ひだまりのような看護師に
看護コーチは、看護とコーチングを実践する中で、患者・その家族・チームメンバー・他職種のスタッフ・地域の人々・その他関わる全ての人々がその人らしく輝いて生きるための支援をしています。
看護コーチトレーニングを卒業し、その後「認定看護コーチ」となった看護師の皆さんの日々の輝きを紹介することで、やっぱり看護っていいな、看護コーチングっていいなと思う瞬間をインタビューを通してたくさん見つけていきたいと思います。
看護師になったのは実は不本意だった!!という衝撃のカミングアウト。それでも看護を続けてこられた潤子さんは看護師として誰かになにか与えるというよりも、「いつも助けてもらっているんです」と優しく話してくださいました。そこにいる人をあたたかく包んでくれるようなほっこりした看護師さんです。医療者ならではの家族とのエピソードは涙がこぼれそうになりました。
横田潤子さん
仙台で総合病院勤務
NST専門療法士
NCT2期卒業
【看護の道に突き飛ばされた?!】
(奈津美)そもそも看護師にどうしてなられたのかお聴きしたいです!
(潤子さん)私看護師になりたくてなったわけではなくて、本当は英語が好きだったから、外語専門学校に行きたかったんです。でも当時の先生が私を大学の推薦枠に入れてしまって、それを断ったら今度は准看の学校の試験を申し込んで、通いながら働く就職先まで探してきてしまって!やりたいことではないし、働くのも無理だし親元を離れるのも嫌だし、困ると思ってたんだけど、もう、親もそのほうがいいんじゃないかって言い始めてしまって、最終的にみんなに突き飛ばされる感じで看護の道に入ったんです。本当に不本意だったんです。
(奈津美)…え、衝撃すぎて…そんな人生の決まり方ってあるんですね…!!
(潤子さん)ねーですよね!!本当ですよね!(笑)
(奈津美)そんな感じで始まった看護人生では、途中で投げ出したくなりそうにも思えますが(笑)、どう続けてこられたんですか?
(潤子さん)うんと、何回か投げました(笑) でも学校も楽しかったし、勤め先の先生ご夫婦もとてもいい人だったので、「まあ、やってたら楽しいな」って思いながら、准看の学校を卒業して、お礼奉公で2年間働いてやめようと思ったんですよ。それで、もう一回外語専門とか、その時に好きだったことをしてみようかなと思って。でも、勤めてた先の先生紹介で、ちょっと知り合いが院長をやるから手伝ってくれないかということで中規模の病院を紹介されて、3年くらい働いたんです。それで、今度こそ、もう一回自分の人生やりたいことを見つめたいなと思ったんです。でも、先を決めないでやめて、1か月間何もしないでいたら、なんか戻りたくなったんですよ(笑)
(奈津美)私も同じような経験があります(笑) なんか戻りたくなりますよね(笑)
(潤子さん)そうほんとに戻りたくなっちゃって(笑)でも前の病院に戻るんじゃなくて、もうちょっと違うことも見れるんじゃないかと思い、健診センターで勤めてみたんです。そしたら一か月くらいしたときに、そこの先生に「病院に移りなさい」っていわれて、「え?!一か月しかたってないのに?!」って思ったけど、紹介してくれたのが今勤めている病院で(笑) 本当に人づてに紹介してもらって入るってことが多かったですね。結婚して一旦やめたり他の病院で働いたりもしたんですけど、NSTの専門療法士*になりたいと思っていたら、今の病院にまた声をかけてもらって再入職して、このまま退職までいようかなって。そんな感じなので、大好きだからこの仕事ずっと続けてます!っていうのではないんです(笑)
【目標を更新していける仕事】
(奈津美)そうだったのですね~!ただ、臨床を離れたら、「戻りたくなっちゃった」っておっしゃってましたけど、どうして戻りたくなっちゃったんですか?
(潤子さん)・・・・やれる仕事として、いろいろ考えたりもしたけど、自分で努力をする形で進めていける仕事かなって迷ったんですよ。私、毎年1年の目標みたいなのを立てるんですけど、私が他の仕事をして目標自体を更新していけるのかなっていうのも、ちょっと考えちゃったんです。看護師であれば、なにか揉まれたりなんだりする中で何か見つけられるものがあんのかなって思ったりして、んじゃあ看護師もう一回戻ってみようかなって。軽い感じで申し訳ないんだけど(笑)
(奈津美)すごーい!!!向上心の塊みたいですね!!
(潤子さん)いやいや私のは向上心ではないと思います(笑)不安の塊かな!(笑)
(奈津美)え(笑) 不安の塊っていってる言葉と表情があってないんですけど(笑) そんな中で、NSTの専門療法士になりたいと思ったのはなぜなんですか?
