【PART4】抽象化と具体化の本質

抽象化と具体化とは

 【PART1】ですこし抽象化について触れましたが、抽象化とは物事のより大きなくくりを見つけることで、逆に、具体化とは物事の詳細を見つけることです。
例えば、自転車を抽象化したら乗り物になり、乗り物を具体化したら自転車にも車にもなります。また、自転車は構成部品という観点で具体化すると、タイヤになります。さらに、タイヤは車にも該当するため、自転車と車は同じ部品を有しているということになります。面白いことに、今度はタイヤを部品ではなく、車輪構造という観点で見てみると、車輪構造が自転車や車を抽象化したものだとわかります。じゃあ車輪構造は車を抽象化したものなのか具体化したものなのかどっちなんだよ、と思うかもしれませんが、答えはどっちもです。要するに、どのような観点で見るかによってどちらにでも変わるということです。
 抽象化能力と具体化能力はそれぞれ別物のように扱われることが多いですが、実際にやってることは、どちらも物事の関連しそうなことを見つけだしているだけであり、見つけたものが抽象化したものなのか具体化したものなのかを後から分類しているにすぎません。しかし、意図的に分類(観点を明確に)しておくことで、後々、規則を見つける際に役に立ちます。

抽象化の例

【PART3】の一般論のプロセス別発見方法について具体例をあげて説明します。

【難易度★】
既存の一般論と一般論を組み合わせて、一つの論理とする方法

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例えば、「人間は死ぬ」→「ソクラテスは人間」→「ソクラテスは死ぬ」といった具合に理論と理論を足して新たな理論を導いています。なお、ご覧のとおり、この例では抽象化していません。

【難易度★★】
既存の一般論を抽象化し、上位の概念から新たな論理を構築する方法

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今度は、「人間は死ぬ」と「ソクラテスは人間」を抽象化したものを材料に、新たな理論を導いてみます。
「人間は死ぬ」 >>>(抽象化)>>> 「時間は進んでゆく」
「ソクラテスは人間」→ >>>(抽象化)>>> 「ソクラテスは哺乳類」
これに「猿は哺乳類」と「人間も猿も生息地域によって個体差がある」という観測事項を併せて考えてみると、時間の経過とともに生息地域ごとの環境に適応するために、変化(進化)しているかもしれないという仮説を立てられる。同様に、猿から人間に進化したのではないかという仮説(進化論)も立てられる。

【難易度★★】
観測した事象の共通点をみつけ、その規則性をルールとする方法

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働きアリの法則を例にあげて説明します。とある体系だった大企業では、2割の人がよく働き、6割の人が普通で、残り2割の人があまり働かないとい状況でした。そこで、よく働く2割の人のみを引き抜いての別の会社を立ち上げたところ、優秀な人のみを集めたにも関わらず、またしても働かない人達がでてきました。いろいろな人がいる大企業と、よく働く人のみを集めた別の会社で同じ現象が起きている(同じ規則がある)ことから、会社という組織が前提の場合は、働きアリの習性と同じことが起きるのではないかという仮説を立てられる。

<補足>
会社という組織において働きアリの法則がすべて成り立つというわけではなく、超少数のベンチャー企業などでは社員全員がよく働くことがしばしばみられる。よって会社という組織という前提だけでは働きアリの法則を説明するには不十分ということがわかる。見つけた法則をより精緻化するためには、複数のサンプルを用意する必要があり、そんなの当たり前だと思うかもしれないが、適切なサンプルを用意するためには抽象化能力が極めて重要になる。

【難易度★★★】については長くなるので、次回

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