見出し画像

美容クリニックで働く看護コーチ

看護コーチは、看護とコーチングを実践する中で、患者・その家族・チームメンバー・他職種のスタッフ・地域の人々・その他関わる全ての人々がその人らしく輝いて生きるための支援をしています。
看護コーチトレーニングを卒業し、その後「認定看護コーチ」となった看護師の皆さんの日々の輝きを紹介することで、やっぱり看護っていいな、看護コーチングっていいなと思う瞬間をインタビューを通してたくさん見つけていきたいと思います。


1年半ぶりにオンライン上で再会した南條紗織理さん(以下さおりん)はいつものきらきらの笑顔でお話ししてくださいました。はきはきとテンポよく話すところからエネルギーにあふれている感じが伝わってくる、とても自然体の看護コーチさんです。

画像1

南條紗織理さん
認定看護コーチ(7期)
大学病院で勤めたのち
美容クリニックの看護師となる
現在育休中で間もなく復帰予定

【母のために看護師に】


(奈津美)さおりんにお会いしたときは、本当に天使のような看護師さんだと思っていましたが、看護師になろうと思ったきっかけは何だったんですか。

(さおりん)もともと母親が看護師で、看護師という職が身近だったんですよね。でもこれには紆余曲折あって(笑) 進路を悩んだときに「私看護師やめようかな」って母親に言ったら、母親がそれを止めたんですよ。それで反発して言い合いをしているうちに、お母さん泣いちゃって。人生でそんなの初めてで、こりゃやばいと思って、お母さんのために看護師の道を目指したんです。周りには、自分が看護をされたからとかいう理由で看護師を目指した子もいっぱいいますけど、私はなんかそういう立派なのではない(笑)

(奈津美)そうだったんですね、ちょっと意外かも!(笑) 看護師になってみていかがでしたか?

【心に引っかかっていること】

(さおりん)看護師になって最初に勤めたのが都会の病院で、言葉は悪いけど、なんか新人いびりみたいなのにがっつりはまったというか(笑) 私自身は同期が多かったから、いびられて落ち込むことがあっても、何とか4年間はそこで学ぼうと思えたんです。でも自分にプリセプティーがついたときにその子を守ってあげられなかったことがあって。それがすごくずっと今も残ってるんですよね。プリセプティーの子は先輩にきつくされたときに対処の仕方がわからなくて、でも私も教えるすべがなかったから、「気にしないこと!」とか「慣れしかないよ!」ってしか言えなくて。結局プリセプティーは適応障害みたいになっちゃって、やめていっちゃったんですよね。福島の子で田舎出っていうのも一緒で親近感もあったんだけど、一年も持たずに辞めちゃったことがすごくもやもやして、そこがどうにかいい環境にできなかったのかなっていうのがずっとあって。しばらくしてから、看護コーチングに出会ったとき、これだ!!って思ったんですよね。

(奈津美)もやもやを封印するのではなくて、じゃあどうしたらよかったのかって考えるのがさおりんさんの強さを感じますね。運命の出会いを果たした看護コーチングを学んでみてどんな変化がありましたか。

(さおりん)しゅん…ってなってる後輩に対しての直接的なアプローチが変わりました。立ち向かうのは私の頑張り方であって、後輩なりの頑張り方ってどういう頑張り方なのか気にかけるようになりましたね。例えば、知識の勉強なら頑張れるとか、逃げちゃうのもありだから、この先輩が一緒じゃなかったら楽しく頑張って仕事ができるのかとか、その子なりの頑張り方を引き出して、じゃあそっちでいこうって、アプローチできるようになったかなって思います。

(奈津美)そうやってさおりんにアプローチしてもらえたら がんばれそうですよね。いまあの当時に戻れるとしたら、どんな対応をしますか?

