『夏の思い出』
海岸線に積まれた死体は
解体されずに取り残された
縦書きのコンクリート
熱気を帯びず
寒さに震えず
俯くことなく
見上げることなく
ただ そこにある
逃げ後れた一筋の足跡が
潮風に擦れてキリキリと
声を上げても
乾いた温度の指先は
椰子の間をすり抜けて
林の中に捨てられるだけ
ここは、あの日泳いだ海
あひるがいない
恐竜もいない
破裂した発泡スチロールのように
静かで 遠い海
雲なのか 空なのか
砂浜なのか わからない
いびつな形の灰色の海
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