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仏さまと宝もの

呼吸するだけで きもちのいい朝
わたしは 1秒でもながく 外にいたいきもちをなだめ
髪を結び 広間のなかを あるいていきます

ざわざわ がやがや
はじまりは 大体いつも

ざわざわ うねうね
空気がとても さわがしい

そのとびきり うつくしいあさ
広間のなかも とびきり ざわざわ!
その不協和音の うねりのなかに
ひきこまれそうになる じぶんを見つけ
しのびよる 憂鬱な感情を 確認しながら
祈るようなきもちで そっと 
窓ごしの 緑たちに 意識をむけます

葉っぱたちは ひときわ かがやき
蝶たちは ひらひら くるくる
さわやかな風が からだのなかを 一気に かけぬけ
たちまち あたたかな波紋に つつまれる

いつもの場所の ヨガマットに 楽にすわり
外の景色に みとれながら
言葉が自然と あふれてくるのに まかせながら
今日のクラスを のんびりと はじめます

がやがや ざわざわ
不協和音の波たちが
すこしずつ まあるく
しずまって とけあって
おだやかな湖に なっていく

いつも最後に ほんのすこし
瞑想のじかんを とりいれます
目をとじた みんなの顔
美しい湖面のような しずかなじかん
そしてその目を ゆっくりあける瞬間

さざなみのような感動が わきあがり
わたしはそこに たくさんの仏さまを 垣間見ます
何度味わっても 色あせない
胸をうたれる だいすきな 瞬間

ざわざわ がやがやは
すべて しずまり

あぁこれが まことの姿なのかと
ふかくこころを うたれるのです

そして はじめに 顔をもたげていた
わたしの ちいさな高慢さを
あっという間に ぽきりと へし折ってしまうのです

どのひとも みんなそう
がやがや ざわざわ いらいらの奥に
仏さまが ひそんでいる

それは窓の外の 緑たちよりも
かがやかしくて おだやかで
わたしを とても
謙虚なきもちにしてくれる

ヨガを教えるようになって10年
わたしはきっと この瞬間をみるために
ずっと続けているのでしょう

とびきり ざわざわした この朝
たくさんの 仏さまたちは 無言のまま 語ります
みえない奥にある 宝ものの存在を
わたしがいつも 忘れないように。



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