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自治体システム標準化・共通化を理解しよう! 「カスタマイズってOK?」

前回の記事で、「自治体システム標準化・共通化」の概要と想定される疑問について整理しました。今後はそれらの想定課題と、どのように解決できるかを考えていきたいと思います。

既にカスタマイズをしている自治体は、カスタマイズをやめなければならないのか

こちらについては、3/17の内閣委員会でデジタル関連法案の議論がされています。公明党の濱村先生がご質問されています。

https://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php?ex=VL&deli_id=51722


この内容を整理すると以下のようになります。

・カスタマイズを妨げるものではない
・パラメータ系の変更はOK
・他のサーバーとAPI連携もOK

今回の取り組みの目的は、カスタマイズがされていることが課題だったわけですが、こちらは標準化・共通化する部分を確定した上で、それ以上の追加機能を提供することは妨げないと理解しています。とは言え、既に提供している機能を引き続き実現するためには、標準化・共通化の上にこの独自機能を提供するアプリケーションに縛られてしまうのではないかとは思います。

このあたりを考えるにあたっては、現在公開されている以下の「住民記録システム標準仕様書」を引用して参考にします。

https://www.soumu.go.jp/main_content/000706675.pdf

本仕様書では、標準仕様書の作成の目的として、「今あるカスタマイズの中で、普遍的に有用性が認められるものは標準機能として標準仕様書に盛り込み、そうでないものは盛り込まないことで、『人口規模が大きな団体でも、標準準拠パッケージであればカスタマイズなしで支障なく業務が行える』ようにしてカスタマイズを原則不要にする」ことを挙げている。そのため、各自治体における住民記録システムの実態を踏まえ、住民基本台帳制度上の事務以外についての機能であったとしても、住民記録システムの中で一体的に処理されることについて普遍的に有用性が認められるものであれば、実装すべき機能として盛り込むこととした。また逆に、こうした他業務関係の機能の追加は1つの大きなカスタマイズの要因であり、住民記録システムの中で普遍的に有用性が認められないものについては、実装しない機能として整理することで、カスタマイズを抑止することとした。

このように、できるだけ既存のカスタマイズを必要性に応じて標準仕様書に入れ込むという作業を進めているということのようです。

また、以下の記述からもある程度カスタマイズの種別を分類して、独自のカスタマイズを避けるような取り組みはされているように見えます。

本仕様書の対象は地域情報プラットフォーム標準仕様における住民基本台帳ユニットを基本としており、この対象範囲において定義すべき機能について、【実装すべき機能】【実装しない機能】【実装してもしなくても良い機能】の3類型に分類した。可能な限り3類型のいずれに該当するか分類をした上で、定義すべき機能の範囲内で分類されていない機能は、カスタマイズ抑制、ベンダ間移行の円滑化の観点から、実装しない機能と同様のものとして位置付ける。
パッケージシステムが本仕様書に準拠するためには、第3章、第4章及び第5章に規定する【実装すべき機能】をいずれも実装し、【実装しない機能】及び分類されていない機能をいずれも実装しないことが必要である。ただし、分類されていない機能のうち、自治体やベンダの創意工夫により新たな機能をシステムに試行的に実装させて機能改善の提案を行う場合は、当該試行についてあらかじめ公表し、当該試行を本仕様書に盛り込む提案となることを条件にして実装することを可能とする。【実装してもしなくても良い機能】は、実装しても、実装しなくても、実装した上で自治体が利用を選択できることとしても、いずれも差し支えない。

さらに以下のように、規模に応じて必要な機能というのが違うという前提で取り組まれていることがわかります。

また、本仕様書に準拠しているかどうかは、「3(1)対象自治体」で示した指定都市、中核市等及び一般市区町村の類型ごとに判断される。特に明記しない限り、3類型全てに当てはまる要件として記載しており、必要に応じて、「指定都市においては、~~」、「(一般市区町村においては、実装してもしなくても良い。)」のように記載している。なお、実装すべき機能のうち、法令上必ず使用しなければならない機能と必ずしも使用しなくてもよい機能があり、個別に判断する必要がある。

つまり標準仕様の策定と言っても、必ずしも1つの方式にしなければならないというわけではなく、個々の事情に応じつつも、できるだけカスタマイズをカスタマイズという扱いでなくすというアプローチがされていると見えています。

今回はこれで。