はじめてメルカリやってみた 60歳の私
その1
私がメルカリを始めた理由
昨年の秋から、メルカリを始めた。
数年前に実家を片付けた際、母の持ち物である刺繍糸や布、刺繍関係の色々なものが、ごってりと出てきて、捨てるわけにもいかず困ったからだ。
今年で92歳になる母は、50年以上ヨーロッパ刺繍の作品作りをやってきた。
もともと今はなき、手芸出版社であった雄鶏社のアカデミーで刺繍を学び、板垣文恵先生の刺しゅうグループで作品を作ってきた。母が刺した作品は、当時の雄鶏社から出版された何冊かの本の中に掲載されている。
この刺しゅうグループは、定期的に、銀座を中心に展示会も開催してきた。
母が使っていた刺繍糸や材料は、東京・京橋にある越前屋という老舗の手芸店でいつも購入していた。
ここには、ありとあらゆる物がそろっている。母はいつもここで紙袋いっぱいに材料を買ってきていた。だから私が子どもの頃、家には、越前屋の紙袋がいつもあった。
そんな母も歳を取り、昔のような大作は作れない。母が生きているうちには、絶対に使いきれない、と思われるほどの刺繍の材料が残ったのだ。
私は、殆ど刺繍というより手芸をやらない。
よっぽど専門的にやらなければ、使いきれない量なのだ。
この残っている刺繍の材料を前にし、「もしこのまま死んだら、一番大きなお棺を注文して、全部入れて燃やしてやる~!」と日々、私は母に叫んでいた。
5年前に父が亡くなり、年老いた母が実家に一人になったため、実家を片付け、私は母を連れ自分の場所に戻った。
母の作品は、殆どが額になっている。大きいものだと私一人では運べないような大作もある。実家には納戸部屋があったし、部屋数もあったので大きな額を保管できた。
しかし同居した際に、母の作品が住居には収まらず、トランクルームを借りることになってしまった。
もちろん使いきれなかった刺繍糸や布、書籍、その他刺繍関係のいろんな物もトランクルームを埋めた。
使いかけの物もあったが、殆どが未使用だった。
コロナ禍、家で過ごすことが多くなり、荷物と向き合う日々が始まった。
どうにかしたい~、そして時間があるのだ。
そうだ!メルカリで出品しよう! ある日、私は思い立ったのだ。
私は娘にレクチャーしてもらい、メルカリを始めることを決意した。
若い人なら新しいシステムには、直ぐに飛びつくように順応できるが、還暦を迎えた私には、ものすごいチャレンジだ。
このチャレンジは、私が30代の時、パソコン時代を迎え、Windows95が発売され、パソコンをいじりだしたあの頃の必死さとに似ている。
とにかくいっぱいある25番の刺繍糸を、私はトランクルームからせっせと自宅に運び込み、部屋に籠り、色番号を確認し、束数を数え、整理を始めた。
実際にメルカリデビューするまで、地道なこの作業は2か月近く続いた。
(続く)
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