(さおりん)その先輩に打ち勝つすべを伝えるのではなくて(笑)、「どういう風に頑張りたい?どんな看護がしたい?」って、自分のやりたい看護をもっと引き出すように話をしたいなと思います。

(奈津美)自分のやりたい看護を引き出す!素敵ですね。

(さおりん)そういう話を全然してあげられなかったんですよね。病態の話とか、じゃあこの看護計画だったら、この先患者さんは今後どうなると思う?とかそういう話しかできなくて。本当にやさしい子だったんです。患者さんにもすごい柔らかくて、私が患者さんだったら、その子に看護されて担当してもらったらよかったって思うくらい。だから、その子のやりたい看護をもっと引き出したかったなって思います。

(奈津美)今のクリニックではみんな自分のやりたい看護が引き出されてるんじゃないでしょうか。看護コーチングを学んでから、一番印象に残っているエピソードってどんなことですか?

(さおりん)まさに看護コーチングを学んでいる真っ最中に病んでしまった受付の子がいたんですけど、その子がメンタル的にしんどくなるのもわかるってくらい結構きつかったんですよね。まだたくさん経験を積んできていたわけでもなかったから割り切ることもできなくて。きつい指導も、全部受け止めちゃって。そんな時に、その子と一対一で話をしたんですけど、ただひたすら泣いてたんです。いつもは私が話しちゃうパターンが多いんですけど、その時は泣き止んでから話を聴こうって思って、ずーっと黙って、泣き止むまで15~20分くらい待ったんですよ。泣き止んだと思ったら、今度は泣きすぎてもう話せなくなっちゃってたけど、それでも一生懸命自分の気持ちを伝えようとしてくれて、頑張りたいっていう言葉を言ってくれたんです。そこからまた教育のカリキュラムを組み替えてやったっていう事例があったんですよね。

(奈津美)こんなあったかい上司な…泣

(さおりん)でも鳴き声を聞いてただけです(笑) 結果しゃべれなくなったらどうしようって、内心ハラハラでしたけどね(笑)

(奈津美)その「待つ」っていうのがコーチのマインドですよね。

画像2

【美容クリニックでの看護の本質】

(奈津美)そういえばさおりんが、今の美容クリニックを選ばれた理由はどういったことなのでしょう??

(さおりん)再就職先を探したときにそこで初めて自分の母親への申し訳なさで看護師になったのから脱した感じなんですけど。

(奈津美)え、その話詳しく…!!

(さおりん)学生の時にスタバでバイトしてて、そこで「接客業とは」っていう精神を教えてもらったんですよね。そしたら接客業がすごく肌に合う感じがして、大学四年生の時に、「接客業っていいな」って思ったんですよ。でも看護師の資格取っておきながら看護師にならないのはさすがに親不孝者すぎだろうと思って(笑) 一人暮らしもさせてもらってて、さすがに自分でもそれはないなって思って…さすがに今になって接客業やりたいって言っちゃだめだなって思って、病院に就職したんです。ただ、やっぱり自分の中ではいつか接客業をしたいっていうのがあって。大学病院を辞めて就職先を探したときに、看護師で接客業もできないかなって思って、今の美容クリニックに着地点があったんですよね。

(奈津美)そうだったのですね~!美容クリニックで看護師をするやりがいってどんなことですか?

(さおりん)これは病院も一緒ですけど、患者さんが笑顔になって帰っていくところとか、患者さんの特徴的に、ちょっとメンタルが弱っている方も多いので、そんな方が元気になってくれることかな。美容によって内面が元気になるっていうのが魅力だなって思います。なんか、鏡を見るのも嫌だって言って、鏡もガラスも避けて歩いていたような人が、今はもう毎日鏡見てますって笑顔で言ってきたりすると、なんかもう素敵だなあって。

(奈津美)これはなんだか、心温まりますね。

(さおりん)私は切ったり貼ったりしないけど、話を聴けるのは看護師が主なんですよね。日常生活の悩みとか、心の悩みとかをそういう話していた人が、笑顔で「次何やろっかなー」とか楽しそうに言ってたりするのを見てるとなんか楽しくなる。

(奈津美)美容クリニックだからこそ余計重要なコミュニケーションですよね。コーチングも生かされていそうですね。

(さおりん)そうかも!もともと聞き役にならなきゃっていう思いではあったから、患者さんの言いたいことをずっと聞いてはいたけど、そういわれてみたら「じゃあどうやったら〇〇さんのモチベーションが上がったりしますかね」ってそういう質問もするようになりましたね(笑)全然意図してなかったし、雑談なんですけど(笑)

(奈津美)看護コーチの質問ですね!

