🍎⊲⊰━さくらいろ━≪³☪︎₂

映画と酒と詩とディズニー。 トルーマン・カポーティになりたい。

🍎⊲⊰━さくらいろ━≪³☪︎₂

映画と酒と詩とディズニー。 トルーマン・カポーティになりたい。

マガジン

最近の記事

「帰り道」

透き通った水色 木の枝の隙間から 橙色と混ざり合う 飲み込んだ 風 足音 空気の揺らぎ ひび割れた空で 全部 夕陽に変わって 無くなった 空はまだ遠くに見えて 見上げても 見上げても 夕焼けだった

    • 「26歳生まれ」

      生まれた時の私は一本の線でした。26歳でした。 感情は撒き散らかされたペンキの色でしかありませんでした。笑うことも泣くことも、辺り一面をのっぺりと汚すだけの作業でした。そしてまた、冷たい身体が廃棄された時は無色透明のプラスチックのように不快でした。 不快感の正体は私です。 わたしの肉体、わたしの心、わたしの声、わたしの臓器、わたしの全てが一本に繋がって、はっきりとした形で生々しく落ちているという事実だけが不快です。 27歳の誕生日、わたしは三次元にはなれませんでした

      • 「ループする」

        時計の針を逆さに回して 世界が無限にループする 私の体は誰かのからだ 私の言葉はわたしのことば 私の元から離れたことばは 見たこともない他人みたいだ わたしは言葉で生きている 薄橙の容は感情を発露するための道具なのです 私はわたしで言葉だけ 心臓の音だけがわたしの言葉だ 灰になっても変わらない いつまでわたしの人生なんだ

        • 「お願い」

          どうかお願い、静かにしていて むせ返るような夏の空気に閉じ込められて、 鼓動、声、呼吸、血液、無意識に、迸る 無機質に光る天井は遠くに揺れる夜景のようで、 手を伸ばしても届かない、理想の姿、理想の私 脳内がネオンサインのように才気走り、 くるくると止まらず回る被害妄想、 更けていく夜を吸い込んでいく 見えない目で見つめていても、 きっと心は空っぽのまま 夜の雫がぽたぽた垂れて、 波紋のように染み渡るだけ 夜の光も雨音も、全部嫌いだ、大っ嫌いだ どうかお願い、静かに

        マガジン

        • 映画の感想
          0本
        • 16本
        • 『夢の中』
          0本

        記事

          「私の体、私の心で。」

          当事者意識と被害者意識の狭間から お前の中身を解析したい お前の目で世界を見つめて 地球の大きさにため息をついてやりたい 私には私の体がある それでも(だからこそ)私には 永遠に届かない(眩く反射する) 愛情は青空だ(目眩がする) (私にとって)愛情は(もはや)青空でしかない

          「風に乗せて」

          振り向く度、揺れる前髪。 胸の鼓動と重なった。 怪訝な顔も、不機嫌な声も、 春の香りがいたずらするから、 ほんのり甘い桜色。 青く濁った世界にこぼして、 空と地面を繋げたい。 さあ、風よ。届けておくれ。 桜の花びら、あなたのもとへ。

          「Q」

          「Q」という字を手に入れました。 水でした。明かりでした。 さらさらと風の間をすり抜けて、 わたしのもとへ届きました。 もう残飯には興味がありません。 冷蔵庫へ押し込めば、 脳みその下に落ちていきます。 il pleut, il pleut, 穴が空いた手のひらでは、 言葉の全てを受け止められません。 わたしには、聞くための耳があります。 わたしには、見るための目があります。

          「性に関する覚書」

          結んだ髪を解いたら 夕暮れの先まで飛んでいけ わたしの声は もっと遠くで、もっと自由になる 女の子は誰でも、 綿あめみたいにくるくる回して、 雲に向かって飛んでいけばいいんだよ。 見えなくなるまで遠くに行けば 空みたいに青くなれるし、 窓を叩く雨音は、 いつだって空から降ってくる蜂蜜みたいだ。 もしもわたしの体が、 いつまでもわたしの体なら 性別なんて脱ぎ捨ててやる。 もしもわたしが性別を持って生まれたのなら、 きっと神様から愛されなかったに違いない。

