炎上のメカニズム 〜実はかつて、大炎上を経験しました〜 中編
かつて、あるクリエイティブのコミュニティで炎上したときの話。当時は死ぬほど大変な目に遭ってもうこりごりだ...とも思ったけど、貴重な経験になったのでここに共有しておきたい。
前編 https://note.com/jn_matsumoto/n/nc1731426fe65 からの続き。
さて、その、自分が率いるクリエイティブ集団、チームXが立ち上がり、いろいろと面白い展開が始まっていた。3DCG(3次元コンピュータグラフィックス)のクリエイターが多数いたので、CGの共同制作長編動画を作ったり、CGを原型に使って、3Dプリンターで出力するフィギュア(当時はまだ一般的ではなかった)を制作、イベントに出展して発表したりしていた。
当時はまだ、日本ではYouTubeよりもニコニコ動画に勢いがあった時代。チームに所属してるクリエイター勢はニコニコ動画でも人気者で、制作した動画が数十万再生を連発、時には100万再生を超える動画も出た。今のYouTube視聴者よりも少ない視聴母集団なので、ニコニコ動画で100万再生行くというのは、当時は相当なものだった。そのチームXのクリエイティブの力を持って、そろそろアジアのマーケットにも打ってでるか...という非常に良い感じの局面で、炎上のきっかけとなる事件は起こった。
前提として、当時のニコニコ動画はまだ2chの文化を色濃く反映しており、いわゆる「嫌儲主義」が幅を効かせていたこと。要は、「アマチュア発祥のコンテンツ文化において、それで儲けようとするやつが許せない」という考え。金を稼がないことにはいつまで経ってもアマチュアから抜け出せず食えないままなのだが、何故かそういう考えで足をひっぱる人たちがたくさんいた。「ネットのコンテンツはタダ」という考えはこの考えと深く結びついている。
だから、自分はチームのXリーダーとしてそこのバランス感にはものすごく配慮していた。「あいつらは儲けるためだけにやっている」(本来、そうだとしても別にいいはずだが...)とコミュニティ全体に思われたら、かなり苦しい立場に追われてしまうことは目に見えていたからだ。素晴らしい若手クリエイターの才能をどうやって世に出すか、その道筋を慎重に考え、見せ方などには工夫をしていた。ただ、前述のとおり、コミュニティの中で既にかなり目立ってしまっていたというリスクは、既にとても大きくなっていたのだが。その辺の脇が甘かった。
前編で述べた、チームX事務局補助のA氏(大手企業社員、匿名で活動)は、野望を持っていた。彼自身がプロデュース力を発揮し、クリエイターと組んで、いずれは独立・起業してやろうと。それで勢いあまって、チームXの他のメンバーに何ら相談することなくある広告代理店と話をつけ、クリエイターを商業デビューさせようという動きを画策した。
悪いことに、チーム外の、コミュニティの他のクリエイターにも手当たりしだいに声をかけた。チームの名前を使って。その誘い方が非常にまずく、古参の、うるさ型で嫌儲主義のとあるクリエイターB氏に、かなり上から目線でオファーを出す、ということをやってしまった。他のチームメンバーが知らないうちに。オレの言う通りにすれば、儲けさせてやるぜ?と。
これがB氏を激怒させた。というか、もともとB氏はこのチームXの動きを苦々しく思っていた。ひっそり楽しむオタク文化を守りたいのに、あいつら派手にやりやがって、と。チームXとしてはこのB氏の動きには注意しなければという警戒感は持っていたのだが、事務局のA氏は、この辺の空気を全く分かってなかった。コミュニティ内でうまくやっていくための感覚が欠如していたと言わざるを得ない。コミュニティでは、バランス感覚が決定的に重要だ。ビジネス的に、金だけで全てが決まると思ったら大間違いだ。それを理解する、普段勤めている大企業の気分で行動してしまったのが、その後のとても大きな悲劇を招く。
完結編に続く
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