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ガバメントクラウド先行事業の公募を読み解く

以下のように「ガバメントクラウド先行事業(市町村の基幹業務システム)の公募」が開始されました。今回はこちらの公募について読み解いていきたいと思います。

具体的には以下のPDFファイルを元に読み解いていこうと思います。

先行事業の内容

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まずはP.2について、以下の記載があります。現在は全ての標準仕様書が出揃っていない=標準準拠システムがないものがあるため、まずは既存のシステムをガバメントクラウドにリフトするということが前提になっているようです。また、本番環境に移行することが前提となっており、以下にスムーズに移行できるかも検証のポイントとなりそうです。

・ ガバメントクラウドのテスト環境に、市町村が現に利用する基幹業務等システム又は市町村が導入を希望する基幹業務等システムのアプリケーションをリフトし、市町村が安心してガバメントクラウドや回線を利用できることを検証する。
・ 検証後に、データをリフトし、本番環境に移行する。
・ 検証作業中は、市町村のサービス提供に影響を与えないように、既存システムを並行稼働させる。

検証項目

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続いて、P3には検証項目が書かれています。こちらには標準非機能要件と書かれていますが、以下のURLを指すものと思われます。

また、以下の通り、別の要件が存在しています。特にcについては、複数自治体で共同で応募することを想定された書き方かなと想像されます。dのバックアップについては、どこまでBCPを想定するかが肝となりそうです。バックアップを別センターに取得すればよいのか、別センターにバックアップしたものを切り替えのために立ち上げるところまでを想定しておくのかによって、検証する項目が変わってきそうです。

※1:「先行事業において構築したシステム」の条件については、原則として以下のとおり。
a.業務アプリ、ガバメントクラウド、回線等に加え、外部システムとの連携を含むこと。
b.回線については、専用線を構築する場合又はLGWANを活用する場合を検証すること。
c.データの格納については、市町村ごとにデータを論理的に分離すること(詳細は検証過程で決定)。
d.バックアップについては、東西2センター(主環境とBCP環境の想定。IT室(デジタル庁)が指定)を活用すること。
e.その他、検証すべき事項は、IT室(デジタル庁)と協議すること。

加えて、投資対効果の検証も実施するとされています。先程のdと関連もしますが、今まで東西2センターでバックアップ構成をしているところはあまり聞いたことがなく、どの範囲で比較すれば現行システムとの投資対効果が測れるかについては整理が必要と思います。

③ 投資対効果の検証
○上記の検証を前提に、現行システムとの投資対効果の比較を行う。

ちなみに、元々はマルチクラウドでの連携検証等が実施されると、以前の資料内には記載がありましたが、今回はその記述が消えています。ちなみに1月時点での資料は以下からご覧ください。

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こちらの変更については、以下のURLのFAQに記載があります。

Q.
R3.1公表の「地方自治体におるガバメントクラウドの活用について(案)」のP8下段に「シングルクラウドとマルチクラウドの比較も検証します」とあります。しかし、今回の資料にはP4にも「1-3ガバクラの検証、2-2回線の
検証」との記載はありますが、マルチクラウドの検証の記載はありません。今回調達するのは1社のクラウドでしょうか。

A.
ガバメントクラウドは共通的な基盤・機能を提供する複数のクラウドサービスの利用環境となりますが、少なくとも今回の先行事業においては、検証参加自治体のアプリケーションは単一のクラウドに構築することを想定して提
案してください。

最終的にはマルチクラウドの状態にはするが、今回は単一のクラウドでやりますよとのことです。P.13のスケジュールにもありますが、7月にガバメントクラウドのクラウド提供事業者が決定されるとのことなので、ここで選定されたクラウド提供事業者のサービスを利用して、先行事業は実施される見込みです。

ガバメントクラウド上の標準準拠アプリへの移行パターン

P.5では、移行パターンが5つ示されています。ただし今回はガバメントクラウドへのリフト移行がメインになりそうであるため、パターン2かパターン3が見込まれるのではないかと思われます。つまり、アプリケーション自体が標準準拠されないものを、いかにそのままガバメントクラウドへ上げられるかが重要となります。

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先行事業のスケジュール

P.7からP.9にまたがってステップが記載されています。簡単に言えば、以下の通りとなります。

・ガバメントクラウドで開発環境を構築
・テストデータをテスト環境でセキュリティ、可用性、性能、拡張性を検証
・副本データをクラウドへリフトして移行性を検証
・副本データでセキュリティ、可用性、性能、拡張性、投資対効果を検証
・本番環境に移行し、移行性を検証
・本番環境運用により、運用・保守性を評価

本先行事業で取り組んだ自治体は、そのままそのガバメントクラウドを本番環境とすることになるため、あまりうまく行かなかったからといって、元の環境に戻すことができないため、かなりリスクが有るように感じられ、参加することを迷いそうな自治体が多いような気がしました。

先行事業に要する経費(想定)

P.10には経費に関する記載があります。基本的には全ての経費がデジタル庁が負担することとなっています。ここで回線については、まだ曖昧な表記になっていますので、ガバメントクラウドと自治体間でのネットワークがどうなるかについてはまだ検討中と思われます。

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先行事業の契約イメージ

契約イメージは、1月の案に比べて、検証受託事業者という位置付けが出てきています。こちらは今回の先行事業を請け負う事業者の位置付けと思われ、例えばマルチパッケージで構成されているシステムにおいては、どこかしらのベンダーが音頭を取って全体の移行を推進しなければならないため、なくてはならない位置付けとして設定されたものと思われます。

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当面のスケジュール(想定)

今後の公募のスケジュールですが、2段階に分かれています。
・7/5までに1次計画提出
・8/10までに2次計画提出

1次計画の際には、ガバメントクラウド提供事業者が決定していないため、費用の見積もりは不要となっており、事業者が決定してから必要経費を提出することになるようです。ここで気になるのは、先行事業計画に「クラウド提供事業者に関する希望とその理由」を書く必要があるのですが、ここで希望したクラウド提供事業者と、実際に決定したクラウド事業者が異なった場合に、2次計画提出時に変更しても良いのかどうかというところです。ガバメントクラウドの提供事業者の決定次第で、応募内容が左右されてしまうように見えています。

また、希望とその理由を書く際に、希望するクラウドの金銭的なメリット(インフラ費用や移行費用等)も含めて理由が書かれることになると思いますので、ある程度の試算は1次計画書時点ではしておかなければならないのだと思いました。

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FAQ

FAQより、いくつか抜粋をしたいと思います。

・採用される団体数はわからないが、人口規模・システム構成に応じて多様になる予定
・予算は9億円
・マルチベンダー構成でもOK
・17業務全てをリフトしなくてもOK
・IT室が求める技術仕様については公開できないが、知りたい部分を明らかにしてもらえれば公開することもある。

最後の回答については、これがないと応募するときにどういった基準で計画をすればよいかが不明瞭になってしまうことが懸念と思いますし、仕様が不透明な状態になり、最終的な結果が出た際に理由が明確にならない可能性があると思いました。

まとめ

以上のように、先行事業計画に関するまとめをしてみましたが、いかがでしたでしょうか。次回は、こちらを元にガバメントクラウドを利用した先行事業をどのように進めていくべきかについて、先行事業の要件に合わせてまとめていきたいと思います。