          「破裂する」

          風が強く吹いたら、 わたしだって世界からいなくなりたい。 空から降ってくる ざらついた感触の空気を 傷口に押し付けて、小さくうずくまっている。 逃げるように耳を塞げば、 時計の針が無機質なリズムですれ違う音。 だんだんと大きくなって近づいてきた。 金属板をこり擦り合わせたように不快で、生々しい。 月が空から落ちてきたら、きっと血まみれのわたしがいる。 剥き出しの太陽の前に立って、バラバラになった破片を持ったら、 どくどくと血液が巡る心臓と一緒に投げ捨ててやる。 冬は凶器だ

          「クリスマスの思い出」

          午前2時 真夜中の空を見上げてみれば きらきらひかる ドライフルーツ さらさらと 雪に変わって落ちてきた びっしりと隙間がないよう 敷き詰めて シナモンシュガーを振りまけば 特別な夜が走り出す すれ違う人たちは くすくす笑うジンジャーブレッド フルーツの上で転ぶから 月の光を薄く伸ばして 生クリームの散歩道 フルーツの上に横たえる いつものパジャマを準備して ポケットに鈴を忍ばせて 赤と緑のライトを灯せば 秘密の時間は終わらずに わたしだけの夜 胸いっぱいに輝いてい

          「螺旋階段」

          血液はいつもと変わらず体を巡る 空っぽになったお腹の中に 私の声が虚しく響いた 傷ひとつ無い真っ白な部屋で壁紙を剥がしても 指先から悔しさが零れるだけ 笑えない冗談をどれだけ聞いたって きみのことを嫌いになるだけ でこぼこの無い平坦な体を辿ると 後悔の無い現実を嘔吐した形跡が散らばっていた 躓かないように気をつけて歩こう チクタクと ねじれていく時間の中にきみを隠して

          「夜がくる前に」

          立ち止まり 振り返れば 人ごみの中 茜色 なだらかに傾いて 薄明かりの下に注がれる 太陽はやがて消えていき ぽつぽつと 世界の底に夜が灯り始める 夕焼けはビルの隙間をすり抜けて あなたのもとへ 誰かのもとへ 届けられた 私はここで目を瞑る ひそひそ話す 小さな声が 夜に連れられて大きくなると 誰の記憶にも残らず 空まで届いて星になった 私はもう 誰にも見えない 私はもう この世界にはいないのだ

          『銀杏並木』

          秋の入り口で 銀杏並木がさらさら揺れる ひらひら落ちる黄色い葉っぱは あたたかい文字 優しい言葉 人混みをすり抜けて まばらな形の足跡になった 一足 一足 積み重ねると 秋の絨毯 あたたかくて 柔らかい 街の灯りに照らされていても 風は通り過ぎていくけれど わたしには聞こえるよ 秋の足音 話し声

          『小さく回りながら』

          首筋を流れる血液が 顔にかかった泥を拭うと 胃袋で飛び跳ねた黒猫は 身体中に鐘の音を響かせる 夕暮れは心臓の下には潜っていけず 堰を切ったように太陽の光が反射する 静かにしていてくれ もう一歩も出られないんだ 一滴の汗が波紋のように広がると くるくる回るスカートのような模様になった 青い光が走り回る街並みを眺めると 氷のように冷たくなった肩幅を見上げていた 何も知らずに 俯いた街角は 耳元でカラーパレットを押し付けたような 金切り声を浴びながら 小さな吐息

          『ブラックアウト』

          静けさが黒く響くと 心臓は 寂しさの中に溶けていく 道端に捨てられた空は 灰に覆われて コンクリートの湿ったにおいが オイルに塗れた貝殻のように 鼻をさす 私は声を押し殺し 真っ黒な目で落ちてくる夜を 眺めながら ただつぶされるのを待っている 斑模様の谷底には誰もいない 星なんかどこにも見えない 海には入る隙間があっても 雲には隙間なく びっしりと夜が敷き詰められている

          『夜のお仕事』

          言葉たちがざわつく 36.5℃の砂浜では 子どもたちが行くあてもなく 足跡をつける 何も見えない海の底では 帰り道も分からず ひたすらベッドの上に 横たわる 白い太陽が邪魔だから 私は 水の中から起き上がる 私には はっきりと見える 私には はっきりと見える