見出し画像

インド「国立近代美術館」にて見た、日本とインドの深い関係性

インディラ・ガンディー国際空港から車で1時間、政府機関などが周りに集まり、インドの中ではかなり綺麗な環境下にある、ニューデリーの「国立近代美術館」に行ってきました。
▼National Gallery of Modern Art▼
http://ngmaindia.gov.in/sh-european-india.asp

インド独立前の最も重要な活動家かつ芸術家であり、アジアで初めてノーベル文学賞を受賞したラビンドラナート・タゴール(以下、タゴール)の功績を讃え、展示がなされているこの美術館では、インドの近代史の説明文とともに、タゴールのものも含めたアート作品が4つの時期で階ごとに陳列されています。ムガル帝国時代、ヨーロッパ(主にイギリス)による植民地時代、インド独立直前、そして、独立後といった感じです。

その2、3階部分に日本が登場し、日本の芸術や思想が、インドの近代、ひいては現代に非常に重要な役割を果たしていたことが分かる記述がありました。美術館全体を通して、イギリス、スペイン、ポルトガル、日本の4ヵ国しか外国勢の説明がないことからも、インド側が捉えている「日本による歴史的役割」がいかに重要であったかが分かります。

また、インドと関わってきた6年で自身が感じてきた「"深い所"で非常に似ている日本人とインド人」に通ずるヒントも、帰宅後に色々と調べる中で見つけられ、その中でもタゴールの言葉がとても刺さったので、共有します。なお、今回は美術館全体の説明は省き、日本に関する記述だけにします。

—————————————
【タゴールの言葉】
植民地時代、政治的・経済的・文化的にもイギリスからの支配を受けていたインドはスワデーシ(※1)やスワラージ(※2)などスローガンを唱え、様々な施策を打ち西洋文化からの脱却を目指していたが、重要な役割を担ったのが日本だった。タゴールは、物質主義的な西洋思想に変化していた当時のインドの社会を、伝統的で精神的な元のインド社会に戻すために、汎アジア主義の代表格である日本に目を向け、岡倉天心(本名:「岡倉覚三」で美術館内では記銘)などの思想家・芸術家らと交流した。彼らとの交流を通じ、思考や芸術(水墨画技法)を学び、アートへの思想反映、そして、ナショナリズム運動を行った。
—————————————
※1:スワデーシ
...イギリスからの物品支給を拒み、インド国内の国産品を愛用すること。
※2:スワラージ
...民族の(政治的)独立。


インド独立を率いた指導者として、ガンディーやチャンドラボース(※3)が有名ですが、自分が知らない所で、日本人がこんなにも重要な影響を与えていたことはとても驚きました。天心はインドを訪問した際に、たまたまタゴールと出会い、意気投合したとのことです。調べていく中で、天心とタゴールは共に国際人であり、アジアの伝統に価値を見出す「国粋主義者」で、思想もかなり似ていた故に、二人の邂逅は必然だったのかもしれないと感じました。ちなみに、今回は詳細を割愛しますが、天心はインドにてインド人女性に"生涯最後の恋"に落ちたとのことで、彼がインドに惹かれたのは別の意味も大きいのではないかと思いました。笑

※3:チャンドラボース
...教科書などには出てきませんが、インド国内ではガンディーと人気を二分するほどの重要かつ、人気人物。ガンディーが穏便に平和的にインドの独立運動を進めたのに対し、チャンドラボースは強攻策などを用いながら大胆に"暴力的に"独立運動を進めました。ちなみに、チャンドラボースの遺骨は東京の蓮光寺に納められており、インド人に彼の名前とお寺内にある彼の銅像写真を見せると、すぐに仲良くなれるので、インド人と接する時はぜひ試してみてください。

最後になりますが、天心とタゴールの関係性を調べていく中で見つけた、タゴールの言葉がとても感銘を受けたので、それを紹介し終わります。

—————————————
<以下、”日本におけるナショナリズム”から引用>

"私は、国民と国民の間に存在する唯一の自然の絆、緊密な友情の絆により、ビルマから日本に至る東アジア全体が、インドと結盟していた時代を、諸君の知性に紹介せずにはいられない。

そこには、人類のもっとも奥深い要件について、我々の間に意見の交換を可能にするような、生きた心の通じ合い、一つの精神的なつながりが出来ていた。我々の間はお互いの警戒心によって邪魔されることはなかった。相手を抑制するために、お互いが武装しあうことはなかった。我々の関係は自己本位の関係や、お互いに相手の懐中工合いを探り、掠め取ろうとする関係ではなかった。観念や理想を交換し合って、最高に愛すべき贈り物をしたり、もらったりした。言語や習慣の相違はお互いの心と心との接近を妨げなかった。人種的誇りあるいは肉体的、心理的な優越感の傲慢さによって、われわれの関係が傷つけられることはなかった。われわれの美術や文学は心と心との結合という陽の光の影響の下で、若葉をのばし、花を咲かせた。そして土地、言語および歴史を異にする各人種が、至上の人間の一体性と最も深い愛の絆に感謝した。"
—————————————