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平均寿命を予測するのに適した曲線は? -JMPの「曲線のあてはめ」を利用して-

増川 直裕

■今後の平均寿命を予測するには

下のグラフは、男性、女性別に平均寿命を示したものです。

データの出典:図表1-2-1 平均寿命の推移|令和2年版厚生労働白書-令和時代の社会保障と働き方を考える-|厚生労働省 (mhlw.go.jp)
 
平均寿命は、男性、女性とも年ごとに上昇しており、2019年では、女性87.45歳、男性81.41歳となっています。
本ブログでは、年と平均寿命の関係を示すモデルをあてはめ、今後の平均寿命を予測することを考えてみます。
 
プロットされている点を眺めてみると、直線的に増加しているというよりは、曲線的に増加している印象を受けます。そのため曲線のモデルをあてはめるのが良さそうですが、どのような曲線をあてはめるのが良いでしょうか?
 
世の中には、曲線的に変化していく現象が多くみられますが、それらの曲線的現象は非線形な理論式で説明できることがあります。このように理論式が分かっている場合は、その式をデータにあてはめれば良いのですが、理論式が分からないときは、データに考えられる曲線をいろいろあてはめてみて、あてはまりの様子を考察するのが良いでしょう。


■平均寿命データに、さまざまな曲線をあてはめ

JMPでは、「曲線のあてはめ」という機能があり、JMPで用意しているさまざまな曲線をあてはめ、あてはまりの良さを比較できます。
 
以下が、あてはめられるモデルの一覧です。ここでは、上記の平均寿命データに、ロジスティック3P, 4P、 Gompertz 3P, 4P の4つのモデルを同時にあてはめてみます。(3Pや4Pは、それぞれ推定するパラメータの数が3つ、4つであることを示しています。)

あてはめることができるモデルの詳細(グラフ、式など)は、JMPのマニュアルに掲載しています。
「曲線のあてはめ」プラットフォームの統計的詳細 (jmp.com)
 

■モデルの比較

4つのモデルがあてはめられると、次のように「モデルの比較」のレポートが表示されます。

このレポートでは、適合度統計量としてAICc (小さい標本サイズのときを考慮してAICを調整した統計量)が小さい順に上から下へとモデルが並べられています。AICcは値が小さい方があてはまりが良いと解釈するので、上にあるモデルほどあてはまりが良いことになります。この例では、Gompertz 3P モデルが、他の3つのモデルと比較して、最も良いモデルということになります。
 
そのため、「Gompertz 3P」のレポートを参照すると、モデル式や、パラメータ推定値、プロット点にモデルをあてはめたグラフなどが表示されます。グラフを参照すると、女性(赤色)、男性(青色)ともに、データに良くあてはまっていることがわかります。

ここであてはめた Gompertz 3Pは、3つのパラメータをもつ”ゴンペルツ曲線”という曲線です。ゴンペルツ曲線は、成長曲線ともいわれ、最初の時点では増加率が高く、後の方の時点になると増加率が減少していく現象を表すときに用いられる曲線です。今回取り上げた寿命のデータも、1990年あたりまでは平均寿命がどんどん上昇していき、それ以降は若干鈍化しており、今後の伸びはさらに鈍化すると予想されるので、ゴンペルツ曲線が示す特性に合っているともいえるでしょう。

■将来の平均寿命を予測

このあてはめた曲線をもとに、2040年の女性、男性の平均寿命を予測してみます。
 
JMPでは、予測プロファイルを用いて、横軸の年を”2040”に、性別を”女性”、”男性”に設定すると、2040年における性別ごとの平均寿命の予測値が表示されます。

Gompertz 3Pモデルを用いた2040年の平均寿命は、女性89.85歳、男性83.48歳です。この予測値は、先に示した厚生労働省のページに記載されている2040年における将来推計にある女性89.63歳、男性83.27歳と近い値になっています。

男性、女性とも、およそ20年後には、平均寿命は2歳ほど伸びることが予想されるのです。それは人類の進歩なのかもしれませんが、出生率が急激に増加しない限り、さらなる高齢化が進むことになりそうです。

■ JMPについて
JMP(ジャンプ)は世界中のエンジニア、データアナリストに選ばれているインタラクティブで可視的なデータ分析ツールです。

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