鍋田知宏/TomohiroNabeta
物の関係性とICUの環境デザイン
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物の関係性とICUの環境デザイン

鍋田知宏/TomohiroNabeta

 前回は、デザインやデザイナーについてのお話しをしました。今回は「物の関係性」のお話をします。
このテーマは、私が大学院から前職を経て、私の人生にも及ぶテーマとなっています。
実際に私のデザインワークスでは、いつも「物」について考え、大学での私の講義や演習授業でも「物と物との関係性について」お話しをしています。

 私は常日頃から、全ての根源は「物」にあると考えデザインを行っています。私の師の受け売りですが、、

「もの」とは、とても良くできた日本語で、実態がある存在にも、実態がない存在にも充てる事ができます。
あたりまえですが、我々は日常において、無意識に多くの「物」という言葉を使い、「物」を扱い、「物」と関係をもって生活を行っています。

手に掴めるような小さな形も「物」と言いますし、椅子やテーブルのような置き家具も「物」と表します。さらには、巨大な建築も「建物(たてもの)」なんていうように「物」として表現されます。。我々は、そんな巨大な「物」の中や、それら「物と物との間」で日々生活をしているわけなんです。。

 進めますと、こんな言葉があります「物の怪(もののけ)」、妖怪や死霊、お化けなどの事を指します。
これらは、何かに対して、理由や意味が形を成した存在を表す物で、キチンとそれぞれに意味を伴った形が存在します。しかしながらその形には「重さ」がありません。あくまで想像の「物」なのです。

 さらに進めると、形も重さも持たない「物」もあります。我々が日常で使う言葉、、「物思う」とか、「物言えない気持ち」とかそういった感情や行為を表す「物」も存在します。形もなければ、重さもありません。もちろん、気持ちの上での「重さ」や「軽さ」は存在するとおもいますが、重量は、存在しません。

 さて、我々人間も「物」として表されます。「人物(じんぶつ)」という言葉があります。また得体の知れない存在に対し「何者?(なにもの)」とか、、怪しい人を「曲者(くせもの)」と表したり、、充てられた漢字は違いますが、同じ「もの」を表す言葉です。
人間も、約60兆個の細胞が集まった「物」として捉えられるわけです。
何が言いたいかというと、我々の世界や日々は、全て、物と物との関係性から成り立っているという事なんです。

小さな道具や家具も「物」であり、人を取り巻く建築も「物」、、
その中で活動する人間も「物」であるという事。
さらには、重さを持たない「気持ち」や「感情」「行為」も、「物」
光や、音や匂い(臭い)までも「物」として捉えていいかもしれません。

デザインとは、これら全ての「物」と「物」との関係性を探ったり、手繰ったり、発見したり、操作したり、、、する事なのです。

 では、ICUの環境デザインについて改めて見てみると、、、

 先だっての考え方からして、ICU内には様々な「物」が溢れています。
道具医療機器収納デスクカウンター、ベッドなど。
床壁天井、サイン、光や音や臭い、匂い、動線、諸室の位置関係、個室の開口、、そして患者や家族、スタッフなどに至るまで、本当に多くの「物」が存在し、それぞれが関係を結びながら日々運営されています。
ICU内外にある全ての「物」の関係性がとても大切なのです。

 しかし、例えば住宅の設計のように、多くの建築家やデザイナーやメーカー、メディアによって、その「物と物との関係性」が取り上げられたり、取り組まれたり、、実践されたり、、、共有されたりといった事があまり無いまま現在に至るのがICU環境だと思っています。

それぞれの「物」の関係性が検討されないまま、それぞれがそこに設置され、可動される。

実際に新築でも、改築でも、、後になって様々な問題が噴出するのは、そういった関係性を見落としたり検討されないまま進んでいく事が、とても大きな要因となってくるのではないでしょうか。
その根本には、また別の回にお話しをしますが、コミュニケーションの問題も多くあったりします。これも関係性の問題ですが、、、。

 ICU環境は、日常の生活環境ではありませんし、とても特殊な環境でもあります。住宅や一般のオフィスとも違いますが、そこで働くスタッフの方々にとっては、自宅にいるよりも長い時間を過ごす環境となるわけです。
そして、患者からしてみたら、日常から急に隔離されて一定期間過ごす環境となり、家族から見たら、短い時間ですが、お見舞いや、場合によっては、お別れをする環境となったりします。

そういった特殊ながらにも、そこに関係する人々が、どのように空間機械道具などと関係を持ち、さらには、スタッフ患者患者家族スタッフ家族スタッフスタッフといった関係が、どのようにあるのか?

そういった「物」たちが発する「関係性」という言葉に耳を傾けて、探ったり、手繰ったり、発見したり、操作したり、、、嬉しい、や悲しい、、気持ち良いなどをどのように導いていくのか?

全ては「物と物との関係性」がとても大切であるという事、それは、ICU環境も然りと思うのです。


次回は「デザイナーがICUの環境作りに関わるという事」のお話しをします。


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鍋田知宏/TomohiroNabeta
長野県佐久市望月で田舎暮らしを始め6年。 環境や製品開発、地域の活性化など、医療、看護、介護の視点からデザインやコンサルティングを行っています。