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【疾患センター解説】患者の生活を思い、血糖コントロールと合併症予防に取り組む 糖尿病センター

国内の有病者と予備群を合わせると1,000万人に達するといわれる糖尿病。血糖コントロールのみならず、合併症の予防・治療も重要です。

※『病院の選び方2023 疾患センター&専門外来』(2023年3月発行)から転載

糖尿病センターとは、糖尿病とその合併症に対し、複数の診療科が連携し、患者の全身状態を考慮した治療を実践

糖尿病にとどまらず合併症の治療も重要

そこで、糖尿病・代謝内科と眼科、循環器内科、脳神経内科、形成外科などが協力し、連携をとっています。実際に受診される患者さんにとってのメリットとしては、診療科間の情報共有がスムーズである点が挙げられます。

例えば糖尿病の合併症のひとつに、網膜症という眼の病気があります。糖尿病性網膜症は初期では症状がなく、視力低下や視野が狭くなるといった症状が出た段階では、かなり進行しています。ですが、内科と眼科が密に連携をとっていれば、合併症の状況についても把握しやすくなります。

腎臓や神経、血管、足などの合併症についても同様のことがいえるでしょう。患者さんがご自身の全身状態を理解しやすくなります。

腎臓の合併症である糖尿病性腎症が進行した際の血液透析や腹膜透析、足の壊疽、高齢者の肺炎などの治療や入院については、糖尿病・代謝内科内で対応しています。患者さんにとっては、内科の主治医が変わらないまま診療を受けられるというメリットもあります。

糖尿病とは、インスリンが十分に機能せず、血液中の糖が増えてしまい、全身にさまざまな影響が出ます

高血糖状態により全身の血管が傷ついていく

糖尿病は血糖をコントロールしているインスリンというホルモンが十分に機能しなくなり、血糖値が高くなる疾患です。高血糖の状態が続くと、全身の血管が傷つき、さまざまな合併症が生じます。

糖尿病は1型、2型、その他の特定の機序・疾患によるもの、さらに妊娠糖尿病の4種類に分かれます。1型糖尿病は膵臓からインスリンが分泌されなくなってしまうもので、小児やヤング(若年層)の患者さんが多いです。

2型糖尿病は、インスリンが分泌されているものの、働きが悪かったり、分泌量が減少したりする病態です。患者さんの9割以上を占めています。生活習慣や遺伝的要因が発症に関わっているとされています。

例えば当院の糖尿病・代謝内科には小児・ヤングの1型患者さんを専門とする内科医も在籍しており、1型のお子さんから2型の100歳を超えたお年寄りまで、幅広い年代の患者さんを診ています。

持続的に皮下へインスリンを注入するインスリンポンプ療法に取り組んだり、1型の小児患者さんが学校に通いやすいように、土曜日や早朝に外来診療を行っています。また成人後も生涯にわたりサポートを続けていきます。

糖尿病は完治することが難しい病気なので、1型・2型を問わず、何十年と通院する患者さんが多くなります。

治療法について、医師、看護師、管理栄養士などがチームで生活指導を行います

多職種チームが血糖コントロールをサポート

血糖コントロールが良好な患者さんに関しては食事療法や運動療法を中心に行い、不十分な場合に内服薬やインスリンなどの薬物療法を実施します。

糖尿病・代謝内科は患者さんの生活を支えるチーム医療体制が整っています。医師、看護師、管理栄養士、検査技師などの多職種からなるチーム医療を実践しています。

医師が診察を行って患者さんの状態を確かめ、看護師がインスリン治療のやり方やご自分での血糖の測り方などの療養指導を、管理栄養士が栄養指導を行うといった役割分担をしています。

また日本糖尿病療養指導士(CDEJ)という資格を持った看護師や管理栄養士などのメディカル・スタッフもいます。生活指導のエキスパートとして、特に血糖コントロールが困難な患者さんをサポートしています。

行政と連携した糖尿病性腎症重症化予防プログラムの一環として、医師と管理栄養士、看護師が、外来患者さんに指導をするケースもあります。プログラム中は3職種のカンファレンスを行い、指導について話し合います。

血糖コントロールが安定していない患者さんには外来受診時に何回も繰り返し、お話をします。そのためコミュニケーションがかなり重要になります。また、普段の様子をご家族から聞くことも大切です。

眼の疾患や心臓病、脳卒中などのさまざまな合併症は、眼科、循環器内科、脳神経内科などと連携して治療します。


東京女子医科大学内科学講座 糖尿病・代謝内科学分野 教授・基幹分野長
馬場園 哲也 (ばばぞの・てつや)

1983年、広島大学医学部卒業。東京女子医科大学助手、講師、准教授を経て、2017年より現職。日本糖尿病学会理事。