【PART5】解決できなそうな問題を解決するための思考プロセス(ラテラルシンキング)

普通のサラリーマンをしていても、どうしたらいいかわからないという問題にぶち当たることは多いと思います。その時、立ち止まらずに案を作成して仕事を進めていくための考え方を紹介します。ラテラルシンキングなんてスティーブジョブズじゃないと無理だよと思うかもしれませんが、根気さえあれば新たな発想を意図的に生み出すことは可能です。

いまここで社会の問題を例に挙げて考えてもいいですが、それだと、導いた答えが正しいのか判断できないため、一見意味不明に思えるような思考パズルを例にあげて、どのような思考プロセスを踏むと答えにたどり着けるかをご説明します。大概の問題はこの思考プロセス+知識で解決できます。

※ここから非常に長いので、結論が知りたい方は最後までスクロールしてください。ただ、上から気合で読み込むことにも価値はあります。

<問題>※元ネタは「23 prisoners」という論理パズルです

23人の囚人がとある館の個室に一人ずつ閉じ込められた。囚人が閉じ込められている部屋とは別の空室に石像が設置されており、東西南北のいずれかを向いている。囚人は1人ずつランダムに石像の部屋に呼ばれ、石像を「左に90度回転」「右に90度回転」「壊す」のいずれかの行動を取ったあと、もとの部屋に戻される。全員が石像の部屋に訪れたあとに石像を壊すと全員解放され、壊したときに一人でも石像の部屋に呼ばれたことがない囚人が存在すると全員殺されてしまう。全員が確実に解放されるには?なお、囚人は互いに意思の疎通をとることはできず、誰がいつ石造の部屋によばれたかは知ることができない。ただし、最初に個室に閉じ込められる前に、23人で作戦を会話をすることはできる。


<この問題に対する取り組み方>
一般的に問題を解く際は、「こうしたい」、「答えはこれだろう」というゴールを定め、そこから逆算して考える場合が多いです。ただし、この問題はゴールが全くの未知です。ですので、逆算しようにも何から考え始めていいのかわかりません。また、そのような状況では、「規模を小さくして考えてみよう、例えばこの問題だと23人ではなく3人だったらどうだろう」と考えるのが常套手段ですが、やってみるとうまくいきません。ではそのような状況でどのように考えていけばいいかというと、わかっている事実からルールを抜き出し、そのルールを用いて答えにたどり着けるかを検証するしかありません。

<解答への思考プロセス>

1.まずはわかっていることを洗い出してみる。

①石像は東西南北のいずれかを向いている
②「左に90度回転」という行動
③「右に90度回転」という行動
④「壊す」という行動
⑤囚人は全部で23人いる
⑥自分も含め誰が最初によばれたかわからない
⑦自分は何回よばれたかわかる
⑧囚人は事前に会話して作戦を立てられる



2.壊す時点でどのような状況になるべきか考えてみる
明確に逆算できるほどの道筋は立てられないが、こんなことができたら解決できるだろうというあたりをつけてみる。

Ⅰ壊す人は全員が石像の部屋によばれているか知る必要がある。
Ⅱなんらかの方法で23回カウントする必要がある。
Ⅲカウントするための目印になるものを用意する必要がある。
Ⅳカウントするためにカウント役を1人用意する必要がある。

Ⅱ~Ⅳすべてを満たせれば解決できるな!さあどうしよう?



3.わかっていることで連想できることを書き出してみる

①石像は東西南北のいずれかを向いている
 →とくになし
②「左に90度回転」という行動
 →「右に90度回転」という行動に対してもとに戻す行動だといえる
③「右に90度回転」という行動
 →「右に90度回転」という行動に対してもとに戻す行動だといえる
④「壊す」という行動
 →バイオレンスやな
⑤囚人は全部で23人いる
 →23という数字に意味はなさそうだが、人数少なくしても成り立つのか?
⑥自分も含め誰が最初によばれたかわからない
 →つまり最初にどの方向を向いているかはわからない
⑦自分は何回よばれたかわかる
 →呼ばれるたびに何かを数えるのだろう
⑧囚人は事前に会話して作戦を立てられる
 →おそらくルールを定めて、全員に共通の行動をとらせるのだろう