(潤子さん)私ほとんど救急外来とICUでしか働いてないんですよ。で、どっちも大好きで、本当は救急の認定看護師になろうと思ってたんです。でも、今は体が先に動くけど、年を取ってからも続けられるかなって思った時に、実は栄養にも興味があって。看護の世界でいう栄養って多岐にわたるじゃないですか。検査のデータとか、点滴とか、もちろん食べることとかって。そうなってくると、いろいろ学ぶことはあるし、そこに関わる人ってすごくたくさんの職種なんですよね。いろんな人の話が聞けることって面白いかもと思ったんです。それでやってみたら、はまったんですよね(笑)
(奈津美)なるほど!具体的にはどの辺にはまったんですか???
(潤子さん)うん、とにかく面白かった。食べることとか、それを食べるためには何が必要で、食べる前には何が必要で、タイミングとか考えることがすごく多くて、その考えるための自分の引き出しを増やす作業も多くて、まだ吸収しなきゃいけないことがこんなにあるんだなあっていうのと、まだ私考えることができるんだな!みたいな(笑) そういう面白さがあるかな。そこに惹かれて今に至る感じです。
【助けられていることに気づく】
(奈津美)NSTについて学んだ看護師ならではの、いろんな患者さんとのまた違った関りもあるんじゃないかなと思うんですけど、思い出される関りはありますか?
(潤子さん)資格をとって10年くらいになるんですけど、なんていうか考えることが患者さんのことだけじゃないこともあって、こんなにやってたけど、まだ知らなかったなっていう発見が多いんですよね。NSTだからこそ、病棟内をラウンドしてみたりとか、栄養士さんとか歯科衛生士さんとかを介してほかの病院に行ったりとか、企業さんで話をしたりっていう機会をもらったりとか、自分の中で想像していなかったことが今できていたりすると、楽しいとかそういうことだけじゃなくて、助けられていることに気づくっていうか。周りの人にサポートしてもらってて、いろんなチャンスをもらったりすることができる楽しさがあることも今やってる楽しみの一つかなあ。
(奈津美)潤子さんがいろんな職種の人にかこまれて楽しく仕事をしている姿がすごく想像できますね~。
(潤子さん)みんな助けてくれるんですよ~(笑)仕方ないなあって感じでやってくれるんです!わかんないどうしよ~う~ん…ってなってると、どうしたの?なんかある?ってこえをかけてくれることがあって。ほかの病棟とかに行って、知らない人たちと会えるのも楽しいですね。
(奈津美)潤子さんには、輝く看護エピソードがたくさんありそうですね!
(潤子さん)……わたしね、申し訳ないけど、一度も輝いていないと思うんです。わたし、看護コーチングやり始めてからの自分の理想が、イメージ的にはひだまりな感じというか。一生懸命やってる時には気が付かなかったけど、なんか立ち止まったり静かになったとき、困ったときに、「あ、そこにいたね!」っていう感じでありたいので、輝かしいエピソードっていうと、自分の中ではないかな。
(奈津美)回答があたたかすぎて、とってもほっこりした気持ちになります…(´;ω;`)
(潤子さん)助けられてきて、今現在に至るので、これからも助けてもらえるようにSOSを発しながら生きていくのかもしれないですけど(笑)
【患者さんにも助けられている】
(奈津美)じゃあ、助けられたエピソードは例えばどんなことがあるんですか??
(潤子さん)HCUとかICUで働いていると、患者さんと というよりも、患者さんの家族とかとの接点が多かったんですね。そういう環境だと、正直よくなる人もいればよくならないのがわかってる人たちもいるから、見てて苦しいっていう場面があるんですよね。ちょっとこれを思い出すと涙が出ちゃうんですけど…。大動脈解離で手術して一回治療が終わって生活に戻れた患者さんがいたんですけど、いざ職場復帰したらその日に再解離で倒れちゃって戻ってきたんです。わたしより若い患者さんだったので、その時子供さんもまだ小さかったけど、意識は全然戻らなくて。ご両親も遠方からきて、「戻らないですか?」っていう話をしていた時にすごく切ないなって思ってたんです。でも、奥さんは淡々としてるんですよ。その時はコロナじゃなかったから、面会の時間も30分くらいあるんですけど、10分くらいで「今日どうですか?」「わかりました」って帰られてしまって。お子さん面会に来られるなら環境つくりますよっていったんですけど、なかなか連れてこないし、2週間くらいたったころに連れてきたんですけど、お子さんたちも淡々としてて、この家族ってどうなんだろうって、正直私の中ではつかめなくって。それからも、その奥さんは仕事の帰りに ただきて、ただ話しかけないでずーっと顔見て、帰るんですよ。私たちスタッフとしてどういうふうに接していいかわからないし、どういうふうに考えてるのかもわからなくって、受け持ちになるたびに、「何かないですか?」「何かやりたいことないですか?」「先生からお話聞いてると思うんですけど、ちょっと厳しいです」とかって話してたんです。それでも全然行動が変わらなくって、私たちもカンファする中で、心配していたんですよ。でも、奥さんと話してるうちに「ここにきて、看護師さんから話を聴くっていうことで自分はすごく癒されてるんです」って言ってくれて。私たちは何にもしてなくって、やきもきしてたんだけど、その時、ああ、こういう関りもあるのかなって思えましたね。
