、行き着いたのが看護コーチングだった。でも、最初は環境や指導方法に不満を感じちゃって、内容が全然受け入れられなかったのね(笑)。イライラが上回って、アドバイスも素直に受け入れられない、今までの私を否定されているような気分にもなって。ただ、自己開示を重ねたことで、最終的には自己肯定感も高まって、「できない自分」も受け入れられるようになったな~

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*NCT:看護コーチトレーニング
日本看護コーチ協会による看護師のためのコーチングプログラムのこと


話を聴くということ

(奈津美)そんな知られざる過去が…(笑) NCTを受講して、他に変化はありましたか。

(とよまゆさん)後輩と話をするときに、待てるようになったかな。NCTでよく言う、「思考の旅に出てる」っていう意味が分かった感じ。無言になっちゃうと自分の質問が悪かったのかな、なんで答えられないの?って思ってたのが、「今、相手は考えてんだな」って思えて、いくらでも待てるようになった。答えやすいオープンクエスチョンとかなるべく答えやすい質問を相手に投げかけるようにしたら、相手が一人で気づいて自由に話しだしていくようになったの。「いつも話を聞いてもらってすくわれた」って言われたこともあったなー。ただ一緒の時間を過ごして、相手が話してるのを聴いてるくらいじゃない?例えば、「なんでお母さんはそういう風に言ったんだろうね」って自分の中に沸き起こったクエスチョンを話すと、相手がそれを拾って自由に考え出してくれる。それだけでこんなにも相手が変わっていくんだって実感したし、結局その子は仕事辞めずに続けてくれたの。私の場合、あんまりコーチングしようと思って意識しすぎるよりも、普通に話してて、自分が思ったことをちょっと言葉に気を付けて投げかけるといい方向に進むなって思う。

(奈津美)コーチングマインドが根底にあるからこそって感じがしますね。

(とよまゆさん)そうかも。あとは、がんのターミナルの人たちに対して、告知さえされてるなら、「残された時間なにしたい?」っていうのが最初から出ちゃう。遠回しに聞いても仕方ないと思って。そこって看護師の強み。「退院して何したい?」「それ目標にしようよ」って言葉をつかえるようになった。それで、ぽろぽろ出てきた言葉に対してまた言葉を返していくと患者さんは話すときは涙しながら話すけど落ち込むだけじゃなくて前向きになってくれる。看護の世界だけじゃなく、子育てにも効果を感じるなあ。どれか一つじゃない、いろんなところで役に立ってる。

(奈津美)NCT受講後の変化がいくつもありますね。最後に、未来の看護コーチへメッセージをいただけますか。

(とよまゆさん)気になったときがタイミングだから、あまり考えずに受講してもいいと思います。NCTはどんな人でも集まれる場所だし、参加することで自分を見つめる時間になるし。なりたい自分に近づけると思います。

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【インタビューを終えて】


とよまゆさんは看護人生を本当に楽しんでいるように見えました。そして、患者さんとの看護師としてのかかわりの楽しさを知っているからこそ、看護スタッフへの気持ちも強くなるのではないかなという印象でした。対談前の雑談の中で受験真っただ中のお子さんとの関りを話してくださいましたが、自分の子の受験をみていて、どの新人看護師にもこんな時期があったのだと気づいたそうです。新人看護師一人一人に親がいて、いろんな期待も背負っている、だからこそ病棟に来て幻滅させたくない、と話すとよまゆさんのまなざしのあたたかさと頼もしさに、私はこんな上司のもとで働きたいなと思いました。「看護師とはっていう型にはめちゃいけない」という思いもあたたかく、心が動きました。多様性の時代、看護師にも多様性があっていい。豊田さんのように多様性を強みと捉えて、みんなで楽しく看護ができるチーム力を高めていくことにも看護コーチングが活きているのかもしれません。

次回もお楽しみに★


インタビュアー:奈津美
救命病棟24時にあこがれて看護師になるも、その責任の重さからメンタルを崩し、うつ病発症。1年で看護師を挫折。その後「自分のような新人看護師をつくりたくない」と病棟看護師へ再チャレンジ。もがいているうちに日本看護コーチ協会と出会い、認定看護コーチを取得。看護コーチングを通して、看護の楽しさや やりがい、看護教育の必要性に気づき、たくさんの看護師の笑顔と幸せのため、現在は看護コーチ協会スタッフを務める。

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