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「悪い私」を抱きしめるために

こんにちは、noteコーディネーターの玉岡です。
本日紹介する書籍はこちら!

本書では「内的家族システム」(Internal Family System)という概念を紐解いていきます。
IFSとは端的に言えば「心を扱うスキーム」であり、セラピーです。
40年に近い歴史を持ち、心理療法のひとつとして臨床の現場で発展を遂げてきました。
目次構成はこちら。多くの「エクササイズ」が目を惹きますね。


第1部 内的家族システム
第1章 私たちはみんな多重人格
 エクササイズ(1) 防衛パーツを理解する
 エクササイズ(2) パーツマッピング(パーツの地図を描く)
第2章 パーツがブレンドする理由
 エクササイズ(3) ブレンドを解除してセルフに立ち帰る
第3章 これがすべてを変える
 エクササイズ(4) 内的葛藤を扱う瞑想
 エクササイズ(5) 難しい防衛パーツに取り組んでみる
第4章 システムの詳細
 エクササイズ(6) 毎日のIFS瞑想
第5章 私たちの内なるシステムを見える化する

第2部 セルフ・リーダーシップ
第6章 癒しと変容
 エクササイズ(7) 道の瞑想
 エクササイズ(8) ブレンド解除を通してセルフにアクセスする
第7章 行動する「セルフ」
第8章 ビジョンと目的
 エクササイズ(9) 消防訓練
 エクササイズ(10) 悲しむ人の瞑想

第3部 身体の中のセルフ、世界の中のセルフ
第9章 人生の教訓とトーメンター
 エクササイズ(11) パーツマッピング(上級編)
 エクササイズ(12) 「強い感情的な反応」に対処する
第10章 内なる物理の法則
 エクササイズ(13) 防衛パーツとワークする(上級編)
第11章 セルフを体現すること ~セルフとして身体の中にいること~
 エクササイズ(14) 身体の瞑想


「パーツ」としてのさまざまな私

IFSは「複数の心」=「複数の人格」を前提にします。
例えば、次のようなケース。

・よくないとわかっていながら、ついやるべきでないことをしてしまう
・温和な家庭を望んでいるのに、ついパートナーに厳しくあたってしまう

こうしたアンビバレントな心の動きを理解し、受け入れるための方法がIFSです。その鍵となる概念が「パーツ」です。パーツをペルソナと言い換えてもいいかもしれません。

IFSは、相反する「私」を受容し、内面をインテグレートするためのアプローチです。そのためには、相反する私を「個別の私=パーツ」として設定します。

第1章では2つのエクササイズがあります。
その一つが「防衛パーツを理解する」。
詳細はぜひ本書から確認してほしいと思いますが、このエクササイズのポイントは次の一文です。

多くの伝統的なアプローチでは、それらを単にとりとめのない思考や感情、またはエゴとみなし、 ただ観察するだけです。 しかしこのプロセスでは、あなたは観察している対象にしっかりと向きあい、 旺盛な好奇心を持ち、 「それ」 と新しい関係を築きはじめるのです。 理想的には、その関係をさらに深めていくことで、あなたがそんなふうに接してくれることを、 パーツたちが喜んでくれるようになるのです。

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ブレンドされるパーツ達

第2章では、自己を構成するさまざまなパーツがブレンドされる状態を解説します。良い私、悪い私といったふうに自己分析されやすい心の有り様は、本書では「パーツ」として設定されています。複数のパーツが混ざり合って人格を形成するわけですが、「パーツについて知っておきたい5つのこと」では、「悪いパーツ」を次のように説明します。

悪いパーツは存在しないとしたら、どんなパーツがあるのでしょうか?

エグザイル、管理者、消防士のパーツ

パーツにはいくつかのタイプがあります。
フロイトにおける元型のように、本書には「エグザイル」「管理者」「消防士」という代表的なパーツが登場します。その詳細は第5章で語られており、大まかに述べるならエグザイル=トラウマを持つパーツ、管理者=平時においてエグザイルをコントロールするパーツ、消防士=有事においてエグザイルをコントロールするパーツ、ということになるでしょうか。
こうした各パーツがブレンドされ、止揚することで人は「セルフ・リーダーシップ」を獲得する、と本書は続きます。

悪い私を受け入れるために

第8章からは、自分のうちにあるさまざまなパーツの「関係性」を把握し、自分で自分の心の運動を統御するリーダーシップを磨くための方法が語られていきます。
ここからが、本書のタイトルにもある「悪い私」を再定義していくためのパートと言えるでしょう。
その詳細を、ぜひ書籍で確認していってみてください。

目次にも記載したとおり、本書には14にわたるエクササイズが掲載されています。臨床心理に接する書籍なので、一見すると内容が難解で距離を感じるかもしれません。
けれど、まず「はじめに」を読み、第一部でパーツ概念に触れたうえで巻末のエクササイズ集を読むと、本書の概要とその内容への興味が増してくると思います。
人間である以上、私たちはつねに自分で自分を苛んでしまうことから避けられません。その際に、適切に心を動かし「悪い私」を受容するための方法が本書には収められています。

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