4.3で連想したことを前提に、もう一周連想してみる。

①石像は東西南北のいずれかを向いている
 →どこか一つの方角をスタート地点としてなにか数えるのは無理だろう
②「右に90度回転」という行動に対してもとに戻す行動
 →戻すか進めるかの二択を絶対にしなければならい
③「右に90度回転」という行動に対してもとに戻す行動
 →戻すか進めるかの二択を絶対にしなければならい
④バイオレンス
 →バイオレンスやな
⑤人数少なくしても成り立つのか?
 →不明なのでそのまま
⑥最初にどの方向を向いているかはわからない
 →どこか一つの方角を起点として考えるのは無理だろう
⑦呼ばれるたびに何かを数えるのだろう
 →どこか一つの方角を目印としてカウントするのは無理だろう
⑧全員に共通の行動をとらせる
→まだわからない



5.4で連想したことを前提に、なにか仮説を立ててみる
 
 【前提】
①どこか一つの方角をスタート地点としてなにかを数えるのは無理だろう
②戻すか進めるかの二択を絶対にしなければならい
③戻すか進めるかの二択を絶対にしなければならい
④バイオレンス
⑤人数少なくしても成り立つのか?
⑥どこか一つの方角を起点として考えるのは無理だろう
⑦どこか一つの方角を目印としてカウントするのは無理だろう
⑧全員に共通の行動をとらせる

 【仮説】 
①、②、③、⑥、⑦の共通点から仮説を立ててみる。

どこか一つの方角を起点に考えてしまうと、②進めるか③戻るかの行動によって毎回観測結果が変わってしまうため、進めるを変化、戻るを現状維持という扱いで考えたい。その場合、方角を二つセットにして考えるとうまくいくだろう。例えば、東西南北を東と北、西と南のグループにわけてみると、現状のグループを維持したい場合は東↔北を行ったり来たりさせ、変化させたい場合は北→西、または東→南とすることで、西南グループへ変化させることができる。同様に、西南グループから変化させたくない場合は西↔南を行ったり来たりすることで現状維持できる。


6.5で立てた仮説は誰が実施すべき行動なのか考えてみる

の仮説で実施できる行動は、変化又は現状維持のみのため、おそらく、カウント役にいずれかの行動をさせ、その他22人はもう一方の行動をおこなわせるのであろう。となると、カウント役は変化を観測し、自分が石像の部屋に訪れた時にもとに戻すといった行動をとるのがベターだろう。



7.具体的にどのような行動をすればカウントできるか考えてみる

わかりやすく考えるために東西南北の2つのグループをスイッチのON/OFFに見立てて考えてみる。北東グループをスイッチOFF、南西グループをスイッチONとしたとき、カウント役はスイッチがONならカウントを1増やしてOFFにもどす、OFFだったらカウントは増やさずそのままOFFにしておく。囚人は自分が呼ばれたとき、OFFだったらOFF、ONだったらONにする。ただし、呼ばれたときにOFFだった場合の初回のみOFFからONに変える。この行動を続けることで、1人の囚人は一度だけOFFからONに変えるということになる。つまり、22人の囚人がいるので、22回OFFからONに変わるということになる。カウント役は石像の部屋に呼ばれるたびONからOFFに戻すので、22回ONの状態を確認すれば、すなわち自分以外のすべての囚人が呼ばれている状態ということがわかる。



8.一旦ここまでで立てた仮説や前提を書き出して、もう一度連想してみる

 【前提】※かっこ書きはそもそもの前提です
①どこか一つの方角をスタート地点としてなにかを数えるのは無理だろう
 (①石像は東西南北のいずれかを向いている)
②戻すか進めるかの二択を絶対にしなければならい
 (②「左に90度回転」という行動)
③戻すか進めるかの二択を絶対にしなければならい
 (③「右に90度回転」という行動)
④バイオレンス
 (④「壊す」という行動)
⑤人数少なくしても成り立つのか?
 (⑤囚人は全部で23人いる)
⑥どこか一つの方角を起点として考えるのは無理だろう
 (⑥自分も含め誰が最初によばれたかわからない)
⑦どこか一つの方角を目印としてカウントするのは無理だろう
 (⑦自分は何回よばれたかわかる)
⑧全員に共の通の行動をとらせる
 (⑧囚人は事前に会話して作戦を立てられる)