(さおりん)やっぱり見た目が美しいかどうかなんて、結局は本人次第じゃないですか。結果その人のメンタルとか心が、どれだけハッピーになれるかっていうのが美容の一番の目的かなって思っているのでそこが引き出せるように、聞き役になってます(笑)

(奈津美)どれだけハッピーになれるか!美容クリニックの本質を教えてもらった気がします。

(さおりん)やりがいを感じて仕事がしたいと思ってるから、新人さんにもそうやって伝えていますね。

(奈津美)素敵ですね!!さおりんにとって看護コーチとは?

【コーチングは子育て?】

(さおりん)うーん、悩むけど、仙台のNCTに行ったときに知り合った方が、「看護コーチって愛だと思います」っていってたのが印象に残っていて。関係者には申し訳ないんですけど、私はその時、愛だなんて壮大すぎてコーチングとは桁外れというか、レベルが違うよ!って思ったんです(笑) でもね、なんか後輩としゃべったりとか、私が新人さんを育てる立場になったときに、「愛」ってすごいその通りだなと思って。子供を産んで育ててさらにそう思ったんですけど、コーチって子育てだなって思って。赤ちゃんが例えばわんわん泣いても、「なんで泣いてんだよ!!!」っては思わないじゃないですか。「なんでこれできないの!!!」っても思わない、絶対にできる日はいつか来ると思って見守るじゃないですか。これって新人さんにも全部当てはまるなって思って。今なにかできない新人さんがいたとしても、それはいつか絶対にできることになるんだっていう安心感を持ちながら接することができるようになるから、なんかコーチの人の目は、子育てとか愛とかそういう目で見るものなんだなって思いました。まあでも、この境地になったのは育休にはいってからだから、まだそれを実践はできてないんですけど(笑)

画像3


(奈津美)育休期間すら学びになってるさおりんの姿勢がすごい…さおりんの今後の展望を教えていただけますか?

(さおりん)ぱっと浮かんだのが、子育てのように仕事したいというか復帰したい。…っていうのも、今までわたし口出すのが多かったんです。ここできてないよーこれやろーって。今までは妊婦で期限もあって、ずっと待つことはできなかったから、あれどうした?とか、結構口出ししてたけど、もう少し待つっていうことができたらなって思っていたんです。で、いま子育てしつつ子供もいる中で、「待つ」ってやっぱり相手を信じないとできないことだなって思うから、今まで以上にほかの同僚を信じて任せてみようかな。傍観者と思われちゃうかもしれないくらい、待ってみようかなと思っています。


【インタビューを終えて】


子育てをしながらもそこに看護コーチングを結び付けて考えるさおりんの姿勢に感動しながら、子育てを経験した看護コーチがこれから職場でどんな関りや活動をしていくのか、とても楽しみになる時間でした。「待つ」ということはコーチングにおいてもとても大切ですが、実践に落とし込むのはなかなか難しいこともあります。さおりんも、泣き止むのを待つ時間はハラハラしたと話していましたが、「待つ」には少しの覚悟と 相手も自分も信じる気持ちが必要なのかもしれません。看護コーチとして「待つ」時間もじっくり味わえたら、ますます人とのかかわりが楽しく幸せなものになるのではないかなと思います。きっとさおりんの周りにはスタッフの笑顔と患者さんの笑顔の輪がどんどん広がっていくのでしょう。
さおりんのいる美容クリニックに行ってみたくなりますね。


次回もお楽しみに★


インタビュアー:奈津美
救命病棟24時にあこがれて看護師になるも、その責任の重さからメンタルを崩し、1年で看護師を挫折。その後「自分のような新人看護師をつくりたくない」と病棟看護師へ再チャレンジ。もがいているうちに日本看護コーチ協会と出会い、認定看護コーチを取得。看護コーチングを通して、看護の楽しさや やりがいに気づき、たくさんの看護師の笑顔と幸せのため、現在は看護コーチ協会スタッフを務めながら、ナースの幸せサポーターとして活動中。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?