(奈津美)潤子さんたち看護師が、心配したり、患者さんやご家族のために何かできないかと思う心は伝わってたのかもしれませんね。
(潤子さん)ちょうどコーチングを習っているときだったのですごく印象深くて。そのあと、「どういうふうにしていきたいとかありますか」って聞いたら、最初の手術の時みたいにCVとかガンツとかNGとかチューブの入っている形ではなくって、いつもうちにいるときみたいなきれいな顔でいてほしいなとは思いますっていわれたんです。私、その人の点滴のメニューとか考えたり、経腸始めなきゃとかいろいろ考えてたけど、ちょっとエゴかなってその時思って。患者さんの家族の意向を無視しているわけじゃないけど、こうだったらいい、っていう自分たち医療者としての思い込みをたくさん重ねてしまったなっていうことがあったかもしれないなあって。だからね、その奥さんに救われた。いてくれるだけでいいんですって、いつもここに来るのは息抜きになってるし、この時間が大事なんですっていわれたときに、なんかすごく考えさせてもらえたなっていうのがあって。きっとそういう言葉を返してもらったりして、自分がどういうふうに看護していくのか考える力をもらったりとか、支えてもらったりとかしてるんですよね。これはすごく大切にしていることかな(涙) これ思い出しちゃうと私切なくて。
(奈津美)私も涙が(´;ω;`)
(潤子さん)でも、やっぱこうやって私たち看護師は育てられていくんだなあって思ってて。そういうふうに支えてもらったり教えてもらえる自分でいたいなあとは思っているかな。もちろん向こうにしたら、100%お任せできるような看護師がいいと思うし、私もできればそうなりたいと思うけど、なかなかそうもいかないから(笑) この人には教えてあげようと思ってもらえる自分でいたいなと。
(奈津美)奥さんにその言葉をかけてもらったときに潤子さんは医療者であることや看護師であることに偏らずに一人の人になった瞬間だったのかもしれませんね。
この関りを潤子さんが「助けてもらったエピソード」として記憶されているのも素敵ですね。
(潤子さん)でも本当に助けてもらったもん。あれがあって、頑張らなきゃと思うし、謙虚でいようとも思うし、初心を忘れちゃいけないなとも思うから。
(奈津美)これから、どんな看護師になっていきたいと思っていらっしゃいますか?
(潤子さん)私やっぱり、ひだまりでいたいです。気づいたらそこにいたのねくらいの自分でいたいなと思ってて。この人がそこにいたんだなあってくらいの存在感でいいなとも思うし、身近なところだと、同じ勤務だとよかったと思ってもらえるような存在でいたいなと思います。自分の仕草とか表情とか、言葉の選び方使い方を自分なりにちゃんと見返して、日々気を付けていきたいなと。看護師としてじゃないかもしれないけど、人としてそういうことに気づいていくことって、きっと看護に結び付くと思うので、そこは大事にしていきたいなって考えてます。
【インタビューを終えて】
ひだまりのような看護師でありたいという潤子さんは、優しい蓮の花のような感じもしました。看護師なら知っていて当たり前、できて当たり前と思われてしまうこともあるかもしれませんが、看護師も患者さんに教えてもらいながら成長していくんですよね。成長の途中だということを自覚してこそ謙虚でフラットな気持ちをもって看護ができるのかもしれません。コーチングで大切にしているマインドの一つに「ニュートラルであること」ということがありますが、潤子さんは自分にも相手にも思いを寄せながら、何かに偏るわけではなくニュートラルな気持ちで人と関わっているように思えます。だから潤子さんはいつも助けられてるなあという気持ちでいるのでしょう。半ば無理やり准看の学校に進ませた当時の学校の先生は、潤子さんがこんなに素敵な看護師さんになることを見抜いていたのかもしれないなあとすら思えました。
次回もお楽しみに★
インタビュアー:奈津美
救命病棟24時にあこがれて看護師になるも、その責任の重さからメンタルを崩し、1年で看護師を挫折。その後「自分のような新人看護師をつくりたくない」と病棟看護師へ再チャレンジ。もがいているうちに日本看護コーチ協会と出会い、認定看護コーチを取得。看護コーチングを通して、看護の楽しさや やりがいに気づき、たくさんの看護師の笑顔と幸せのため、現在は看護コーチ協会スタッフを務めながら、ナースの幸せサポーターとして活動中
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