 【仮説】
で考えたルールに従って行動することで、囚人全員が石像の部屋によばれたことを確認できる。


ここで、そもそもの前提に立ち返ってみると、そもそもの前提の①と⑥の問題を解決しない限り、囚人が22人全員呼ばれたことを確認できないことがわかる。例えば、一番最初にスイッチがOFFの状態でスタートし、最初によばれた人がカウント役ではない囚人だと、スイッチをOFFからONに変えてしまい、これでは一番最初にONの状態でスタートし、最初の一人がカウント役だった場合と同じになってしまうからである。つまり最初の一人目のカウントがロストしてしまう可能性があるという問題が浮上する。



9.8で新たに発覚した問題に対して、具体的にどのように行動をとれば解決できるか考えてみる

まず、わかっていることを書き出してみる

 ➊囚人に7で考えたルールで行動してもらえば、全員が石像の部屋によ ばれたかどうかわかる。
 ➋ただし、最初の一人のカウントが漏れる可能性がある。

次に、この二つをより具体的にし、前提と照らし合わせて考えてみる

 ➊囚人にで考えたルールで行動してもらい、22回カウントできれば全員が石像の部屋によばれたことになる。
 ➋ただし、最初の一人のカウントが漏れる可能性があり、一人もれた場合はカウント役は21回しかカウントできない。
 ⑥自分も含め誰が最初によばれたかわからない

つまり、カウントが漏れる可能性があるのは、最初の一回のみであり、仮に囚人に必ず2回スイッチをONにするようにすれば、カウント役は44回または43回のカウントで、全員が石像の部屋によばれていることを把握できる。

カウントの方法は下記の2パータンが存在するが、どちらにおいても全員が石像の部屋によばれている状態である。

パターン⑴ 最初のカウントが漏れた場合
 →43回カウントすれば全員が2回ずつスイッチをONにしたことになるため、全員が石像の部屋によばれている。

パターン⑵ 最初のカウントが漏れない場合
 →43回カウントすれば、21人の囚人が2回スイッチをONにし、一人だけ、1回しかスイッチをONにしていない状態ではあるが、0回の囚人は存在しないため、全員が石像の部屋によばれていることになる。

QED



<まとめと裏技>

【まとめ】
解答までに何度も、わかっていることや仮説を書き出して連想を繰り返しましたが、この連想こそが抽象化や具体化といった行為です。そして、連想後に、再度、最初から連想しなおす(前提を疑ってみる)ことがクリティカルシンキングです。それらを繰り返すことで問題解決に至ることができます

【補足1:目的を忘れがち】
ここまで結構な文字量があり、途中で何してるんだっけ?となったと思います。なにかプロジェクトを進めているときも、いつの間にか目的を忘れてしまいブレブレになっているのをよく見かけます。そうならないようにするための手法とかも、そのうち記事にすると思いますが、個人的には、補足2のラテラルシンキングを極めることで、頭に余力を残し、目的を忘却しないようにするのが理想かなと思っています。


【補足2:ラテラルシンキングについて】
普段から連想を意識して知識を蓄えておくことで、問題解決時の意図的な連想が容易になり、それが、前提を考えてみる、ということのキャパを広げることに繋がります。簡単な例を書いておきます。

例えば、飲みに来ていて、手元にはグラスに入ったビールがあるとします。翌日、昨日何していたかを思い出そうとしたとき、酒飲んでた、ではなく、プレモルを飲んでいたと思い出すことがベストです。情報や記憶はなるべく具体的なものをインプットすることで、同時に抽象化した記憶も保持できることになりますし、具体的に覚えるという行為によって、意識していなかった付随する情報も記憶に残りやすくなります。

これらを日々訓練しておけば、ラテラルシンキングなんてものは勝手にできるようになります。(本当の天才には及びませんが、いい線まで行けるはずです。)


【裏技】
冒頭で、問題の規模を小さくして考えても解けないと説明しましたが、実は解けることもあります。この問題を考えるうえで、スイッチの考え方が重要になりますが、東西南北という4方向を3方向や2方向といったように、規模を縮小することで、スイッチという発想への近道になります。


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