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失敗の科学 (著: マシュー・サイド / 訳: 有枝春)

2016年に発表された、とても読み易く、分かり易い優れた本です。
冒頭からサスペンス小説のような緊張感で、内容にぐいぐい引き込まれていきます。正直、もっと早く読んでおけばよかったと後悔。

邦題:「失敗の科学

この邦訳タイトルと紹介文に魅せられました。

失敗の科学
著 | マシュー・サイド
訳 | 有枝春

商品説明
なぜ、「10人に1人が医療ミス」の実態は改善されないのか?
なぜ、燃料切れで墜落したパイロットは警告を「無視」したのか?
なぜ、検察はDNA鑑定で無実でも「有罪」と言い張るのか?
オックスフォード大を首席で卒業した異才のジャーナリストが、医療業界、航空業界、グローバル企業、プロスポーツリームなど、あらゆる業界を横断し、失敗の構造を解き明かす!

(出版社のHP:https://d21.co.jp/book/detail/978-4-7993-2023-5 より転載)


いきなり「失敗の科学」という表現ですよ。

「失敗」って、ネガティブな印象がありませんか?
それをタイトルの冒頭にもってくる大胆さ。しかも「科学」とは!

「えっ、何々???」

読み進めていくと、次から次に詳細なエビデンスをベースにした医療事故、航空機事故、冤罪事件の検証。

その道の専門家でなくてもわかり易い分析と検証。まさに科学です。

最初、わたしは「失敗の原因を追求して、失敗を避けるための方法を科学する」ための書だと思ったのですが、実はこれは半分しか合っていません。

「失敗」は必ずしもネガティブなものではなく、進歩発展のためには

「してもいい」ではなく「欠かせない」

(本書:「第6章 究極の成果をもたらすマインドセット」より)

ものですので、失敗を直ちに「ネガティブ」と感じるような感性を持った、まさに私のような人間を啓蒙する書であったわけです。

仕事柄、いかにミスをなくすかということを日々追求する立場にいて(それはそれで大事なのですが)、ミスに対する考え方、取り組み方については大いに反省すべき点、改善すべき点があったと思い知らされました。

何のためにミスを減らそうとしているのか?を考えたら、どういう判断をしなければならないのかは明白なのに、

脳は一番「直感的」な結論を出す

(本書:「第5章「犯人探し」バイアスとの闘い」より)

に、嵌っている自分に気付かされました。


それはともかく、興味深いのは、原書のタイトルと紹介文です。

原題:Black Box Thinking: The Surprising Truth About Success


、、、んんっ?

直訳:『ブラック・ボックス思考;成功に関する脅威の真実』

なんかめっちゃ、ポジティブやん。

From the Back Cover
What links the Mercedes Formula One team with Google? What is the connection between Dave Brailsford's Team Sky and the aviation industry?
What links the inventor James Dyson and the basketball player Michael Jordan? They are all Black Box Thinkers.
Whether developing a new product, honing a core skill or just trying to get a critical decision right, Black Box Thinkers aren't afraid to face up to mistakes. In fact, Black Box Thinkers see failure as the very best way to learn. Rather than denying their mistakes, blaming others, or attempting to spin their way out of trouble, these institutions and individuals interrogate errors as part of their future strategy for success. How many of us, hand on heart, can say that we have such a healthy relationship with failure?
Learning from failure has the status of a cliché, but this book reveals the astonishing story behind the most powerful method of learning known to mankind, and reveals the arsenal of techniques wielded by some of the world's most innovative organizations. It also reveals the dangers of failing to learn from mistakes. In healthcare, hundreds of thousands of patients die from preventable medical errors every year due to a chronic lack of Black Box Thinking.
Using gripping case studies, exclusive interviews and really practical takeaways, Matthew Syed - theaward-winning journalist and best-selling author of Bounce - explains how to turn failure into success, and shows us how we can all become better Black Box Thinkers.

(原書背表紙の解説文より)

ざっくり要約すると、「成功は、失敗から学ぶブラック・ボックス思考を実践することによって実現する」って感じではないかと。

ここで強調されていると感じたのは、「この本を読むことによって自分は何を得られるか」がストレートに述べられていることです。

うーん、成る程。

でも、、、もしこのまま邦訳されてたら、私は果たして手に取ったかと言われれば、、、他のビジネス解説本の紹介文との差異が分かりにくくなって、、、正直、見過ごしていたかも。


「失敗の科学」
私的に、これは見事な意訳。
日本語タイトルと紹介文は簡潔明瞭で、少なくとも私にはドストライクでした。正に、この本を読むべき人に向けて仕掛けられたトラップでしたね。

、、、あまり役に立ちそうもない、極く個人的な感想でした。

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まだ読まれてない方は、是非ご一読ください。


ここまで読んでくださって、ありがとうございました。


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