桜

春を待ちわびる

とりあえず

桜の葉をロックグラスに入れ、
ズブロッカを注いで同量の炭酸水で割る。

これだけ書いておけばいいかな。



あ、写真はこちらから。
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#創作 #春を待ちわびる #カクテル

*写真はありません。撮る前に全部呑んでしまいました。
*以下、蛇足。




「はいこれ引越し祝いと、こっちが結婚祝い。安もんで悪いけどな」

そう言って奴が差し出してきたのは、菓子店の名前入りの包みと……風呂敷?
「あ、ありがとう……なにこれ?」

「あ、中身?桜餅。やっぱ和菓子は季節が重要だよなー。そっちは酒。飲むだろ?」
「酒か……空けちゃえばいいか」
「なに、かみさんダメなの?つか今いないの?」
「……ああ、ちょっとね。ま、入れよ」
「そっか、顔見に来たのになーご新造さんの。おじゃましまーす。細君の留守に」
「なに笑ってんだよ」
「べつにー」

「桜餅とはどうかと思ったけど、意外と合うなこれ」
「自分で持ってきといてそれかよ。風呂敷包みに酒だって言うから、日本酒かと思ったんだけどなあ」

 こいつと付き合うようになって何年だっけ?彼女と一緒に住んで籍を入れる、と連絡をしたら、「じゃあお祝いしなきゃな」なんて今日来てくれたんだが時々ずれたところがある。わざわざ風呂敷に包んで持ってきたのは、瓶の中に何か植物を漬け込んである、透明な洋酒だった。草?

「酒ダメなのに炭酸とか常備してんだな」
「別に炭酸は酒割る用限定じゃねえよ」
「そりゃそうだけど……普通に飲むの?」
「俺はあんまり飲まないけど」
「あ、奥さん?」
「ああ、酒がわりにって」
「禁酒でもしてんの?おめでた?」
「うん、ああ違う違う」
「どっちだよ」
「禁酒だけど、おめでたは違う。昔、酒で体壊しちゃってひどかったらしい。今は、匂いくらいなら大丈夫らしいけど」
「らしいらしいって、あてになんねーなー。自分の嫁さんだろ?」
「はいはいマイワイフのことでございます。仕方ないだろー出会う前のことなんだから」

「でも大変だなー色々と。一人っ子同士だろ?」
「なんとかなるよ。……そのうち」
「そうかー頑張れよー子育て」
「まだ出来てもねえよ」
「男の子二人だろ?そこを最低ラインとして……あ、双子でよくね?」
「よくね?って狙ってできないだろ双子。最初は女の子がいいなあ」
「跡取だよ両家の。お前ら二人で四人介護とか無理だろ」
「だからって、手伝わせるための子作りとかしねえよ」

「じゃない子作りはしてんだ」
「してないとは言わないけど、結婚してんだからいいだろ。そういう話しないぞ俺」
「いやそういうんじゃなくてさ、作るつもりでも出来ないとかあるじゃん。欲しくてもさ」
「ああ、中にはいるだろうねそういう人も。でも、いちいち他の人に聞いて回らないし、聞く機会ないよなあ」
「で、お前はどうなの?種無し?」
「聞き方にいちいち品がないんだよ。出来てみないとわからないだろそんなこと」
「いや、不妊の原因って男にもあるって話、ネットで見たからさ」
「お前好きだなネットで見たとか。最近そうなの?昔は石女とか言わなかったっけ?」
「最近っていうか、実際はずっとだろ多分。昔は女の人にだけ原因が、って言われてただけで」
「なるほど。でも出来てみないとわかんないし」
「今はそうでもなくて、そういう検査もできるらしいよ。病院で」
「え?なに勧誘?そういう仕事?」
「違うけどさ、男のほうも、原因が自分にあるって認めたくないってのがあるからな。もし子供欲しいなら、そういうのも考えといたほうがいいんじゃない?ってこと。御内儀と、そういう話してる?」
「いや特にはしてない。愚妻とは」
「お前それ本人の前では言うなよ?怒らせると怖いぞー山の神
「実感こもってるな。うん気をつける。そう言うけどさ、自分はどうなんだよ?」

「うちはあんまり……いらないとは言わないけど、出来ないならなくてもいいかって、二人でさ」
「ずるくね?なんだよ人にはさんざん言っといて。ま、妊娠してもわからないだろうけどなあの嚊左衛門じゃ 」
「そこがいいんだよ。なんか安心するんだよねーぷにぷに柔らかくてさー」
「そのへんはよくわかんないけど、今のは悪かった。ごめん。」
「いやいいけど。桜餅、残しといたほうがいいな。その葉っぱ貰っていい?」
「別にいいけどさ、つまみ欲しいならなんか作るよ。そろそろ帰ってくるだろうし家内も」

「ただいまー。あらいらっしゃい、初めまして。A1ののXYZでございます」
「ご丁寧にありがとうございます、○△✖です」
「お一人なんですね。お夕飯、食べてってくださいね」
家妻も一緒に来るつもりだったんだけど、ちょっと……あ、ありがとうございます頂きます」
「どしたの御内室
「ちょっと病院にね」
「どっか悪いの?大丈夫?」
「あ、いや別にどっか悪いってわけでも……ほら!」
「いや俺はもういいよ酒は」


「あ、お酒飲んでるんならおつまみの方が良かったかな?」
「いやもう終わるから、普通にご飯でいいよ」


「俺の好みから外れるけど、やっぱいいなー家桜。そういう何でもない会話もさあ」
「お前だって、家に帰れば普通にやってるだろ?」
「そうだけど、人のを聞くとまた違うんだよなー。あ、飯食ったらすぐ帰るから」
「別にいいよゆっくりしていけよ。令閨が気になる?」
「それもあるけどさ、ほら、ぐっと空けて」
「そういやこの草なんなの?瓶の中に漬け込んであるやつ。牛の餌?」
「バイソングラス。滋養強壮にいいんだよ。あと精力……」

「はーいお待ちどうさま、できましたよー」
「来た来た。ほら、机の上片付けて」
「うわ、こりゃご馳走だ。うまそー」
「おかわりありますから、遠慮しないで仰ってくださいね」
「ありがとうございます。こいつ相手じゃ毎日大変でしょ?よく昔っから、店で食べては料理に文句言っててね」

「あら、家ではそんなこと一回もありませんでしたよ」
「そりゃだって、店は金取ってるんだから言ってもいいだろ。別にそれでまけさせようとかでもないし」
「なによ、家ではお金払わないから言わないの?」
「そういうわけじゃないよ。別に不満はないし、毎日おいしく食べてるよ」
「でもあんまり料理の感想って言ってくれないから、もしかしたら嫌いなも
だったかもとか、口に合わなかったのかとか、いろいろ考えて……」
「おっと食べる前にごちそうさまを言わせる作戦か?」
「そういうんじゃないって……さ、食べよう」


「「「いただきまーす」」」


ならざきむつろ@noteイベント部さん企画
3月マンスリーイベント『春を待ちわびる。』参加作品
https://note.mu/note_eventclub/n/n3de245aa315c

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